内視鏡手術支援ロボットをモジュール式に、医療シーンに応じて自由に組み合わせ

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中国の病院で行われた内視鏡手術は2021年に約950万件に上り、主に婦人科、一般外科、胸部外科、泌尿器外科で採用されている。特に泌尿器外科では内視鏡手術支援ロボットの浸透率が高く、今後は他の診療科への活用が広がることも期待されている。ただ手術支援ロボットは非常に高価なため導入できる病院が限られており、手術費用も高額で患者の負担が増加するほか、手術室に十分なスペースがないと設置が難しい。

これらの課題に焦点を当てて2019年に設立された「瑞龍諾賦(Ronovo Surgical)」は、使い勝手の良いモジュール式の手術支援ロボットを開発し、価格の安さや利便性の高さで手術支援ロボットのさらなる普及を目指している。

創業者の馬長征博士は、手術支援ロボット「ダビンチ」を開発した米インテュイティブサージカル社で戦略開発部門のシニア・バイスプレジデントを務めた経歴がある。瑞龍諾賦はすでにシリーズAで資金を調達しており、出資者にはマトリックス・パートナーズ・チャイナ(経緯中国)や維梧資本(VIVO Capital)、GGVキャピタル、リリー・アジア・ベンチャー(礼来亜洲基金)が含まれている。

中国では外国製の手術支援ロボットも輸入されているが、思うように普及が進んでいないという。「ダビンチのような一体型の手術支援ロボットにはアームが4本あるが、中国の臨床現場では4本とも使用するケースは10%足らずで、9割以上は3本しか使っていない」と馬博士は語る。

コストを抑え、幅広い診療科で活用してもらうために、馬博士と共同創業者の毛穎博士はチームを率いてモジュール式の手術支援ロボットを開発した。瑞龍諾賦のロボットシステムは病院のニーズに合わせて、メインコンソール(操作部)、アーム数の異なるペイシェントカート(ロボット部)、3D腹腔鏡、手術器具などの製品を組み合わせられる。

ロボットアームを分離したモジュラー設計を採用したことで、病院が現場のニーズに合わせて機器の数量を選択できるようになっている。術式に応じた柔軟な配置や、異なる手術室間での移動も可能だ。設置面積が小さいため既存の手術室にも設置でき、導入コストや患者の費用負担を減らすことにもつながっている。

瑞龍諾賦の手術支援ロボットの大きな強みは、医師が慣れ親しんだ操作方法や手術手順に沿っているという点だ。

腹腔鏡手術では腹部の数カ所に5~8mmの小さな切開部を設けて手術器具を挿入するのが一般的で、切開部の位置によって手術操作のスペースが決まる。外国製の一体型手術支援ロボットの多くは切開部が一直線上に並ぶ方式だが、中国の外科医が一般的に採る術式とは異なるため、医師はゼロから手術方法を学ばなければならない。

同社は現在の外科医になじみのある手術方法に合わせ、習熟期間を短縮できるように改良を加えた。「手術器具は手術支援ロボットに取り付けられており、切開位置や操作スペースに直接関係してくるが、モジュラー設計によりこの3つの関係性をベストな状態にできる」。

また医師の目となる高精細3D腹腔鏡システムには蛍光物質のICGを使った蛍光イメージング機能を集積しており、3D再構成や蛍光イメージングによる血流可視化を組み合わせながら手術を進めていく。術前には3D再構成により患者特有の組織構造や病巣位置などの病理情報を確認し、術中には蛍光イメージング技術で血流評価や組織識別、腫瘍切除縁の分析を行って、手術成果を示しながら手術の進行を最適化できる。

毛博士は機能イメージングシステムについて次のように語る。「手術の際に体の組織構造を画像で医師に示せる機能イメージングは臨床的に大きな価値がある。医師が必要な情報を事前もしくはリアルタイムに得ることで、安全かつ正確な手術を行うことができ、より良い治療効果につながるからだ」。機能イメージングシステムは同社が手術支援ロボットと同等に重視し、注力している分野だという。

米コンサル会社のフロスト&サリバンによると、中国の手術支援ロボットの市場規模は2020年時点で4億ドル(約550億円)に過ぎず、世界市場のわずか5.1%だという。今後の拡大の余地は十分にあると言えるだろう。

(翻訳・畠中裕子)

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