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地域コミュニティ(住宅地エリア)向け共同購入サービスを巡る争いは新たなステージに入っている。
春節(旧正月)が過ぎ、地域コミュニティ(=社区:中国の行政区画の一形態)をターゲットとする共同購入サービス大手が次々に2021年の目標を設定している。
生活関連サービス大手「美団(Meituan)」傘下の「美団優選(Meituan Select)」は年間GMV(流通取引総額)2000億元(約3兆3400億円)、1日あたりの受注数5000〜6000万件を目指すという。
また、ソーシャルEC大手「拼多多(Pinduoduo)」傘下の「多多買菜(Duoduomaicai)」が1500億元(約2兆5000億円)、ライドシェア大手「滴滴出行(DiDi Chuxing)」傘下の「橙心優選(Chengxin Youxuan)」が1000億元(約1兆6700億円)、テンセントが(騰訊)が支援する「興盛優選(Xingsheng Selected)」は約800億元(約1兆3300億円)となっている。
たとえば興盛優選の2020年のGMVが400億元(約6700億円)であったことや、美団優選の1日当たりの受注量が2020年12月後半に2000万件を突破したことを考え合わせると、各社が2021年に業績を2倍にするという高い目標設定を行ったことは明らかだ。
現在の進捗状況について関係者が明らかにしたところによると、春節後、美団優選の受注量は1日あたり2300万件で安定しており、ピーク時には2700万件に達している。一方、多多買菜の受注量は2000万件前後、興盛優選は1500万件に迫っている。
現在、多多買菜と美団優選の平均受注単価は共に8元(約133円)前後、橙心優選は5元(約83円)前後で、これをもとに推計すると、美団優選の1日の平均GMVは現在1億8000万元(約30億円)、多多買菜は1億6000万元(約27億円)前後となる。また 別の関係者によると、橙心優選の春節後における1日の平均GMVは1億元(約16億7000万円)に迫り、「春節から再び成長し始めた」という。先ごろ橙心優選は再び主要地域での値引きキャンペーンを強化し、受注量も多多買菜に迫る勢いだ。
これらの評価額はどの程度なのだろうか。3月26日、スーパーマーケットチェーングループ「物美集団(WUMART)」は橙心優選と、1億ドル(約110億円)を上限とする対価で後者の2%以下の株式を引き受ける株式売買契約を締結した。これにより橙心優選の評価額が50億ドル(約5400億円)に達する可能性も出てくるが、業績でさらに上を行く美団優選や多多買菜の評価額は橙心優選を上回るとみられる。今年2月に30億ドル(約3300億円)を調達した後、興盛優選の評価額は80億ドル(約8800万円)に達している。
2021年で変化した点はGMVの目標値に加え、各社の戦略がより精密になったことだ。多多買菜は現在、サイト内トラフィックが60%を占めているが、同社の2021年の目標は、事業開発(BD)強化、コミュニティリーダー募集、WeChatからの誘客増強を行い、他社のコアユーザーを奪うことだ。
別の関係者は、2021年は各社の商品カテゴリーも調整され、低単価の製品は削減されるだろうとし、美団優選の目標受注単価は10元(約167円)以上になると述べている。「しかし、値下げキャンペーンを一気に終了させることはあまり現実的ではなく、主にSKUを拡充し、高単価の商品を増やして受注単価を引き上げる。今年、美団優選はSKUを1000から2000に拡大し、フルフィルメント(受注から配達までのプロセス)を最適化してユーザーエクスペリエンス(UE)モデルを改善するつもりだ。」
これは興盛優選が大いに参考になる。大手各社が社区向け共同購入に参入してくる以前に、興盛優選は、生鮮品の取り扱い比率を下げ(33%から25~26%へ削減)、高単価商品(携帯電話、電子製品、家具など)を増やすことで、一部の中核地域で黒字化を達成していた。 関係者が語ったところによると、美団優選、多多買菜、橙心優選の生鮮品カテゴリー(ロスもカウント)の現在の粗利率はおおむねマイナスで、その他のカテゴリーの粗利率もおおむね10%を下回っている。客単価と粗利率を改善できるかどうかが、彼らの2021年のGMV目標達成の鍵を握っている。
