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日付も変わった午前1時、大手VC「高瓴創投(GL Ventures)」のパートナー、黄立明氏はあるテック企業とのタームシート(投資条件の概要書)にサインをした。それからようやくスマホを机に置き、彼の「いつもの一日」が終わった。
高瓴創投は、アジア最大のプライベート・エクイティ・ファンド「高瓴資本(Hillhouse Capital)」が設立したスタートアップへの投資を専門とするVCだ。設立から1年、大幅に業務を拡大している。高瓴創投の初期の資金規模は100億元(約1700億円)で、現在それをさらに超える規模のファンド募集を行っている。昨年第1~3四半期に行った投資は200件を超え、ほぼ毎日1社に投資を行ったことになる。
驚異的なスピードで発展した1年
この1年の高瓴創投のポートフォリオを見ると、消費分野では倉庫型コスメ専門店「話梅(HARMAY)」、オートミールブランド「王飽飽(Wangbaobao)」、テクノロジー分野では非構造化データ処理のオープンソースソフトウェアを開発する「ZILLIZ」、オンライン教育の「ClassIn」ロボット開発の「思霊機器人(Siling Robot Technology)」、医療分野ではバイオ製薬企業「三葉草生物(Clover Biopharmaceuticals)」、医療用ロボット開発の「微創医療機器人(MicroPort)」などへ投資を行っている。コスメショップ、「国貨」と言われる国産新ブランドに始まり、半導体、ロボットからバイオ製薬、医療機器に至るまで、2020年にプライマリーマーケットで話題になった業界や領域をほぼ全てカバーしている。
高瓴創投は設立時に4つの領域に重点を置くことを宣言しており、それにはバイオ製薬と医療機器、ソフトウェアサービスと技術革新、コンシューマ向けインターネットとテクノロジー、新興消費ブランドとサービスが含まれる。
昨年の投資先の80%以上はテクノロジーと医療分野に集中していた。テクノロジー分野では80件以上の投資を行い、チップ半導体、量子テクノロジー、航空宇宙に関連するハードウエアテクノロジーおよび基礎・応用ソフトウエア領域に対して計画的に投資を行ってきた。医療・ヘルスケア分野では100件以上の投資を行っている。
個々の社員が能力を発揮する精密機器のような組織
スタートアップ企業への投資においてカギとなるのは、数あるスタートアップ企業の中から、いかに早く逃すことなく優良企業を見つけだすかということだ。
黄氏は、業務効率を上げるための確実な秘策はなく、チームのメンバー1人1人が全力で業務に集中していると述べる。
高瓴創投のチームが業務ツールをオフラインにする時間は、だいたい午前1時~3時だという。タームシートの提出が最も集中する時間は午前0時半だ。
チームワークの中では効率が一番重要視され、単純に目標達成だけを目指すことを避けるためにKPIは設置されていない。
高い業務効率を実現するのは容易ではないため、高瓴創投は人材採用についてかなり厳しい。採用にあたってはバックグラウンドや経歴よりも、業務を遂行するモチベーションが重視される。高瓴資本の創業者、張磊氏がしばしば言及する「No.1型の人材は好きではない」というのもこれを裏付けている。あるヘッドハンターによると、「高瓴へ採用されるのは非常に難しい。どの職種に応募するにしても、ほぼすべてのパートナーと面接を行い、なぜ自分がこの会社に向いているかを説明しなければならない。ほとんどの投資機関はバックグラウンドを気にするが、高瓴はその人材がいかに業務に向いているかを重視する」とのことだ。
厳しい条件をくぐり抜けて入社した後は、社員に対する信頼と寛容が同社の大きな特徴だ。内部プロセスを遵守し、社内基準に合ってさえいれば、「機会を逃すことを恐れず、間違いを恐れず、重要なのは何を学んだか」ということが尊重されている。
このような信頼はスタートアップ投資で重要な「常識を覆す」という基礎を確立した。高瓴創投は20社以上の投資機関から出資を拒否されたような案件に対しても、複数の投資を行っている。
黄氏にとって過去1年間の最大の収穫は「完璧ではないことを受け入れる」ことを学んだことだという。同氏は高瓴創投が急速に発展しているように見えるのは、組織の調整とチームの構築を得て、1台の精密機器のような緻密な組織が完成したからだと述べた。
同氏はまた「投資件数を重視するのではなく、その投資が信念に基づいているか、将来的なビジョンを持っているかを重視している」と述べている。
(翻訳・普洱)
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