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中国のIT大手アリババグループが、性暴力を巡る不祥事に大揺れしている。女性社員が出張先で男性上司から同意のない性交の被害を受け、会社に訴えたものの、責任者らは返信をしなかったり、「女性社員の名誉を守る」ことを名目に、男性上司の処分を拒否したとされる。正式な手続きではもみ消されると考えた女性社員が、社員食堂でビラをまいたことで事態が表ざたとなり、アリババの張勇(ダニエル・チャン)会長兼CEOは9日朝、男性上司を「永久追放」し、女性社員の訴えを適切に対処しなかった責任者らが辞任したことを自ら発表した。
出張先で酩酊し性被害
女性社員Aさんに訴えによると、Aさんは7月下旬、男性上司に済南市への出張同行を命じられた。取引先との会食では、取引先の男性に酒を勧められて酩酊。胸や足などを触られ、人がいないところに連れて行かれわいせつな行為をされたが、男性上司は黙認した。
嘔吐し意識がなくなったAさんは男性上司などに部屋に送られた。翌朝目覚めたときには裸で、部屋には開封済みの避妊具があったことから男性上司を電話で問い詰めたところ、性行為があったことが判明したという。
Aさんは翌日、警察に被害届を出した。警察の調べに対し男性上司は「合意があった」と主張した。Aさんは出張から戻った8月2日、部署の責任者3人に被害を訴えて上司の処分を求めたが、3日後に「あなたの名誉を守るため、上司を解雇しない」と告げられた。その後、別の責任者に訴えたが対処してもらえず、アリババ社員のグループチャットに投稿したものの、それも即座に削除された。
Aさんは「このままではもみ消され、上司も何の処分も受けない」と考え、社員食堂にビラをまいた。このビラが8月7日夜にSNSに流出したことから、中国では東京五輪や新型コロナウイルス拡大を上回るニュースとして大騒動になっている。
アリババ会長「重大性を見落とし共感性も欠如」
アリババグループは8月8日未明、調査チームを立ち上げ迅速に対処すると発表。男性上司を停職としたほか、Aさんが直接相談した4人の責任者についても停職に処し、内部調査の対象にすると表明した。また済南市の警察当局が、同案件について刑事事件として調査中であることを発表した。
同日夜にはアリババの社員6000人が連名で、職場でのセクハラ、性暴力について防止するシステムの構築を提言した。
8月9日早朝、張勇会長は社内文書で男性上司の永久追放など社内処分を発表。アリババの内部調査で、男性上司は女性社員が酩酊した状態で、行き過ぎた行為があったと認めたという。男性の行為が強姦とわいせつのどちらに当たるかは、警察の捜査に委ねる。問題に厳正な対処をしなかった責任者や人事部門についても、「事件の重大性を見落とし、しっかりと取り組まなかった。共感性が足りず、緊急事態に対応するシステムと重大な判断ミスが存在する」と認め、Aさんが所属していたローカルリテール事業部グループプレジデント、
(文・浦上早苗)
編集部注)ローカル事業部幹部2人の処分内容を更新しました(2021年8月9日16時33分)
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