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ファストファッションの「ZARA(ザラ)」が先月5日、海外ではTikTokとして知られる中国のショート動画アプリ「抖音(Douyin)」で約4時間半にわたるライブ配信を実施したようだ。視聴者は延べ約48万7600人に上り、フォロワーは1本の配信で約3万5100人増えたという。
抖音にデビューしたZARAの成績は、商品を瞬時に売り切る再生回数1000万回クラスの人気配信者に比べ、世界的ブランドとしては芳しいものではなかった。しかし、ZARAが抖音のライブ配信にデビューしたことは収益よりもはるかに大きな意義を持つ。2006年に中国市場へ参入したZARAは、14年にアリババ傘下の「天猫(Tmall)」に出店後、他の電子商取引(EC)プラットフォームと提携したことがなかった。
今年になって抖音と提携したZARAは明らかに中国市場で新たな販路を探している。
ZARAの中国事業は縮小
最近閉店した上海市の南京西路店はZARAが2006年の中国進出時に開設した1号店で、記念碑的な意義を持っていた。ZARAを展開するアパレル大手「インディテックス」の決算書によると、中国本土にあるZARAの店舗数は19~21年の3年間で179店から133店に減少した。
インディテックスが中国の実店舗を縮小する動きは2021年から顕著となった。同年初めに傘下ファッションブランド「Bershka」「Pull&Bear」「Stradivarius」は実店舗がすべて閉鎖され、公式ウェブサイトや天猫旗艦店などのECチャネルだけが残った。この3ブランドは昨年7月にECチャネルも閉鎖し、中国市場から完全に撤退している。
コロナ禍の影響が原因にしろ、中国ブランドの台頭が原因にしろ、ZARAの中国事業は確実に衰退に向かっている。生き残るためには大きな流れに順応してオンライン市場に目を向け、新たな販路を探す必要がある。
ライブコマースがECの構造を変える
中国市場ではここ数年「実店舗を諦めてECを取り入れる」ことがファストファッションブランドのトレンドになると共に、ライブコマースの発展がECの構造を変えており、抖音はその中で大きな役割を担っている。
中研普華産業研究院のリポートによると、ECプラットフォームの分化に伴って抖音と「快手(Kuaishou、海外版は『Kwai』)」に代表されるライブコマース・プラットフォームが消費者の人気を集めている。抖音と快手は強大なユーザー基盤を生かしてEC事業に注力している上、ユーザーの粘着率が高いため、アリババ傘下の「淘宝(タオバオ)」とライバル関係を築きつつある。
抖音と快手は2021年、大手のアリババ、京東(JDドットコム)、拼多多(Pinduoduo)に次ぐ新型ECプラットフォームとなり、市場シェアはそれぞれ5%、4%だった。
中国商務部のデータによると、2022年上半期に中国のライブコマースは1000万本、アクティブ配信者は40万人、視聴者は延べ500億人を超えた。この時期にライブコマースはインターネットコンテンツの中で最も勢い良く発展したと言える。
抖音は短編動画プラットフォームの最大手としてライブコマースの世界でも無視できない勢力となっている。また、ファッションはECの世界でシェアが最も高い商品カテゴリーとなっている。
データ提供サイト「新榜(Newrank)」のリポートによると、2022年に抖音が開催したセールイベント「818」では、ファッション・インナーウェアカテゴリーが全体の売上高に占める割合は26%だった。これらのファッション・インナーウェアブランドの多くは、天猫でも長年にわたり事業を展開しているという。
抖音と快手のECプラットフォームでもファッションは流通取引総額(GMV)の割合と収益が最も高いカテゴリーで、出店企業も増えている。中信証券(CITIC Securities)のリポートによると、抖音のファッションカテゴリーでは企業が発信者となるライブコマースが主流となりつつあり、2020年6月から21年1月までに企業アカウント数は88%増、そのフォロワー数は99%増と大きく伸びた。
抖音のファッションカテゴリーの規模はアリババ系の淘宝・天猫に迫り、2021年10月の売上高が1億元(約19億円)を超えた店舗は淘宝・天猫の10軒に対し、抖音では15軒だった。また、中国で毎年恒例の通販セール「双11(ダブルイレブン)」と「618」でトップ20にランクインするファッションブランドは全て抖音のECプラットフォームに出店しており、そのほとんどが22年にライブコマースを始めた。
ライブコマースは従来の買い物のスタイルを変え、商品を製造してから消費者に届くまでのルートを短くしたため、ブランド側に好まれている。この大きなオンライン市場に対し、実店舗を縮小しているZARAが生き残るために興味を抱いても不思議ではない。ブランドの市場拡大と短期的成長に加え、長期にわたるブランド価値の保持にライブコマースをどのように活用するかがカギとなる。
(翻訳・大谷晶洋)
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