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ソフトバンクグループは5月12日、2022年3月期の決算を発表した。最終損益は1兆7080億円の赤字で、傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンド単体では2兆6394億円とさらに大きな赤字を計上している。
この悲惨な業績は決して中国と無関係ではない。ソフトバンクGの孫正義会長兼社長はこの20年、中国のインターネット業界の競争の構図にも大きく影響を及ぼしてきた世界的な伝説的投資家の1人だ。
孫正義氏は2000年、北京でアリババの創業者ジャック・マー(馬雲)氏と6分間の会話を交わし、2000万ドル(約25億円)の出資を決めた。資金繰りに困っていたアリババはこれで生き延びることができた。孫氏は2004年にも6000万ドル(約76億円)を投じ、アリババの株式の約30%を取得。2014年にアリババが米ニューヨーク市場に上場するとソフトバンクGの含み益は2900倍になったと言われる。ソフトバンクGは現在でもアリババの筆頭株主であり、持ち株比率は約24%だ。
ソフトバンクとGビジョン・ファンドが出資する中国企業は、アリババ以外にも中国のインターネット業界の隅々に存在する。TikTokを運営する「バイトダンス(字節跳動)」、オンライン配車「滴滴出行(DiDi)」、共同購入型EC「拼多多(Pinduoduo)」、大手EC傘下の物流会社「京東物流(JD Logistics)」、フードデリバリーサービス「餓了麼(Ele.me)」、オンライン不動産取引「Beike(貝殻)」、オンライン中古車取引「瓜子二手車(Guazi)」、オンラインフィットネスサービス「Keep」、オンライン教育「作業幇(Zuoyebang)」などスター企業の背後には彼らの存在がある。
ソフトバンクGが今回大きな損失を出した主因は、同社が出資した上場企業の株価が下落したことだ。
韓国のEC大手「Coupang」の株価が上場時から70%以上下落したほか、東南アジアのオンライン配車大手「Grab」、米フードデリバリーサービス「DoorDash」、インドのモバイル決済大手「Paytm」などの株価もさえなかった。
中でも中国のインターネット企業の不振は目立っている。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドが運営する資金は昨年6月時点で23%が中国企業に投じられているが、米国市場に上場する中国企業の株価はこの1年の落ち込みが深刻で、ソフトバンクGが大株主を務めるアリババの株価は1年で50%以上、滴滴出行の株価は半年で80%以上も下落した。
ソフトバンクの投資戦略もこれを反映し、昨年8月には中国企業への投資は当面様子見していくとの姿勢を示した。今回の決算発表後も孫氏は中国への新たな投資はより慎重にしていくと改めて強調した。一方で「投資を一切ストップするわけではない」とも補足している。
過去10年、中国のインターネット企業の創業者にとって、ソフトバンクGから出資を受けることはすなわち、ヘブライ人がエジプトを脱して約束の地にたどり着いたことに等しい意味を持っていた。これからの数年、いくつのベンチャー企業がモーセのように紅海を割り、目的地にたどり着くだろうか。
無論、ソフトバンクG1社が中国のインターネット業界の行く末を左右するわけではない。しかし、一葉落ちて天下の秋を知ると言うように、20年の急成長を経て数々の富の神話を生み出したインターネット産業が新たな歴史的転換点を迎えたことを、我々は今、目撃しているのかもしれない。
原文:WeChat公式アカウント「X科技実験室(ID:xtech2020)」
(翻訳・山下にか)
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