アジアの環境系スタートアップは、メルボルンに商機あり 1社あたり最大15億円の助成金も

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アジアの環境系スタートアップは、メルボルンに商機あり 1社あたり最大15億円の助成金も

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20211121日、世界中から多くの期待が寄せられる中、グラスゴーで国連気候変動会議(COP26)が開催された。特に、以下の3点が重要事項として伝えられた。

・気候変動は実在する脅威であること

・企業は気候のさらなる悪化を食い止めるために具体的な措置を講じること

・スタートアップが気候変動に対するソリューション開発において中心的な役割を果たすこと

オーストラリアのビクトリア州は、この新たな焦点の最前線に位置し、環境にインパクトを与えようとする海外のスタートアップ企業を支援している。

メルボルンへ進出する、アジア発環境系スタートアップ

リチウムイオン電池や代替電池のリサイクルシステムを設計・製造するシンガポールのGreen Li-ionは、メルボルンで成功する代表的な1社だ。

バッテリーのリサイクル自体は新しい産業ではない。長年にわたり、企業は伝統的な湿式冶金法を用いて、使用済み電池から貴重な金属を抽出してきた。しかし、このプロセスには大量のエネルギーと水資源が必要となり、そのコストは企業にとって大きな負担となっている。Green Li-ionの共同設立者兼CEOのレオン・ファラント氏は、KrASIAのインタビューで、「市場に出回る電池の95%近くはリサイクルされていない。これらの電池が埋立地に入ると周辺に漏れ出し、公害の原因となっています」と述べる。

Green Li-ion 共同創業者兼CEO レオン・ファラント氏

電池が廃棄物として埋立地に捨てられると、汚染物質となるだけでなく、火災の危険性もある。Green Li-ionは、この問題に対処するために「ハイドロ・リジュビネーション」という新技術を提案する。この技術は、使用済み電池から金属を抽出する湿式製錬に代えて、不純物を取り除き貴重な金属成分を残すことができる。

この新技術には、リサイクル工程での二酸化炭素排出量を8分の1に削減でき、使用する水の最大90%までを再生することができるといったメリットがある。Green Li-ionが開発する機械は、現在、主にリサイクル業者やバッテリーメーカーにライセンス供与されている。

業界向けに循環型の資源利用ソリューションを提供するもう一つのスタートアップにCAC-H2がある。CAC-H2は、「グリーン水素」の開発会社としてスタートしたが、後に「未来型燃料」の開発会社へと事業拡大している。この未来型燃料とは、グリーンアンモニアやグリーンメタノールなど、低炭素またはゼロ炭素の燃料を指す。

未来型燃料の多くは、太陽光エネルギーや風力エネルギーを利用した電気分解によって製造される。しかし、CAC-H2は、代わりに農業廃棄物や家畜排泄物などのバイオマスを利用することで温室効果ガスを発生させることはなく、廃棄物処理場への埋め立てや腐敗を防ぐ。

CAC-H2の技術を用いると、バイオマスはチャンバーに投入され、高温でガス化される。この過程で原料は分離され93%が回収、再生可能エネルギーの燃料として利用することができる。また一部は他の用途に利用することもでき、例えば抽出された水素を海洋関連に利用することも可能だ。

ビクトリア州政府による、海外スタートアップ支援体制

Green Li-ionCAC-H2には、多くの共通点がある。両社はシンガポールに本社を置き、ともにカーボンニュートラルへのビジョンから生まれ、現在はビクトリア州メルボルンで事業を展開している。

オーストラリア経済の中心地であるビクトリア州は、気候保護に対する国のコミットメントを体現している。ビクトリア州は、2030年までにエネルギー需要の45-50%を再生可能エネルギーでまかない、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという気候変動戦略を策定している。

ビクトリア州政府は、これらの目標を達成するために、16億豪ドル(約1476億円)相当という前例のないパッケージを発表、海外に向けても豊富なビジネス機会を提供している。関連分野で活動するスタートアップは、投資、雇用、イノベーションを促進することを目的とした新しい計画の恩恵を受けることができ、その一例としては新エネルギー技術分野の企業に最大2000万豪ドル(約18億円)の助成金を提供する「新エネルギー雇用基金」があげられる。

また、バルガーナ・グリーンパワー・ハブや、ビクトリア州の水素ハブ、6つの再生可能エネルギー地区(REZs)など、大規模なR&Dインフラによって、企業を支援する。メルボルン大学をはじめとした、この地域のトップクラスの大学と提携する機会も多い。Green Li-ionのファラント氏は、同社がビクトリア州への進出を決定した際の重要なポイントとして、ビクトリア州に優秀な化学系人材が豊富にいることを挙げる。「博士号を持つ一流の人材と研究開発を進められると考え、ビクトリア州を選びました」とも語っている。

スタートアップが期待できるビクトリア州のサポートとして、政府やビジネス界との強固な繋がりも重要だ。先日510日にシンガポールで開催されたInvestor Partner Summit Asia 2022において、CAC-H2の共同創業者兼グループCEOのグレン・デイビス氏は、Invest Victoria(ビクトリア州の投資促進機関)が行う海外スタートアップ向けのオーストラリア市場参入サポートについて賞賛している。

CAC-H2 共同創業者兼グループCEO グレン・デイビス氏

Invest Victoriaは、CAC-H2と国内のバイヤーや輸出先となる企業を結びつけ、進出後に成果を上げるための重要な役割を果たしたという。この繋がりから、後に2つの大きなパートナーシップ締結に発展している。1つは、アンソニー港との共同開発プロジェクトの締結。もう1つには、ジーロング水素ハブの基礎技術パートナーとしてCAC-H2が選出されている。「この2つのプロジェクトが、ビクトリア州における私たちの成功の基盤となっています」とデイビス氏は語り、それ以来、CAC-H2はオーストラリア全土で10以上のプロジェクトに着手している。

これらの海外スタートアップは、ビクトリア州政府が開始した国境を越えたグローバル規模でのビジネス機会にも期待することができる。ビクトリア州政府駐日代表のアダム・カニーン氏は、前述のInvestor Partner Summit Asia 2022で、ビクトリア州、日本、韓国の企業間における将来のコラボレーションについて非常に楽観的な見通しを示し、水素サプライチェーン(HESC)構築プロジェクトを例に挙げ、「10億ドル(約1300億円)以上の投資機会と、日本との100億豪ドル(約9200億円)規模の水素取引となる可能性を秘めている」と述べた。

ビクトリア州政府駐日代表 アダム・カニーン氏

クリーンエネルギーや気候変動分野に加え、ビクトリア州には、幅広い産業で新たな事業化を目指す国際的な一流企業が集まっている。例えば先進的な製造業、農業、生物医学分野は動きも非常に活発だ。

将来の成長機会に満ち溢れた地域に位置するメルボルンとビクトリア州は、アジア各国からのスタートアップの進出先として様々なサポートができるような準備が整っている。詳細については、Invest Victoriaのウェブサイトをご覧いただくか、世界中にある23の事務所までお問い合わせください。

(36Kr Japan 編集部)

この記事は、2022510日に開催されたInvest Victoria’s Investor Partner Summitのメディアパートナーとして参加したKrASIAによる活動レポートです。

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