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上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(スター・マーケット)」に株式発行登録制度が導入されて以来、多くの企業が上場を目論み、失意のうちに敗走していった。
同証券取引所は3月11日、LiDARメーカー「禾賽科技(Hesai Photonics Technology)」の科創板への上場申請について、株式発行者による上場申請撤回または推薦人による推薦撤回があったことを理由に、審査を「中止」したことを明らかにした。
また同日、画像認識技術を開発する「依図科技(YITU)」の上場審査を「中断」したと発表した。同社は、VIE(変動持分事業体)スキームを用いる「レッドチップ企業」であるため、上場申請に関する規則などへの対応が間に合わないことを主な理由に、主体的に上場申請を撤回したとしている。
ここで注意すべきは「中断」と「中止」の違いだ。「中断」は株式発行者が正常な上場申請の過程にあり、関係する諸問題を解決すれば審査の再開ができる。一方、「中止」は上場申請の終了と関連資料の取り下げを意味する。とはいえ、再申請の可能性も残されてはいる。
上海証券取引所の公式サイトによると、2019年3月から現在までに科創板への上場申請が受理された企業は545社で、うち89社が上場計画を頓挫させている。89社のうち14社は審査中断の対象となっており、その大部分が同年12月31日、財務諸表の更新が期日どおりに行われなかったことを理由に審査中断の決定を下されている。
上場失敗の事例が急激に増えた原因は、企業側にもあり、管理・監督が厳しくなったことにもある。
企業側の問題
科創板および深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業板(ChiNext)」への上場申請は登録制を採っているため、許可制に比べて審査期間が短く、通過率が高い。さらに、平均評価額も他のマーケットを大きく上回るため、昨年下半期には上場を申請する企業が激増していた。
今年2月4日時点で、科創板への上場を申請した企業は224社、A株市場全体では850社に上っている。その中には、登録制への理解と準備が不十分なまま上場計画を前倒しする企業も多かった。
上場を仲介する機関への依頼も殺到したが、多くの企業が登録制について誤解していた。弁護士事務所「康達律師事務所(Kangda Law Firm)」の石志遠パートナーは「登録制になったからといって、情報開示やコンプライアンスに対する要求水準が下がったわけではなく、上場条件の選択肢が増えたにすぎない。仲介機関には、より高い専門能力が求められるようになった」と語る。
登録制においては、申請受理後10営業日以内に全ての資料を提出する必要がある。もし企業または仲介機関が準備不足のまま資料を提出し、情報開示や問題解決が十分でない場合、審査期間中に修正することはほぼ不可能だ。一度でも誤りのある資料を提出すれば、管理・監督機関の審査が厳しくなり、上場失敗という結果を招きかねない。
ここ最近で上場に失敗した企業の大半は「戦略的発展の要素を検討し、主体的に上場申請を撤回した」と表明している。しかし、某投資銀行関係者は、その実情について「確かに一部の企業は新株主が参入し、弁護士や会計士を交代する必要があり、申請撤回と上場延期を余儀なくされた。しかし、管理・監督機関とやり取りする中で、期限内に解決できない問題があることが判明し、申請を撤回した企業があるのも事実だ。悪あがきはリスクを拡大するにすぎないからだ」と説明している。
上場申請を撤回した複数の企業の目論見書からは、各社ともに2017年から20年上半期にかけて巨額の赤字を出し、今後黒字に転じる可能性が示されないにもかかわらず、予想時価総額が極めて高いことが明らかになっている。
科創板の特徴として、赤字上場も可能な上、ハイテク業種に対応した上場基準が設けられている。昨年は純利益がプラスになっていない企業も含め、多くの企業が科創板への上場を果たした。とはいえ、某大手会計士事務所の監査責任者は「経験上、規模や影響力などが特別に大きい企業を除けば、赤字上場の事例は比較的少ない。制度がどのように変わろうとも、中国の株式市場には、収益力の高い企業を上場させ、投資家に利益を得てもらうという基本的な考え方があるからだ」としている。
某投資銀行関係者によると、管理・監督機関は現在、収益力が低い企業およびコンプライアンス水準が低く、粉飾決算などが疑われる企業の上場に慎重になっているという。
(翻訳・田村広子)
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