遺伝子治療の新技術「塩基編集」に特化 中国スタートアップが遺伝性疾患や難病に挑む

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医療の世界には近年、遺伝子治療時代が到来した。ゲノム編集技術は第Ⅰ相臨床試験の段階で顕著な効果を上げている。

CRISPR、ZFN、TALENといった現行のゲノム編集技術は、標的遺伝子に二本鎖切断(DSB)を導入した後、細胞自身の修復機構によって編集プロセスを完了し、効果的に遺伝子発現を阻害する。しかし、こうした方法はオフターゲット効果やDNA二本鎖切断に依存したもので、編集完了後の細胞に予期せぬ結果をもたらす可能性もある。

このような過程でゲノムの突然変異の多くは単一の塩基で発生し、ゲノム編集の精度を高めるために塩基編集法が誕生した。これらはいずれも一塩基置換(点突然変異)であり、DNA二本鎖切断を引き起こさずに精確な塩基除去修復が行われる。他のゲノム編集技術と比較し、塩基編集法は効率や安全性が高いものになると期待される所以だ。

塩基編集法をベースに次世代ゲノム編集技術を専門に手がける中国のスタートアップ「正序生物科技(Correct Sequence)」は、遺伝性疾患や希少疾患の治療に取り組む。先日はエンジェルラウンドで4000万元(約6億4000万円)を調達した。出資を主導したのは万物資本(Wanwu Capital)、聯新資本(New Alliance Capital)で、セコイア・キャピタル・チャイナや泰福資本(TF Capital)も参加している。

7万5000パターンにも及ぶ遺伝子の突然変異は、サラセミア(地中海性貧血)やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの疾患を引き起こすことがわかっている。遺伝子の突然変異に起因する遺伝性疾患の大部分には治療薬がなく、また一部の疾患では生涯にわたり服薬を続け、副作用やストレスに耐えることになる。遺伝性疾患のおよそ半分は一塩基の突然変異によるもので、既存のゲノム編集ツールでは修復が難しい。

同社の塩基編集技術は膨大なゲノムの中から精確に、かつ永久的に一塩基対の改変を行う。疾患ごとに異なる変位部位において任意に組成を進め、点突然変異に起因する遺伝性疾患の治療やガンの免疫療法に新たな可能性をもたらしている。

正序生物は複数の塩基編集システム関連の特許について、上海科技大学と独占的永久ライセンス契約を締結している。自社が知的財産権を有する編基編集システムを通じて新たな疾患治療のアプローチを編み出していく考えだ。

塩基編集技術を事業化させている企業は世界でも稀で、米「Beam Therapeutics(ビーム・セラピューティクス)」、中国の「新芽基因生物技術(GenAssist Therapeutics)」などわずか数社にとどまる。正序生物は研究開発人員の実力を活用し、塩基編集システム開発の進展をもって中国の遺伝子治療における空白を埋めていくだろう。
(翻訳・愛玉)


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