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3Dビジョンシステムの開発・販売を手掛ける「北京遷移科技(Beijing Transfer Technology)」(以下、遷移科技)がこのほど、プレシリーズAで数百万ドル(数億円)調達した。リード・インベスターは「零一創投(01VC)」、コ・インベスターは「立元創投(Li Yuan Venture Capital)」が務めた。同社は2019年にもエンジェルラウンドで1300万元(約2億2000万円)を調達している。
遷移科技は2017年に設立され、3Dビジョンを利用したロボットアームの視覚誘導用システムソフトウエアと高精度産業用3Dカメラを中心とするソリューションを提供してきた。
従来型の産業用ロボットは、計画された軌道上で決められた動作を反復するのみで、整列した対象物にしか対応できない。一方、3Dビジョンシステムを用いた産業用ロボットは、多様な形態の対象物が無秩序に置かれていても、自身で最適な軌道と動作を計画して作業できる。
同社は、台湾の有名自転車メーカー「GIANT」に3Dビジョンを活用したソリューションを提供している。GIANTは、遷移科技の3Dカメラ「Epic Eye」シリーズと、無秩序に置かれた対象物の運搬に対応するソフトウエア「Epic Handling」を活用し、寸法や規格の異なる部品約200種類のCNC加工(コンピューターによる機械加工)に柔軟に対応している。3Dビジョンによる視覚誘導型の産業用ロボットが部品の供給・取り出しを担当するため、工作機械を操作するスタッフが必要なくなり、費用対効果が高まった。工作機械から出る切り屑処理の機械化も実現したという。
遷移科技の産業用3Dカメラには、物流現場でのバラ積みピッキングおよびデパレタイズ(パレットからの荷降ろし)用のほか、測量用と検査用がある。そのコア技術は業界トップクラスで、とくに安定性、適応性および複雑なシーンを結像させる性能に優れている。
視覚誘導型ロボット向けシステムソフトウエアは、無秩序に置かれた対象物のピッキングに対応する「Epic Picking」と運搬に対応する「Epic Handling」の2種類。樊鈺CEOによると、いずれもプログラミングの必要がなく、初心者でも20分あれば使い方を習得し、2時間で3Dビジョンを活用したアプリケーションが作成できる。短時間で設置できる上、利用者に高い技術力が求められないため、納品当日の稼働開始が可能で、設置と顧客サービスに関するコストを低減できるという。
樊CEOは、遷移科技が主な対象とする工業生産の現場を二つ挙げた。一つ目は、スマート化に十分な資金を投じられる高付加価値製品の生産現場。二つ目は、人体に有害な重労働が必要とされる現場だ。
中国では高齢化が進み、生産現場における技術者や現場作業員の不足と人件費の上昇が続く。コロナ禍がこれに拍車をかけ、無人化工場のニーズが高まり続けている。3Dビジョンは、柔軟な対応を求められる生産現場でロボットが人間に代わって作業することを可能にした。
樊氏は、ロボットなら24時間働き続ける上に離職の心配もなく、企業のコスト低減と効率や品質の向上に寄与すると説明した。同社の製品が対応する作業は、現在のところピッキングが中心だが、今後は靴底やエアコンの基板などのプレコートや組み立てにも対応する製品を手掛けていく方針だ。
同社の今年の契約額は合計数千万元(数億円)になる見込みだという。契約先は自動車部品や白物家電、化学工業製品のメーカーなどだ。
中国では現在、産業用ロボット市場の成長が加速している。遷移科技の試算によると、一方の3Dビジョン市場は2025年に100億元(約1700億円)規模に達する見通しとなっている。
大きく成長する可能性のある市場にライバルがひしめくのは当然だ。樊CEOは、遷移科技の強みは極めて使いやすいシステムにあり、使いやすさこそが3Dビジョンシステムが大規模に活用されるための鍵になると説明した。同社のソフトウエアは、初心者が20分で使用方法を習得できるまでに進歩している。
遷移科技のスタッフは現在80人。うち7割以上が修士または博士の学位を持つ研究・開発スタッフで、いずれもマシンビジョンやロボット技術に長く携わっている。同社が申請した特許とソフトウエア著作権は、すでに数十件に上る。
(翻訳・田村広子)
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