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2月22日、シェアサイクル「哈囉出行(Hellobike)」は年初から展開している「順風車(相乗り型ライドシェア)」サービスを全国区に拡大すると発表した。これに先立ち、哈囉出行は2018年12月から登録ドライバーの募集を開始し、20日で100万人の応募があったという。
2018年の旧正月時期、3000万人以上の乗客が配車アプリ大手「滴滴出行(Didi Chuxing)」の順風車サービスを利用したという。だがその後、滴滴は登録ドライバーによる乗客殺人事件の影響で同サービスを停止。その空白を狙って、哈囉出行は今年1月に6都市で順風車サービスを開始した。旧正月前には16都市にサービスを拡大し、ドライバーと乗客の双方に総額3千万元(約5億円)の還元も行った。
滴滴の事件に象徴される安全上の問題は、依然としてライドシェア業界の懸案になっている。相乗り型の順風車は、配車型のサービス「快車」などのように政府の厳格な規制の対象にはなっていないが、規制当局は依然として態度を明確にしていない。
順風車事業に進出した理由
シェアサイクル業界では大手の「ofo」や「摩拝(Mobike)」が経営危機に陥り、単一のビジネスモデルでは収益を上げるのは困難というのが業界の一致した見方だ。特に冬場は季節的な影響で、哈囉出行の業績も赤字が続くと見られていたため、哈囉出行も同社に出資するアリババも、交通サービス分野で収益を出せる新事業を模索する必要があった。
現時点では、順風車サービスの開始は確かに最良の選択だろう。配車型サービスは政府の規制対象だが、順風車はその対象外になっている。これは順風車が公共交通機関の範疇にあると判断されているためだ。また、配車型の場合は営業する各都市で「ネット予約タクシー事業許可証」を取得しなければならないが、順風車にはこれも必要ない。
昨年後半、哈囉出行は配車アプリ「嘀嗒出行(Dida Chuxing)」や、リムジンサービス「首汽約車(Shouqi Limousine & Chauffeur)」のプラットフォームを利用してタクシー事業を開始した。この事業は哈囉出行に直接的な収益をもたらすわけではないが、ネット配車市場は需要超過状態で、多くの顧客が見込めるため、まずは配車サービスによって大量の顧客を呼び込もうとしたのだ。そこから順風車の事業に展開するのは自然な流れであった。
滴滴ができなかったことを哈囉出行はやり遂げられる?
元々、順風車は滴滴にとって最も収益性の高いビジネスだった。
順風車は車のオーナーと乗客のマッチングを提供することで20~30%のマージンを得るビジネスモデルだ。規制の制約を受けないため急速にビジネスを拡大できた。
滴滴が以前発表したレポートによると、順風車の開始以来3年間で乗車回数は10億回を超えた。また、ビジネスニュースメディア「AI財経社」によれば、2017年に順風車事業が滴滴にもたらした利益は8億元(約132億円)だという。
だが、哈囉出行にとって順風車ビジネスへの進出は簡単なものではない。関係者によれば、かつて滴滴への配車リクエストは1日平均200~300万件、繁忙期で500~600万件程度だったという。それも滴滴のような大規模プラットフォームだから可能な数字であり、件数が少なければ収益も限られてくる。
順風車の本来の目的は、車のオーナーが通勤途中で同じ方面に行く乗客をついでに乗せ、交通渋滞や環境汚染を軽減することだ。しかし、今では多くの専業ドライバーが存在しており、それでは他の配車型サービスと変わらない。哈囉出行がこうしたドライバーたちを適正に管理できない場合、滴滴と同様に安全面でのリスクを負うことになる。
また、滴滴がサービスを一時停止している順風車を再開させる目処はまだ立っていないが、滴滴がこのビジネスを放棄するとは考えづらい。もし同社がサービスを再開すれば、短期間で市場シェアの大部分を取り戻す可能性もある。哈囉出行が対抗するためにはさらに多額の資金が必要となるとみられ、同社のキャッシュフローが悪化する恐れがある。
哈囉出行は公共サービス分野に進出した以上、政府による規制は避けられないと認識すべきだ。乗客の安全を脅かす悪質な事件が再び発生した場合、重いペナルティが課されるとともにさらなる規制の厳格化もあり得る。それは業界全体にとっても大きな打撃となる。
(翻訳・神江乃緒)
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