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6月6日、中国工業情報化部は「中国電信(China Telecom)」、「中国移動(China Mobile)」、「中国聯通(China Unicom)」、「中国広播電視網絡(China Broadcasting Network)」の4社に5G営業免許を発行した。
中国の5G時代の幕開けにより、通信業界には巨大な商機が生まれ、関連産業が活性化することが期待されている。その中でも特に大きな恩恵を受けると思われる産業を以下にまとめた。
小型基地局「スモールセル」
1兆元(約16兆円)規模の通信インフラ市場において、まず巨額の資金が流れるのが通信設備だ。「長江証券(Changjiang Securities)」の分析によれば、5G運用において、無線アクセス・ネットワーク(RAN)の構築費用が全体の50~70%を占めるといい、それを支えるのが大量の基地局だという。
これまで、高い技術が求められる大型基地局(マクロセル)はファーウェイ、「ZTE(中興通訊)」、ノキア、エリクソンの4社による寡占状態だった。しかし4Gから5Gへの変化に伴い、小型基地局「スモールセル」に大きなチャンスが巡ってきた。
5Gは高周波数帯を使用し、電波の到達距離が4Gよりも短いため、安定した通信を確保するためには基地局を高密度に設置する必要がある。カバー範囲が数十メートルと狭く、地域内に密集して設置できるスモールセルは、高周波数帯の通信と低消費電力という5G時代のニーズに合致する。
この流れを受けて、スモールセル事業を展開する企業の株価は上昇。アンテナ、半導体チップの1つであるFPGAなどサプライチェーンの川上企業にもその恩恵は及んでいる。
光通信専用チップ
通信設備に欠かせない光通信専用チップにも注目が集まっている。
上述の通り5G基地局は高密度で設置されるため、その数は少なくとも400万~500万台に上るとみられる。基地局の数の多さに加えて、基地局の通信構造の変化に伴い1台あたりに使用される光通信モジュールの数も4G時代より増加する。それにより数十億ドル(数千億円)規模の巨大な市場が形成されると予測する業界関係者もいる。
中国移動投資公司が発表した「中国5G産業発展および投資報告」では、5Gネットワークで使用される光通信モジュールの総数が4G時代の2~4倍に膨らむと予測している。
今のところ日米企業が大きなシェアを占める高速通信用チップだが、国産化の動きが高まり、多くの企業がこの分野に参入している。
5G対応端末
5G対応の端末も期待の分野だ。大手リサーチ会社「Strategy Analytics」の試算によると、5G対応端末の出荷台数は2019年の200万台から2025年には15億台に増加するという。
5Gでは使用される周波数帯が大幅に増加する。4G LTEで52ある周波数帯は、5Gになると60以上に増加するともいわれる。複数の周波数帯に対応した端末の開発は簡単なことではない。
これによりモバイル端末のコスト構造に変化が生じるだろう。4G時代はコストの大部分を占めるのがディスプレイやCPUだったのに対し、5G対応端末ではRF(無線周波)部品になるとみられる。4G用のフロントエンドモジュールのコストはおよそ8~10ドル(約870~1100円)だが、5G時代にはCPUより高い25~40ドル(約2700~4300円)に跳ね上がる可能性がある。
モバイル端末のコア部品は国産化が進んでいるが、RF部品に関してはまだ欧米メーカーが世界シェアの95%を占めている。4G時代に入ってからは、国内メーカーも注目を集めるようになっており、今後の成長に期待したい。
サプライチェーン全体への恩恵
5G時代の幕開けは、基地局建設や5G対応端末などのサプライチェーンの川上産業だけでなく、川下のアプリ開発などにも大きな恩恵をもたらすことになる。
さらに5Gで実現する高速通信、低遅延ネットワークにより、クラウドのさらなる成長が促されるだろう。クラウド技術を活用するAI+IoT、エッジコンピューティング、IoV(車のインターネット)、自動運転などの業界にも大きな期待が寄せられており、多くの資本家の注目が集まっている。
(翻訳・畠中裕子)
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