中継倉庫の建設については、ある議事録によると、今年3月時点で多多買菜の中継倉庫の数はおよそ400~500、興盛は600~700、美団は1300となっている。興盛優選は昨年に物流を改善し、約200の中継倉庫を廃止した。
興盛優選の事情に詳しい関係者は「中継倉庫を集約し、本部倉庫の一部機能を担える『都市倉庫』(1000〜2000平方メートル)建設を目指している」と、述べている。メディアの報道によると、過去6カ月間に、多多買菜も多くの地域で中継倉庫を閉鎖した。今年、多多買菜はフルフィルメントにかかるコストの最適化に主眼を置いている。業界関係者の見積もりによると、現在の平均受注単価で推移した場合、 美団優選と多多買菜は、フルフィルメントコストを0.6元(約10円)未満に削減すれば黒字化が可能だが、これは2社にとってはまだ高いハードルだ。
美団優選の中継倉庫として加盟するある業者が次にような話をしたことがある。中継倉庫のオペレーション最適化のために、美団は傘下の中継倉庫に対し、監視カメラの導入、リアルタイムモニタリング、各プロセスのデータ化を求め、データ運用により精密な業務調整を行い、また運営プロセスを監視するために次々に本部要員を派遣してくるという。
アリババも生鮮食品EC「盒馬(Hema)」系共同購入ブランド「盒馬集市」の試行期間を経て、社区向け共同購入事業に焦点を当てた事業グループ「MMC事業部」を設立した。事業部責任者は、アリババB2Bビジネスグループ総裁兼アリババグループ・パートナーの戴珊氏だ。
戴氏はMMC事業部の手がける事業が現行の社区向け共同購入モデルとは異なると説明し、「近距離EC」と定義しているが、これはアリババがグループのリソースを整理・統合して社区向け共同購入に注力するための動きだと考える人も少なくない。そして同事業は多くの課題に直面している。最前線の競争を実際に調査したアリババの関係者は、「一方では、アリババがこれまで出資を続けてきた同業者『十薈団(NICE TUAN)』とのしがらみがあり、他方では、立ち上げ段階で大きく立ち後れた同社の社区向け共同購入サービス事業は、特にフルフィルメントで補完すべき箇所が多数ある」と述べている。
ある業界関係者が語ったところによると、アリババの社区向け共同購入サービス事業「淘宝買菜」は、自社で抱える盒馬集市と外部の提携企業である十薈団との二本立てで展開しているが、現在の受注量は、依然として十薈団に依存している。反対に、十薈団の受注量全体に占める淘宝買菜からのトラフィックはわずか20%だ。これは、淘宝買菜自体がまだユーザーへの認識度を十分に高めていないことを示している。2020年4月2021年の4月1日、十薈団は、再びアリババが主導するシリーズDで7億5000万ドル(約820億円)を調達したと発表したが、これはアリババが同事業において「外部への投資と内部での統合」というビジネスロジックを未だに放棄していないことの表れだ。
30億ドルを調達した興盛優選も、今年はさらに全国へ事業を拡大していくだろう。興盛優選は現在、「北京・上海+東北三省(遼寧・吉林・黒竜江)+内蒙古・チベット・海南」に加えて、18省の約200都市をカバーしている。対する美団優選、多多買菜、橙心優選は300以上の都市を網羅する。
ある資本市場関係者が語ったところによると、社区向け共同購入事業に対する2020年の投資額は、美団がおよそ100億元(約1670億円)、拼多多は60~70億元(約1000億~約1160億円)だった。今年、美団は200億元(約200億円)に達する投資を行う可能性があり、拼多多も引き続き投資を強化するという。過去1年において、美団と拼多多は新規事業で損失を拡大させたのは目にも明らかだが、実力で肉薄する企業同士の勝負を短期間で決着させることは難しく、内部強化を突き詰める時期に来ているといえる。
(翻訳:浅田雅美)
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