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中国でティードリンク店が飽和している。「2021新茶飲料調査報告書」によると、2020年末時点でティードリンクショップ店舗数は約37万8000店となっている。その一方で海外市場はまだブルーオーシャンで、続々と中国式ティードリンクを海外で展開している。
日本では大陸系のティードリンクショップが進出するも、お世辞にも成功したとは言えない状況なのは日本で見てきた人ならご存知の通りで、36krをはじめとした中国メディアも日本市場はうまくいかなかった、というのが共通の認識だ。様々なティードリンク店の海外展開の記事から、海外展開で成功した理由と失敗した理由をまとめた。
まず大陸企業の進出前には2011年から2017年にかけて台湾のティードリンクショップ「CoCo都可」や「老虎堂」が北米市場に進出している。タピオカミルクティーの味、低価格やボリュームが受け入れられヒット商品に。
大陸企業が進出しはじめたのは2018年で、同年9月には低価格ブランドの「蜜雪氷城(MIXUE)」がベトナムに初出店し、現在では同国に200以上の店舗を展開するまでに成長した。安さが自慢のメニューをさらに中国よりも2割引してベトナムで販売しており、買いやすさをアピールしている。またベトナム人はより甘い飲料やミルクティーを好む傾向から、苦い風味のドリンクメニューをなくし甘さを強化した。現地の消費者ニーズに基づいて、親和性の高いローカライズした商品を開発したわけだ。蜜雪氷城はベトナムでの展開をきっかけに、タイ、マレーシア、インドネシアにも進出。インドネシアでは100店舗超を出店するまでに拡大した。
一方、高価格ブランドの「喜茶(Heytea)」「奈雪の茶(NAYUKI)」もほぼ同時期に海外に展開した。喜茶がシンガポールの商業地オーチャードロードにオープンした初日には2時間待ちの長蛇の列ができた。また、雲南茶の風味が特徴の「霸王茶姫(CHAGEE)」は四川省に本部を構え、中国西南を中心に展開しつつマレーシアにも出店し、現在同国では40店舗ほどある。開店場所についてはスターバックスやマクドナルドの隣にして動線を狙った。全ての店舗で利益があり、かつ中国国内の倍は売り上げている。
東南アジアは地理的および文化的に類似した特性を持つ最初の海外進出の出発点となっている。特にマレーシアやシンガポールについては、中国の情報も流入していて消費者は事前知識をもっている。その上で中国と同様の各国に合わせたキャンペーンを展開すると受け入れられるという。さらに中国で既にデリバリーのノウハウを身につけた上で海外進出したので、現地でデリバリーも行うようになり各国のコロナ禍でも売上を上げた。
東南アジアのみならず、アフリカにまで拡大
東南アジアだけではない。世界中の様々な地域で中国人が個人レベルで現地人と提携しティーショップをオープンしている。
アフリカにもティードリンクの波がやってきている。西アフリカのトーゴでは、現地在住中国人の徐祥氏が地元トーゴ人ビジネスマンと提携し、蜜雪氷城のビジネスモデルを真似たティードリンクショップ「Monsieur The」を数店舗オープン。最初は中国企業向けを考えたが、「貧しかったころの90年代の中国を想像したら、そこに進出する中国人向けでなく、地元アフリカ人向けに提供したほうがいいのではないか」と地元トーゴ人向けのビジネスに転換した。コーラ1缶が5元(約100円)のところ、8元(約160円)でミルクティーを販売している。徐氏によれば、1店舗8万元(約160万円)かけて開店すると、コストが1か月で賃料が2000元(約3万円)、人件費が1人600元(約1万2000円)、200杯超売れる場合、月に1万元(約20万円)以上の利益が出るという。中米メキシコでも同様に地元メキシコの経営者と組んでティードリンクショップを展開する中国人がいる。元大手ネット企業で働いていた徐夢氏はメキシコの小都市イラプアトでティードリンクショップを開いた。「メキシコは貧富の差が大きい。小都市のリッチな消費者に行けば売れる」と中国と重ね合わせ、地場のインフルエンサーがインスタグラムに大量に書き込むという中国の手法と似たような方法で一躍ネットで注目を浴び、1日100~200杯程度販売し、店舗拡大を目指している。
中国のティードリンクチェーンの成功の法則は概ね「中国で完成された量産体制の構築+デリバリー+ローカライズ+SNSマーケティング」となる。日本ではうまくいかなかったのは、SNSマーケティングでブームを仕掛けるが、既に先行するミルクティーブームの峠が過ぎていたことや、東南アジアや温かい地域では安い原材料のフルーツが日本では高価でどうしても商品の値段が高く利益が少なくなり、東南アジアなどのような展開にはできなかった。そしてなによりコロナ禍で店が開けなかった。外国人客の多い道頓堀に開いた奈雪の茶もその立地を生かせず閉鎖した。日本での存在感とは対照的に、東南アジアを中心にティードリンクが売れ、普及しているのだ。
(作者:山谷剛史)
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