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中国ネット大手のバイトダンス傘下で動画投稿アプリを手掛ける「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」がこのほど、フードデリバリー事業「心動外売(Xindong Waimai)」を立ち上げ、同名サービスのテスト運用を開始していたことが明らかになった。
心動外売は抖音にアカウントを持つ飲食店に登録を呼びかけるとみられる。心動外売はフードデリバリープラットフォームを取りまとめ、デリバリーサービスそのものは飲食店が手配する形をとるため、集客面で餓了麼(Ele.me)または美団(Meituan)と協力する可能性もある。
抖音がフードデリバリー事業を手掛ける上での強みは、ショート動画を通じて飲食店の特徴を動的に伝えると同時に、ユーザーの評価をよりリアルに反映できる点にある。
心動外売は料理の配達そのものを手掛けるわけではない。フードデリバリーの利用者やサービスを手掛ける企業にプラットフォームを提供することで、効率的にフードデリバリー市場に参入する。ある業界関係者は、心動外売の手法が配車サービスの「高徳打車(AutoNavi)」に類似すると指摘する。
これまでは美団と餓了麼が1兆元(約17兆円)規模を誇るフードデリバリー市場のトップを争ってきたが、今後は抖音の影響力が増しそうだ。
生活関連サービスを強化する抖音
抖音は、広告、電子商取引(EC)および生活関連サービスをマネタイズの三本柱としている。前者二つはすでに成功を収めているものの、生活関連サービスは依然として成長過程にある。抖音は生活関連サービスの中でも、とくにフードデリバリー事業の成長を加速させている。
中国中央電視台の財経チャンネル(CCTV2)は、中国における昨年のフードデリバリー注文件数が前年比7.5%増の171億2000万件だったと報じている。抖音は、この巨額の利益が期待できるフードデリバリー市場への進出を急いでいる。
抖音は今年2月、アプリ内の北京や上海、杭州など一部大都市のページに共同購入機能を追加した。続いて、飲食店のテーブルに置かれたタブレットで注文や二次元コードによる決済ができる機能も追加。最新の内部テストバージョンには、地図サービスも加えている。さらに、生活関連サービスの宣伝にスタッフ1万人を動員するなど、生活関連サービス強化の姿勢を鮮明にしている。
抖音はすでに多くのユーザーを抱えている。事業者からのニーズもある。必要なのは、ユーザーをオンラインの場から実店舗に誘導するO2O(Online to Offline)システムの構築だけだ。
フードデリバリー事業では、デリバリーチームの組織と運営が課題になる。例えば美団はデリバリードライバー500万人を抱えているが、抖音はより合理的な手法を選択した。各種フードデリバリープラットフォームを取りまとめる形をとったため、理屈の上では美団や餓了麼のみならず、デリバリーサービスを手掛けるファストフードチェーンなどをパートナーとすることができる。自社で大規模なデリバリーチームを組織する必要はないのだ。
最も重要なのは、抖音がユーザーを各フードデリバリープラットフォームに誘導するだけの存在から、取引を仲介するプラットフォームになろうとしていることだ。
中国フードデリバリー市場のシェアは昨年以降、美団が7割近くを占め、餓了麼が約3割を占める形が続いているが、餓了麼もさまざまな優遇措置を講じることで徐々にシェアを伸ばしている。
今回、抖音が業界に参入したことで、美団と餓了麼は顧客獲得をめぐる競争を再び激化させるだろう。
(翻訳・田村広子)
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