「AI上司に使われる料理配達員」北京大ポスドク、自身の体験を論文発表

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フードデリバリー世界一の中国、AI「管理」に追い詰められる配達員の実態

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北京大学の研究者が料理宅配サービス配達員として「AIに使われる」体験を論文にまとめ、中国ネットユーザーの関心を集めている。

きっかけは、学術誌「社会学研究」に掲載された論文『「デジタル管理」下の労働秩序-料理宅配ドライバーの労働管理に関する研究』だった。北京大学にポストドクター陳竜氏が、同大学がある中関村の宅配ドライバーチームに所属し、5カ月間の宅配業務を体験した上でまとめた論文だ。

この論文に、ネットユーザーからの「いいね」が相次いだ。あるユーザーは「社会学ならでは。実際に体験したからこその説得力だ」と感想を記している。

また、あるユーザーは「理論と実践の完璧な融合だ」と賛辞を寄せた。

しかし、陳氏の発言からは、今まさに激変しつつある労働力と生産手段の関係を肌で感じたことが、理論よりも重要だったことがうかがえる。

人工知能(AI)システムによる労働管理は、全ての人に影響を与えつつある。宅配ドライバーが置かれている環境は、その一側面を示している。

配達員はどのように管理されているのか

陳氏はウェブメディア「極昼工作室」で、半年近くに及んだ宅配ドライバー生活について述べている。

彼の目には、宅配プラットフォームが1人の管理者のように映り、本当の管理職はどこにもいないように見えた。専門的な言い方をすれば、デジタルガバナンスそのものだった。

従来は、管理職が労働の指示・評価・賞罰を決定していた。しかし現在は、プラットフォームがドライバーに注文を割り当て、配達先を指示し、消費者から受けたドライバーの評価を基に賞罰を決定している。AIシステムが指示と賞罰を担当し、ドライバーの評価は消費者に任される形となっているのだ。

AIシステムによる管理業務の鍵となるのは、優れたアルゴリズムとデータだ。陳氏は宅配作業の中で、プラットフォームがデータを収集し続けているのを実感したという。

屋外ではスマートフォンのGPS信号で走行ルートが追跡され、屋内では取引先のWiFiネットワークや屋内基地局を通じ、ドライバーの到着時間や料理の受け渡し時間など各種データが記録される。

プラットフォームは、ドライバー関連のほか、取引先企業や消費者にまつわる各種データも集め、どんどん「賢く」なっている。陳氏によると、消費者から遅配の報告があった場合、AIシステムがすぐに試算を始め、次回以降の配達所要時間を長めに提示するという。

AIによる管理業務の問題点も明らかになっている。消費者とドライバーの間にいさかいが発生した場合、誰が責任を取るのか。誰に意見をぶつけるべきなのか。プラットフォームは仲裁者となりうるのか。

こうした社会の倫理と秩序にまつわる問題は、料理宅配だけに発生しているわけではない。

AI管理が引き起こす労働問題

料理宅配プラットフォームだけでなく。配車プラットフォームもプラットフォームが車両を派遣し、乗客の評価に基づいてドライバーの賞罰を決定している。また、停車時間が少しでも長引くと、プラットフォームから警告が送られる。

AIシステムの導入による労働力と生産手段の関係の変化は、工業や農業の現場でも起こっている。農地管理においては、AIが見分けた発芽率に従って再度種を蒔く必要があるかを判断することで、巡回確認のステップを省き、人件費も削減できるようになった。

結果的に、農地管理に従事する労働者が減り、賃金水準も低くなった。ある農業経営者は、以前よりも大きな農地を労働者に管理させているが、賃金は以前と同等のレベルを維持しているという。

AIシステムによる労働管理は、さまざまな場面で社会的な問題を引き起こしている。AI活用の動きが止まらない中、これらの問題をいかに解決するべきなのか。

陳氏の論文に触発されたネットユーザーは、プラットフォーム自体と政策の両面から解決策を探るべきだとの意見を寄せている。

ある著名ブロガーは「宅配ドライバーは大変な激務に追われている。彼らの賃金は苦労して街を走り回って稼いだものだ。プラットフォームには彼らの安全と尊厳を保証する義務がある」と提言している。

陳氏自身も「プラットフォーム自体が変わろうとするか、政府が関連政策を打ち出す以外に方法はない。そのためには、北京労働関係処の副処長が料理宅配ドライバーを体験する必要があるだろう」と切実な思いを訴えている。

作者:量子位(Wechat ID:QbitAI)
(翻訳・田村広子)

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