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1954年にシリコンのトランジスタが誕生してから現在に至るまで、集積回路基板の原材料はシリコンであり続け、ムーアの法則が示したとおりの進歩を遂げてきた。しかし、数年前から半導体の開発ペースが落ちており、ムーアの法則の限界が叫ばれるようになった。そこで、シリコンに代わるカーボンチップの技術開発の進展が注目されている。
「幂方科技(Mifang Electronic Technology)」は、カーボンチップの製造に必要な電子プリント技術を開発する企業で、2015年に設立された。同社は電子回路を3Dプリントで印刷する技術を使い、電子回路プリンターやナノマテリアルの販売、電子回路の設計などを手掛けている。
従来の工場生産による電子部品の製造はコストが高く時間がかかる上、複雑な産業チェーンが必要だった。しかし、3Dプリントを使えば、コスト抑制と効率の大幅な向上が期待できる。幂方科技の藍河CEOによると、3Dプリントで製造した電子部品のコストは従来手法のわずか1/1000であり、製造も数時間で可能だという。
同社の主力商品は、発売したばかりの電子回路プリンター「PrtronicTM」である。インクジェット、ディスペンシング、ナイフコーティング機能があり、高精度の3軸構造を持つ。印刷速度は最高300mm/sであり、同社が独自開発した電子インクを併用すれば、各種基板を印刷することができ、精度は10マイクロメートル級に達する。電子回路プリンター専用のEDA(半導体設計自動化ソフトウェア)も提供している。藍河氏によると、インクには表面張力があるため、それを考慮に入れた上で回路を設計しなければならない。だが、EDAを使えば、表面張力の計算が自動化され、より微細な回路の製造が可能になるという。
現在同社の顧客は大学、企業の研究機関が中心で、電子回路プリンターと電子インクの販売を主な収益源としている。電子回路プリンターの生産キャパシティは毎月100台弱。顧客のニーズに合わせて、フレキシブル基板の印刷に必要なアタッチメントのカスタマイズも行っている。
フレキシブル基板に対応でき、コストが低いといった利点から、プリンテッド・エレクトロニクス分野は大きな成長が期待できる。英国の市場分析企業「IDTechEX」の予測によれば、2030年、フレキシブルバッテリー、プリンテッドバッテリー、薄膜電池の市場規模は5億ドル(約500億円)前後に達し、プリンテッドセンサーの市場規模は45億ドル(約4800億円)に達するという。そして、プリンテッド・エレクトロニクスの応用がもっとも期待されているウェアラブルデバイスは、2019年にすでに700億ドル(約7兆5000億円)の売上高を記録している。藍河氏の見方によると、今後IoT、ウェアラブルデバイス、医療用の植込みデバイスの普及により、集積回路にとって計算量と精度だけではなく、人体と自然に融合することも重要になってくる。これこそが、フレキシブル・エレクトロニクスとカーボンチップの強みである。
同分野は前途有望だが、藍河氏は電子回路の3Dプリントにはまだ多くの課題があることも指摘している。まず、産業チェーンが育っていないため、同社は開発、製造、販路開拓などをすべて自社で行わなければならず、事業展開に多くのコストが必要である。次に、3Dプリントでの製造はまだ10マイクロメートル級の精度にとどまっており、通常のシリコン基板の100ナノメートル級の精度にも遠く及ばない。また、カーボンチップは比較的新しい技術であり、顧客の求めるスペックを保証できるとしても、市場の認知度がまだ不十分であるため、全面的に導入することに二の足を踏む顧客が多いという。
同社はこれまで4回の資金調達を行っており、合計金額は約4000万元(約6億円)となっている。
(翻訳:小六)
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