中国EV大手NIO、車載バッテリー内製化に本腰 パナソニックやアップルから幹部引き抜き

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

中国EV大手「NIO」、車載バッテリー内製化に本腰 パナソニックやアップルから幹部引き抜き

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国の新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」が車載バッテリーを内製化する決意を固めたようだ。

36Krの独自取材によると、NIOはバッテリー事業のためハイクラス人材の確保に奔走しており、米アップルでバッテリー品質管理のシニアディレクターを務めたShawn Hao氏やパナソニックの子会社「パナソニックエナジーノースアメリカ」で技術責任者を務めた井崎征吾氏を招聘した。両氏はすでにNIOに入社したという。

Shawn Hao氏はバッテリー業界のベテランだ。ビジネスSNSのLinkedInに掲載された情報によると、同氏はダイムラー・クライスラーに勤めた後、米バッテリーメーカー「A123システムズ」(現在は中国の大手自動車部品メーカー「万向集団(Wanxiang Group)」傘下)に移り、バッテリー業界でのキャリアを歩みはじめた。

NIOは昨年、車載バッテリーを内製化すると宣言して以来、相応のリソースを割いてきた。2月24日にはバッテリー工場の第1期工事が着工し、報道によると、年間生産能力は40ギガワット時になり、大型円筒バッテリーを生産するとみられる。NIOは同日にバッテリー生産の技術パートナーを集めたフォーラムを開催しており、同社のバッテリー開発部署のメンバーがすでに800人を超え、開発費として年10億元(約195億円)以上を投じる計画だと李斌CEOが発表した。

これは決して小さな額ではない。CATL(寧徳時代新能源科技)、BYD傘下の「弗迪電池(FinDreams Battery)」に次いで車載バッテリー搭載量3位の「中創新航科技(CALB)」ですら2021年の開発費は3億元(約59億円)に届かない。急進的な事業展開を進める「蜂巣能源科技(SVOLT Energy Technology)」でも21年の開発費は7億2400万元(約141億円)で、22年にようやく10億元(約195億円)に届いたと推計されている。

中国EV大手NIO、独自のバッテリー工場建設へ CATLへの依存度を削減

ハイクラス人材の確保、大規模な資金投入、大胆な生産計画からはNIOの決意の大きさが見て取れる。

バッテリー製造は学際的であり資本集約型でもあるため、自動車メーカーが内製化を決めるには慎重さが必要だ。しかし、一貫して先端技術を追求してきた新興メーカーのNIOは、迷うことなく自社事業にバッテリー製造を組み込んだ。

李CEOは2022年1〜3月期の決算発表後のカンファレンスコールで、今後の車載バッテリー調達に関し、自社生産と外部からの購買を組み合わせていくと発表した。さらに、自社のバッテリー開発人員がすでに400人を超えていること、自社で生産したバッテリーが24年に同社のサブブランド「ALPS(阿爾卑斯)」の車両に搭載される予定だとも述べた。

NIOのバッテリー内製化プロジェクトは毎年10億元(約195億円)規模の開発費を投じ、人員を倍に増やして急スピードで進んでいる。

36Krの取材によると、上海にあるNIOの小規模試作ラインではすでに大型円筒バッテリーのサンプルが完成している。バッテリーセル、バッテリーパックの試作ができるこのラボラトリーは竣工はまだだが、主要機器メーカーが半年近く前から入居している。

自動車メーカーが自社でバッテリーを開発することはとくに珍しいことではなくなった。長城汽車(Great Wall Motor)から独立した蜂巣能源はバッテリーパックの組み立てからスタートし、自社でセルを生産するようになった。昨年には上海証券取引所のハイテクベンチャー向け市場・科創板(スターマーケット)に上場を申請している。広州汽車集団(GAC Group)は「因湃電池(Yinpai Battery Technology)」を設立し、昨年11月に広州市で生産拠点を着工させている。

NIOに限らず、トップクラスの新興自動車メーカーはいずれもバッテリー内製化の技術ソリューションは完成させている。ただ、量産に踏み切るかを決めていないだけだ。

駆動用バッテリーはEVの中核を成す部品であり、車両の製造コストに占める割合がかなり大きい。また、航続距離や充電速度などはUX(ユーザーエクスペリエンス)の中心を成す要素でもあり、完成車メーカーが自らバッテリー開発を手がける動機はこの点にある。李CEOも昨年末に社内で行われた意見交換会で「バッテリーが車両全体に占めるコストは40%だ。もしバッテリーメーカーの粗利が20%なら、内製化に切り替えることで粗利が8%増えることになる」と述べている。

あるバッテリーメーカーは「完成車メーカーが年30万台を売るならば、バッテリーは自社で製造するのが経済的だ」としている。一方、NIOの李CEOが3月1日のカンファレンスコールで明らかにしたところによると、同社の今年の目標販売台数は24万台だ。

駆動用バッテリー業界ではすでに新たな競争が始まっている。大型円筒バッテリー4680(直径46mm×長さ80mmのバッテリー)、急速充電対応バッテリー、リン酸マンガン鉄リチウムなどの新技術をめぐって、中堅以下のバッテリーメーカーや新エネルギー車メーカーも参入機会を得ることになった。一方の老舗・トップメーカーはほぼ同じスタートラインに立っている。また、豊富なリソースを握るNIOは攻守ともになかなかの戦績を出している。

しかしバッテリー事業は多くの保有資産が必要で、生産体制も大規模になるため、自動車メーカーが参入するにはリスクが伴う。ある程度の規模を実現できなければ、バッテリー内製化は当初の目標ほどコスト的なメリットを得られない。現在のNIOは販売台数としては爆発的に成長しているとは言い難い一方で、研究開発と事業展開に関しては業界でも抜きん出ており、そもそもが「大きな賭け」に出ている状態だ。バッテリー内製化がここに加わり、その「大きな賭け」はよりスリルを増している。

(翻訳・山下にか)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録