現実世界を仮想空間に再現するデジタルツイン 「泰瑞数創」がスマートシティなどへ応用

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「デジタルツイン」とは、現実世界の物理的なシステムなどをデジタル世界に再現した「双子」のことだ。現実世界の運行プロセスをバーチャル空間でシミュレーションすることで、その動向やリスクを事前に察知して意思決定に活かすことができる。

リサーチ・アドバイザリー企業「ガートナー」は、2019年戦略的テクノロジートレンドのトップ10にこのデジタルツインを挙げており、2020年までに接続されたセンサーとエンドポイントの数は200億を超え、数十億のモノのデジタルツインが存在するようになると予測する。

2004年に設立された「泰瑞数創科技(Terra-IT)」はデジタルツイン産業に注力するテック企業だ。スマートシティ、スマートファクトリー、自動運転などの分野でデジタルツインに関わる全てのサービスを提供している。クライアントは1000社以上、提携するデベロッパーは200社以上で、売上高は毎年50%のペースで成長している。

同社のデジタルツインに関するサービスは大きく分けてデータ収集、モデリング、データ応用の3分野である。

データ収集

デジタルツインのデータ収集は、GNSS受信機や慣性計測(IMU)、レーザー計測などのテクノロジーを総合的に活用したもので、地上、室内、地下、水中など全ての物理空間における3Dデータを収集することができる。

データ収集においてキーポイントとなるのがレーザーを計測するセンサーだ。天長距離(高度)があっても高精度で作動するかどうかと、単位時間当たりのレーザースポットによってデータ収集のクオリティーや効率、コストが決まる。

モデリング

物理世界から大量の生データを収集した後、自動モデリングツールを使ってさらに処理を施し、物理世界を複製した3Dモデルを生成する。

これには視覚的な3Dモデルを構築するだけでなく、セマンティック技術を活用して建築物のタイプや敷地面積、階層、窓の数などを推考して認識することも含まれている。これにより、検索や分析を行うことができるようになり、さらなるサービスへの応用が可能になる。

画像出典:上海測絵院、上海航遙公司

応用分野

泰瑞数創が特に重点をおいているのがスマートシティ、スマートファクトリー、自動運転の分野だ。特にスマートシティは同社事業の70%を占めている。

スマートシティへの応用の1つは公共安全情報や緊急対応に関するものだ。都市の地理情報システムをベースに、デジタルツインのデータに基づいてシミュレーションを行い、リスクの予測・発見ができる。また火災が発生した場合に、位置や周囲の環境に応じた消火活動や緊急出動のプランを生成することも可能。さらに行政サービスやエネルギー供給においてインフラの設計や施工をサポートしたり、都市計画に活用したりされる。

スマートファクトリーでは、物理的な生産プロセスを再現してシミュレーションすることで、生産管理の効率を上げ、リスクの評価や業績予想を行うことができる。主に石油や電力などのエネルギー企業のほか、鉄鋼や建設機械、物流など生産型企業に向けてサービスを提供する。

自動運転においては、都市のデジタルツインを高精度の地図データとして自動運転車の環境データに活用できるほか、バーチャル空間でシミュレーションすることによりセンサー性能やアルゴリズムの信頼性を検証することが可能だ。自動車メーカーや自動運転設備メーカーなどを対象としている。

業界成長のキーファクター

デジタルツインはまだ成長の初期段階だ。泰瑞数創CEOの劉俊偉氏は、技術、資金、政策の3つが業界の成長に関わるキーファクターだとした。

技術面で、泰瑞は独自に研究開発を行うほかに、サプライチェーン提携や事業買収などにより技術能力を充実させてきた。またシリーズA、Bで資金調達を完了しており、今年はシリーズCで数億円(数十億~百数十億円)規模の調達を予定している。政策面でも規制の緩和が行われており、デジタルツインの公共サービスなどへの応用がさらに促されるとみられる。
(翻訳・畠中裕子)

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