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TikTokで知られる中国の大手IT企業バイトダンス(字節跳動)が、クラウドコンピューティング部門で新たに自動車分野を手がけはじめた。最近になって自動車向けクラウド事業を立ち上げ、米アマゾンのクラウドコンピューティング部門などから人材を引き抜き、プロジェクトマネージャーに起用している。さらに、新興自動車メーカーや貨物車の自動運転を開発する企業などに協業プロジェクトを持ちかけているという。
36Krが取材したところ、バイトダンスの自動車向けクラウドサービスは三つ。一つ目はコンピューティング、ネットワーク、ストレージの三大性能を備えたIaaS(インフラとしてのサービス)で、二つ目はシミュレーションプラットフォーム、データアノテーション(データの注釈付け)、画像レンダリング、データパッケージ分解などの性能を備えた自動運転に関連するPaaS(プラットフォームとしてのサービス)、三つ目はサービス管理、車両管理、販売後データ、製造データなどに関わるSaaS(ソフトウェアとしてのサービス)だ。
これらに関し、バイトダンス側はノーコメントとしている。
ITニュースメディア「晚点(LatePost)」は今年6月、バイトダンスがIaaSをリリースすると報道していた。自動車向けクラウドの事業計画からみると、同社が自動車業界に特化したソリューションのリリースを目指していることがわかる。
自動車向けクラウドへの参入はバイトダンスにとって、クラウド事業を推進する中でも重大な試みなのだろう。関係者によると、バイトダンスの今後5年の事業計画には自動車向けクラウド事業も組み込まれており、二段階に分けて進めていくという。
第一段階は2021〜2022年で、クラウド事業の拡大に着手する。車載インターネット(IoV)運営や、AIエンジンが先々のシナリオを予測し運転体験を最適化させる性能を提供するIoV用クラウド、データアノテーションやコストパフォーマンスの高いGPUクラスターなどを提供する自動運転技術用クラウドを包括し、商業戦略としては、車載インフォテイメントや広告にクラウドサービスを付帯させていく。
第二段階は2023〜2025年で、クラウドサービス事業のカバレッジを徐々に半分以上に高め、「テンセントの売上高を追う」との目標を立てている。
スマートカー分野が盛り上がりを見せ、ファーウェイやテンセント、バイドゥなどのテックジャイアントが自動車向けクラウド市場で競り合う中、バイトダンスは遅れて参入した。そのため、まずは売り上げ度外視でサービスの普及を優先する方針をとったようだ。
36Krは昨年9月、バイトダンスの企業向け事業部門が自動車分野で初めて動きを見せ、IoVを手がける組織を設立したと報じた。関係者によると、すでに50人規模の組織に成長し、車載インフォテイメントのアプリ「火山車娯」をリリースしている。
火山車娯はバイトダンスのコンテンツエコシステムを総動員しており、TikTok中国版の抖音(Douyin)やニュースアプリ今日頭条(Toutiao)はもちろん、テキストの音声変換技術(TTS)も搭載している。すでに「吉利汽車(Geely Automobile)」や「長安汽車(Changan Auto)」などの自動車メーカーの車両数十万台に搭載されているという。
同様にコネクテッドカーのソリューションとして、テンセントは「TAI(Tencent Auto Intelligence)」、アリババは「斑馬網絡(Banma Network)」をリリースしている。これらのソリューションは開発・搭載認証費として収益が得られるだけではなく、自社のサービスやコンテンツのエコシステムを車両に導入させることで、集客の入り口をより増やす役目がある。
自動車メーカーがスマート化を進める過程で、データセンターやデータプラットフォームに対する需要が顕在化した。クラウドサービスを提供する企業は否応なく基礎技術で競い合うことになる。バイトダンスは他企業への出資によって技術力を蓄えてきた。
関係者によると、バイトダンスの自動車向けクラウドでシナリオやシミュレーションに関する能力は「軽舟智航(QCraft)」によるものだ。米グーグル傘下Waymoの元社員が設立した企業で、バイトダンスは今年3月に同社が行ったシリーズAの資金調達でも出資している。バイトダンスはさらに上海汽車(SAIC Motor)傘下の高精度地図開発企業「中海庭數據技術(Heading Data Intelligence)」にも提携を持ちかけている。中海庭側はバイトダンスから戦略的投資を受けるか、合弁会社を設立することを望んでいるという。
一般ユーザー向けにはTikTokなど、数億人のアクティブユーザーを擁する大ヒット製品を出しているバイトダンスだが、企業向け事業ではアクションが遅い。クラウドインフラこそは逃してはならない一大市場だ。2021年第2四半期の中国のクラウドコンピューティング市場に関する市場調査会社カナリスのレポートでは、中国のクラウドインフラ市場は54%成長し、66億ドル(約7300億円)規模に達している。
(翻訳・愛玉)
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