低価格化が進むAI製品 市場競争の行方は? 

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業注目記事

低価格化が進むAI製品 市場競争の行方は? 

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

ネット配車サービスやO2O業界ではなじみの「値引きしてユーザーを掴む」手法が、AI製品でも盛んに行われている。

今まさに、アリババ、シャオミ(小米科技)、バイドゥによってスマートスピーカーの価格競争が繰り広げられている。2017年から現在までにアリババの「天猫精霊X1(TmallGenie)」とシャオミの「小愛音箱mini(Mi AI Mini Speaker)」が99元(約1500円)で、バイドゥの「小度智能音箱(DuSmart Speaker)」が89元(約1400円)で販売され、各製品の赤字と値引き額を足すと1台当たり平均100元(約1500円)になるという。

低価格戦略の効果は、すぐに販売台数に反映される。市場調査会社「Canalys」によると、中国のスマートスピーカー出荷台数は、2017年の200万台足らずから2019年には3000万台にせまる勢いで急拡大しているという。

翻訳機やペン型マイクロレコーダーでも低価格競争が起きている。2016年に科大訊飛(iFLYTEK)が業界初となるAI翻訳機を定価2799元(約4万4000円)でリリース。その後、複数のメーカーが次々と参入し、市場は低価格に流れた。昨年、「獵豹移動(Cheetah Mobile)」が発売した「小豹AI翻訳棒」は、149元(約2300円)という安さだった。

データ調査機関「中商産業研究院(Ask CI Consulting)」によれば、今後3~5年で中国の翻訳機市場は3000~4000万台規模になり、2020年には売り上げ561億元(約8700億円)になる見通し。

AI製品の大ヒットをもたらした技術の進歩

科大訊飛はスマートマイクロレコーダーを5月に発売すると発表した。2010年に発売した機種の音声入力は、中国初の中国語を認識する音声システムとなり、精度98%を誇ると輪番総裁の胡郁氏は言う。

コンシューマー向け商品が、科大訊飛の業績を握るカギとなっている。2018年の財務諸表におけるスマート製品の売り上げは前年比172%増の8億1300万元(約126億円)となり、売上高全体の10%以上を占めている。そのほとんどが翻訳機で、2018年の販売台数は30万台に達した。

科大訊飛の2018年決算報告書におけるスマート製品が売上高に占める割合

獵豹移動もコンシューマー向けAI製品に力を入れる。コンシューマー向けは完成するまでに時間はかかるが、技術の進歩が一旦軌道に乗れば、売り上げへの貢献度はBtoBよりはるかに大きい、と同社AI製品事業部の李良副総裁は言う。

89元のスマートスピーカーや149元の翻訳機など、各社は低価格を売りに消費者を取り込もうとしているが、このような価格競争に全ての中小企業がついていけるわけではない。

2018年に発売されたバイドゥのデイスプレイ付きスマートスピーカー「小度在家(Little Fish VS1)」は、値引額を含めると200元を超える赤字だという。

バイドゥの李彦宏CEOと「小度在家」

つまり、十分な資金がなければAI製品の市場競争についていくことはできないのだ。

国内のテック企業の悩みは、AI製品のサプライチェーンの確保が難しいことだ。開発初期はロットが少なく生産を引き受けてくれる工場も見つからない。多くの企業はここでつまずく。バイドゥでさえ設計から物流に至るまで、高い授業料を払ってきた。

値引きしない戦略を立てた科大訊飛は、ECサイト大手「京東(JD.com)」と合弁企業まで作りスマートスピーカー「叮咚音箱(DingDong)」をリリースしたが、この商品は最近では姿を消しつつある。

科大訊飛のAI製品は大きく分けて2種類ある。翻訳機やペン型マイクロレコーダーなどの業務ツール、もう一つはスマートスピーカー・テレビSTB(セット・トップ・ボックス)や玩具などコンテンツを利用するためのツールだ。

しかし、胡郁氏はスマートスピーカーを諦めたわけではない。「通信キャリアと手を組む等の方法を模索しているところだ」と語る。
(翻訳:貴美華)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録