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米タイム誌が11月11日(中国時間)、「Best Inventions 2022(2022年の最も優れた発明)」を発表した。AR(拡張現実)・VR(仮想現実)の分野では4つがランクインし、そのうち3つは企業向け製品だった。それぞれ「Kandao(深圳看到科技)」の3D VRカメラ「Obsidian Pro」、米「Magic Leap(マジックリープ)」のARヘッドマウントディスプレイ「Magic Leap 2」、キヤノンの3D VR動画撮影用魚眼レンズ「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」だ。
グッドデザインなど世界の各賞を受賞、「Kandao」の会議向け360度カメラ「Kandao Meeting Pro」を試す
米メタのVRヘッドセット「Quest 2」などヒット商品があるなか、中国発スタートアップ企業「VITURE」はダークホースとなり、消費者向け製品では唯一の受賞となった。タイム誌の講評は「歩くテレビ(TV to Go)」というものだった。
VITUREは2021年9月設立。今年4月に初めての製品「VITURE One」を発売した。アーリーバード価格を399~629ドル(約5万5800~8万8000円)に設定し、米クラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter(キックスターター)」で300万ドル(約4億2000万円)以上を調達。Oculusが5年以上保持していた240万ドル(約3億3600万円)調達という記録を上回った。
これまでのARグラスは演算性能と重量の兼ね合いに阻まれ、消費者のニーズに応える製品を作ることが難しかった。VITURE Oneはクラウドコンピューティングと5G(第5世代移動通信システム)を利用し、高い演算性能と携帯しやすさを両立。グラス本体の重量を78gにまで抑え、無理なく2〜3時間連続して装着できるようにした。
このほか、VITURE Oneの大きな特徴はネックバンド型のコントローラーだ。バッテリーとコンピューティングモジュールをネックバンドに収納、グラス本体とマグネットで接続できるデザインとなっている。この斬新なデザインはバッテリーとコンピューティングモジュールの放熱効率を向上させただけでなく、装着時の快適さと見た目の良さも兼ね備えた。ネックバンドにはAndroidを基に開発したOSも搭載されており、クラウドゲーム、クラウドストリーミング、メディアストリーミングやクラウドオフィスなどのアプリも搭載、コンテンツを充実させた。
人気ゲーム作品や没入感が必要な映像作品向けの製品として、VITURE Oneは現在主流となっている消費者向けARグラスに足りない近視補正機能を加え、没入感不足などの問題を解決した。近視ユーザーのニーズを考え、VITURE Oneには0.00〜⁻5.00Dまでの近視が補正できるダイヤルを搭載した。
またユーザーがより強い没入感を体験できるようにVITURE Oneは米オーディオ機器ブランド「ハーマンカードン(Harman Kardon)」と提携して開発した指向性スピーカーとアクティブ・ノイズキャンセリング(騒音と逆位相の音を発生させて、周囲の音を打ち消す仕組み)技術を採用している。
VITURE Oneが世界で初めてエレクトロクロミズム(特定の酸化物や有機物に電気を与えると、光学特性が変化し色が変わる現象)の技術を採用したARグラスだということも注目に値する。光の透過率を5〜80%の間で調節可能で、これによりユーザーの視界は「没入型の映画館」と「現実の世界」を臨機応変に切り替えることができる。
「眼鏡型の製品は元々ファッション性のあるイテムでもあり、VITURE Oneはテクノロジーファッションアイテムと定義づけた」とVITURE創業者の姜公略氏は話す。「眼鏡としてもユーザーは『かっこいい』と思ってこそ長時間着用する。テクノロジーとファッション性をうまく結びつけることが消費者向け市場では競争力になる」。
姜氏は米ハーバード大学デザイン大学院を卒業。マイクロソフトリサーチアジア(MSRA)、グーグルの先端技術研究機関「Google X Lab」、MITメディアラボに勤務した経験があるほか、ARスマートグラス開発「Rokid(霊伴科技)」でチーフデザイナーを務め、製品開発チームの責任者としてRokid Glassの開発を主導した人物でもある。
(翻訳・山口幸子)
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