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医療ポータルの「平安好医生(Ping An Good Doctor)」の株価は、3月19日の時点ではまだ56香港ドル(約780円)だったが、4月22日には123.3香港ドル(約1700円)になり、約30日で2倍以上に跳ね上がった。時価総額も1000億香港ドル(約1兆4000億円)の大台に乗った。
新型コロナ禍により平安好医生はトラフィックが増えたことに加えて、政策の後押しを得て、資本市場でも大人気だが、バブルの様相を呈するこの状況は長続きできるのだろうか。
トラフィックを収益に変えることの難しさ
インターネットの情報分析会社「易観(Analysys)」の情報によると、今年春節期間中の平安好医生のアプリのDAU(日間アクティブユーザー数)は542.7万だったが、競合他社のアプリのDAUはいずれも18万前後だった。
平安好医生のトラフィックは凄まじいものだが、トラフィックの獲得にはコストがかかる。2018年、平安好医生のマーケティング費用は前年比で71.2%増え、MAU(月間アクティブユーザー数)もそれにより直近3年間で最高の85.4%増を記録したが、全年の業績は直近5年間で最大の赤字だった。
2019年、平安好医生のマーケティング費用は前年比マイナスとなり、赤字は大幅に減ったが、登録ユーザー数とMAUの伸び率も低下してしまった。
今年は新型コロナ禍でオンライン医療のニーズが増えているが、その多くが外出できないためにやむを得ず利用しているものであり、無料の問診サービスのみを利用するユーザーも多い。ロイヤルティの低いユーザーが貢献したトラフィックを収益につなげるのは至難の業だ。
政策の効果は長続きが可能か
今年3月初頭、中国は一部の慢性疾患などに限って、オンライン再診を医療保険適用対象とし、これを受け平安好医生は3月末に湖北省で医療保険適用のオンライン診療をはじめた。
しかし、この政策によって、総合病院も同様のオンラインサービスを提供できるようになり、平安好医生にとってはむしろライバルが増えたことになる。
平安好医生が湖北省でサービスを開始できたのは、同省の感染状況がもっとも深刻で、病院にオンライン医療を運営する余力がなかったため、基礎的な医療サービスを平安好医生経由で提供するためである。ほかの省ではこのように簡単にいかないだろう。
中国の医療保険は全国統一ではなく、被保険者は戸籍所在地の省の保険に加入するという制度だ。そのため、ほかの省で診察を受けた場合、現地に戸籍のある被保険者とは異なる手続きが必要となり、オンライン医療で対応することはまだできない。ほかにも保険金詐欺の問題があり、これらはオンライン診療の医療保険全面適用を阻む大きな課題である。平安好医生のオンライン診療は必ずしも順調に行くとは限らないのだ。
変わらぬ体質
2018年から、平安好医生の売上高の伸び率が減少している。これは同社の4つの事業分野のうち3事業分野の保険大手「中国平安保険(Ping An Insurance)」に対する依存度が高いことに起因する。
平安好医生の売上高の多くは、平安保険との提携と有料会員向けのホームドクターサービスによるものだが、前者は親子会社の関係の上で行われる提携であり、他の保険会社と同様に提携することは難しく、今後の大きな増収も見込めない。後者は無料会員を有料会員に誘導することが必要だが、前述のトラフィックを収益に転換することと同じ難しさがある。
こうした体質のため、2019年までの4年間、平安好医生の粗利率は毎年下がっているのである。
唯一平安保険の支えなしに展開しているのは健康管理事業で、収益源は医薬品広告が中心だ。粗利率の高い事業ではあるが、いかんせん売上高が少なすぎる。その理由は景気の低迷で各社が宣伝費を削減したこと、そして中国国内の先発医薬品が少ないため、もともと企業に広告を出す意欲が薄いことだ。海外の製薬会社は医療従事者など専門家向けに宣伝をするため、直接消費者向けにサービスを展開する平安好医生とはマッチングしづらい。
したがって、平安好医生にとって、トラフィックと政策の後押しなどの好材料はあるものの、長続きできるかどうかが課題である。それに加え4つの事業分野の構造調整も必要となり、今後の成長は不透明だ。
(翻訳:小六)
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