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米スターバックス18日、中国フードデリバリー最大手「美団(Meituan)」との提携を発表した。今後は美団のアプリからスターバックスの商品を注文できるようになる。また、美団のアプリで予約すれば、店舗での試飲会やコーヒーの入れ方教室にも参加できるという。
スターバックスが物流大手企業の「SFホールディング(順豊控股)」や、ウォルマート傘下の会員制スーパー「サムズ・クラブ(Sam’s Club)」などと提携に関する協議を進めているとの噂もあった。しかし、最終的にスターバックスとの提携を勝ち取ったのは美団だった。
これまでスターバックスは、アリババ集団傘下のフードデリバリープラットフォーム「餓了麼(ウーラマ、Ele.me)」と3年間の独占パートナー契約を結んでいた。契約は2021年12月31日で満了し、その後は更新されていないものの、デリバリー事業での提携は継続している。
スターバックスのデリバリーサービス「専星送」は、すでに美団のアプリから利用できるようになっているが、ウーラマのアプリからも引き続き利用できる。ウーラマも、スターバックスへのアクセスはこれまでどおりで、専星送などのサービスにも何ら影響はないとしている。
スターバックスはO2O(Online to Offline)分野のトップブランドだ。同社との提携は単なる業務提携を超える意味を持つ。
アリババは2018年8月、スターバックスを非常に重要なパートナーと位置づけ、戦略的パートナーシップを締結。スターバックスは、アリババが進める提携企業のデジタル化を実現する計画「A100」の最初のパートナーとなった。
アリババとスターバックスの提携は、双方のトップの合意により成立した。アリババの張勇CEOとスターバックスのケビン・ジョンソンCEOは、揃って戦略的パートナーシップ発表会に出席した。張氏は、この発表会を「結婚式」になぞらえて「結婚前はそれぞれの人生を生きてきたが、結婚後は双方の人生をどのように幸せで充実したものにするかを考えなければならない」と述べた。この発言から、アリババがスターバックスをいかに重要視していたかがうかがえる。
アリババは当時、ウーラマを完全買収したばかりで、中国のフードデリバリー市場への野心を示していた。ウーラマのシェアはすでに美団に抜かれていたが、アリババはグループ内の事業のシナジー効果を切り札に、スターバックスとの独占的な提携を獲得した。
しかし、フードデリバリー市場が変化し続ける中で、ウーラマと美団の差はますます広がっていった。そして、電子商取引(EC)市場で苦戦を続けるアリババは、組織にスピードや柔軟性を求め、グループの力をウーラマの支援に注ぎ込む意欲を失ったとみられる。そして、3年間続いたアリババとスターバックスとの独占的な提携関係は、美団の介入によって事実上終わりを告げることとなった。
中国ではここ数年、テクノロジー企業への規制が強まっている。そんな中、美団はスターバックスとの提携を獲得した。しかし、3年前にアリババとスターバックスが提携した際のように派手な宣伝や発表会が行われていないことには注目しておくべきだろう。
(北村一仁)
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