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中国スマホ大手のシャオミ(小米)は3月末、電気自動車(EV)事業に参入し、今後10年で100億ドル(約1兆1000億円)を投資すると発表した。その後を追うように、同業のOPPOもEV事業への参入を計画していることがこのほど明らかになった。
複数のOPPO幹部は、同社創業者の陳明永CEO自身が先頭に立ってEV事業の準備を推進し、すでにEV製造に関わるリソースと人材について調査を進めていると明らかにした。シャオミのEV事業を創業者の雷軍CEOが陣頭指揮しているのと同様の構図だ。
消息筋によると、陳CEOは4月中旬、車載電池大手「寧徳時代(CATL)」で中国乗用車事業部総裁を務める朱威氏と数時間に及ぶ会談を行ったという。また、陳CEOがEV事業チームのメンバーを率い、「中国汽車技術研究中心(CATARC)」などの機関を訪れたことも明らかにされた。
実務面ではすでに、ソフトウェアエンジニアリング担当副総裁の呉恒剛氏が加わっている。消息筋によると、呉氏は自動運転およびアルゴリズム関連職の面接試験に最高クラスの幹部として関わっているという。また、昨年にEVメーカー「小鵬汽車(Xpeng Motors)」からOPPOに移り、首席科学者を務める郭彦東氏も、自動運転チームの設立準備に参画している。さらに、コックピット関連の人事もすでに進められているという。
陳CEOに近い関係者は、OPPOによるEV事業について「調査を進めているのは確実だが、あくまでも予備調査の段階で、今のところ正式な事業立ち上げには至っていないようだ」と述べている。
OPPOは他社との提携関係を通じ、EV分野における多角的な展開も進めている。ある投資関係者によると、昨年末には米半導体大手クアルコム(Qualcomm)に勧められ、自動運転技術関連企業「縦目科技(ZongMu Technology)」のデューデリジェンスを行った上で、同社に投資する意向を明らかにしていた。両社はすでに、株式譲渡契約(SPA)に関して協議の段階に入っているという。縦目科技は現在、香港株式市場への上場を計画している。
また、大手自動車メーカー「上海汽車集団(SAIC MOTOR)」の子会社「零束軟件(Z-One)」 によるSOA(Service Oriented Architecture)プロジェクトに参画し、コックピット内での撮影と顔識別にカメラの手振れ補正技術を応用しようとしている。また、EVメーカー「理想汽車(Li Auto)」ともスマホのブルートゥース機能を利用したスマートキーについて共同研究を進めている。
米調査会社IDCがまとめたスマホ出荷台数ランキングで、OPPOは2020年第4四半期には韓国サムスン電子、米アップル、シャオミに次いで世界4位、通年では5位にランクインしている。
OPPOは新規事業にチャンスを求めてきたが、その原動力は十分すぎるほどのリソースと、急務となっている業界内での地位の確立だろう。
2019年1月には新興モバイル端末事業部(今年4月、IoT事業群に改称)を設立し、事業部総裁に同社を長く支えてきた劉波氏を据え、IoT事業の展開を進めてきた。同事業部はこれまでに、テレビやスマートブレスレット、スマートウォッチ、ノイズキャンセリングイヤホンなど20種類以上のIoT製品をリリースしている。同社はまた、通信用チップを中心に、先進技術や基盤技術にも多額の資金を投じている。チップに関わるチームはすでに1000人を超え、シャオミをしのぐ規模となっている。
米アップルを除けば、OPPOはAR(仮想現実)技術に全力を投じる数少ないスマホメーカーの一つでもある。同社はすでにARグラス「OPPO AR Glass 2021」を発表している。ARグラス事業も陳CEOが陣頭指揮をとる事業の一つだ。
OPPOもシャオミも、自動車製造の経験で既存の自動車メーカーに及ばないのは当然だろう。しかし、人工知能(AI)やチップ、ハードウエア製品やサプライチェーンの管理で蓄積がある上、最も重要な資金面でも十分は余裕がある。その能力から見れば、自動車製造のハードルも超えられないことはない。
しかし、ある新興自動車メーカーの創業者は、テレビ製造に必要な能力はスマホ製造よりも低いが、自動車製造にはより高い技術が必要だと指摘する。その上で、スマホメーカーが自動車製造を手掛けるのは、新たに起業するのと同義だとの見方を示す。
シャオミの雷CEOもEV事業への参入を発表した際、自動車製造を手掛けるにあたり、かなりの迷いもあったと率直に語っている。それでも最終的に決断したのは、シャオミの熱狂的な顧客はシャオミの車を求めていると考えたからだという。
では、OPPOは何を大義名分としてEV事業に参入するのだろうか。
(翻訳・田村広子)
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