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5月15日、テンセント(騰訊控股)が2019年度第1四半期の連結決算を発表した。連結売上高は前年同期比16%増の854億7000万元(約1兆3700億円)と、市場予想の886億900万元(約1兆4200億円)を下回ったものの、純利益(株主に帰属する利益)は前年同期比17%増の272億1000万元(約4350億円)と、市場予想の193億9600万元(約3100億円)を上回った。
この1年間、株価の乱高下、政府の規制によるゲーム事業の収入減、そして設立以来3回目となる大規模な組織改革を経験してきたテンセントは、to B(企業向け)サービス事業の拡大方向や“Tech for Social Good”(善用されるテクノロジー)ビジョンの明確化を通じて、従来の栄光を維持するるための糸口を模索している。
業界トップを維持するゲーム事業
爆発的な売り上げを記録している新作「ゲーム・フォー・ピース(和平精英)」や、任天堂との提携によるニンテンドースイッチの発売等からみて、テンセントは今なおゲーム業界のトップに君臨していると言える。
ゲーム事業を含むサービス事業の売上高は、前年同期比4%増の489億7400万元(約7840億円)であった。このうちネットゲームは285億1300万元(約4560億円)、ほぼ横ばい状態だ。また、デジタル商品、コンテンツなどのソーシャルネットワーク事業の売上高は前年同期比13%増の204億6100万元(約3270億円)であった。
存在感を高める広告事業
広告事業もその存在感を高めている。
第1四半期の広告事業の売上高は前年比25%増の133億7700万元(約2140億円)を記録した。このうち、テンセントビデオとテンセントニュースを中心としたオンラインメディア広告事業の売上高は前年比5%増の34億7900万元(約560億円)であった。一方、ソーシャルアプリによる広告事業の売上高は、主にWeChat(微信)の「モーメンツ」機能(LINEのタイムラインに相当)、アプリ内で利用できるアプリ機能「ミニプログラム」、ニュース情報サービスアプリ「QQ看点」を通じて、前年同期比34%増の98億9800万元(約1580億円)を記録した。新たに追加されたWeChatの広告機能は様々なマーケティングへの活用が期待されている。
これらは全て、ソーシャルアプリWeChatの商業化が加速していることを意味する。
新たに開示されたフィンテックおよびビジネスサービス事業
一方でテンセントは、より長期的な利益をもたらす新分野の開拓も進めている。
商業決済とクラウドサービス事業の成長を後押しするフィンテックおよび企業向けのビジネスサービス事業は、今回初めて開示され、前年比44%増の217億8900億元(約3490億円)を記録した。
しかし今回、WeChatペイ1日あたりの平均決済回数やテンセントクラウド(騰訊雲)の売上高は公開されなかった。2018年度、1日あたりの平均決済回数は10億回を超え、商業決済の売上高は前年度比2倍以上の増加を記録していた。一方、テンセントクラウド事業の売上高は前年度比100%増の91億元(約1460億円)であった。中国の証券会社大手「広発証券」は、企業向けのビジネスサービス事業は新たなエコシステムを通じて、広告、決済、クラウドサービス事業の成長を促し、テンセントの中長期的成長にもつながると予測している。
11億人超のWeChatユーザー数
今期、WeChatの月間アクティブユーザー数(MAU)は、前年同期比6.9%増、前期比1.3%増の11億1170万人、QQのMAUは前年同期比2.2%増の8億2300万人であった。また、動画や音楽の配信サービスを中心とした有料サービスのユーザー数は、前年同期比13%増の1億6550万人となった。
政策と時代の変化による不安要因
大手投資銀行モルガン・スタンレーによれば、新作ゲームが政府の認可を取得したことで、テンセントの株価は年初から26%上昇しており、今後の見通しも明るいという。投資判断は3段階中最上位の「オーバーウエイト」を維持し、目標株価は408香港ドル(約5710円)としている。ゴールドマン・サックスも、インターネットおよびソーシャルメディアプラットフォーム分野でのリーダー的地位を評価し、投資判断は同じく3段階中最上位の「買い」を維持し、目標株価は418港元(約5850円)としている。
規制によるゲーム事業の落ち込み問題は一段落したが、今後も政策や時代の変化がテンセントの発展に影響を及ぼす可能性は高い。
(翻訳・桃紅柳緑)
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