中国の水産業にもDXの波、IoTデバイスとアプリでスマート化

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中国は世界最大の養殖国家だ。市場調査会社の智研諮詢によると、中国における水産物市場の取引額は2019年に4258億2000万元(約7兆2400億円)となり、前年から13.9%も増加した。

養殖業は生産周期が長く、関連する産業分野も多岐にわたる。中国の広大な国土に分散している上、設備も古く、プロセスの大部分は個人の経験に頼っているのが現状だ。

こうした状況の中、スマート養殖を手がけるスタートアップ「優魚(広州)技術有限公司(Uyu Guangzhou Technology)」がビッグデータをベースにした水産業向けソリューションを開発し、情報連携、モニタリングの可視化、スマートコントロール、産業分野全体に関わるサービスの統合を実現した。

同社の林錦江CEOは業界の現状を次のように説明する。「ITを駆使した養豚場はあるのに、魚の養殖場はない。養殖業では水中にいる魚の数を数えるのが困難なため、経験に基づいて判断するケースが多く、数値化するのが難しいからだ。このため金融機関や保険会社も参入に二の足を踏み、産業の大規模化が進まなかった」。

優魚は2017年に水質モニタリングシステム「U魚」を開発し、水質や溶存酸素量、pH値、水温などを直観的に把握できるようにした。その後、リリースされたU魚アプリは、水質モニタリング、スマート制御、給餌器などスマートデバイスと連動させて使用できる。具体的には、U魚のスマートデバイスを通じて養魚池内のデータがU魚プラットフォームにアップロードされ、処理された情報が養殖業者の端末に送られる仕組みで、養魚池の状況がリアルタイムで分かるほか、IoT設備が最適な状態に調整される。また二次元コードを使って商品の生産や流通過程を追跡する消費者向けのサービスも展開している。

U魚のビジネスモデルでは次の4つが収益源となっている。一つ目は政府が推進する農業の大型プロジェクトに伴う管理プラットフォームの費用、二つ目はプロジェクト実施および水産業向けIoT設備の販売、三つ目はプラットフォームのサービス料やIoT使用料、四つ目はアプリ内ストアの販売手数料だ。

中国政府は近年、農業に対する政策の強化に乗り出している。2020年に発表された「第14次五カ年計画」の中で、農村振興戦略を全面的に推進し、農村市場の成長ポテンシャルをいっそう発揮させることが示された。林CEOの説明によると、農村振興戦略を受けて今年上半期(1~6月)の業績は好調で、年間売上高は3000万~5000万元(約5億~8億5000万円)に達する見込みだという。

顧客開拓に関しては業界の模範企業に特に力を入れ、各地方政府主導の大規模なスマート養殖プロジェクト10件以上の請負や実施を行っている。また展示会やメディア宣伝、口コミなどを通じてエンドユーザーにアピールを行い、現時点で3000カ所以上の養殖場に1万人以上のユーザーを抱えている。

優漁は今年までに30件近くのソフトウェア著作権と6製品の特許を申請したほか、華南農業大学や華南師範大学などの高等教育機関と提携し、企業・大学・研究機関の一体化戦略を推し進めている。2022年にはシリーズAで資金調達を考えており、迅速に市場展開することでスマート養殖のベンチマークになることを目指している。
(翻訳・畠中裕子)

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