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動画サイト業界では、14年もの間、業界を挙げて大金をつぎ込んだ結果、有料会員数をついに1億の大台に乗せた。
先頭を切ったのは大手動画配信サービス「愛奇芸(iQIYI)」だ。6月22日の午前5時13分14秒、有料会員数が1億人を突破。この時を迎えるため、同社CEOの龔宇氏と会員業務責任者でもある高級副総裁の楊向華氏はリアルタイムで会員数が表示される大スクリーンの前で夜を明かした。
数ある動画サイトにとって、有料会員数でのリーダーという位置は譲れない戦いだ。
これに先立ち「騰訊視頻(テンセントビデオ)」は5月15日、財務報告の中で有料会員が8900万に達したことを発表している。
1億という数字が意味するものとは?
1億という会員数は、会員事業の規模がこれまで考えられていたよりずっと大きいことを意味する。
2018年第3四半期、愛奇芸の会員収入は29億元(約455億円)となり、初めて広告収入の24億元(約376億円)を上回った。そして両者の差は拡大し続け、5月に発表された最新の第1四半期決算報告によると、会員収入は34億元(約534億円)、オンライン広告収入は21億元(約330億円)となった。
動画サイトの次の手は
ユーザーは1つのプラットフォームだけにお金を払うわけではない。前出の楊氏によると、多くのユーザーは同時に複数の有料会員サービスに加入しているという。中国では1人のユーザーが平均して1.3~1.4件と複数の動画サイトに会員登録している。米国ではユーザー1人当たり2.6件とのこと。現在、愛奇芸とテンセントビデオの「約2億」という会員数がどの程度重複しているものかはわかっていない。
しかし、ユーザーはプラットフォームではなくコンテンツに料金を支払っているわけで、コンテンツの差別化という前提の下では1人のユーザーが複数のプラットフォームの会員になるのはあり得ることだ。だが、いったんプラットフォームに魅力のあるコンテンツが不足すれば、ユーザー流失の可能性が生じる。
動画プラットフォームにとって、いかにユーザーを引き留め、その消費金額を引き上げるかが重点となるだろう。愛奇芸のデータによると、有料会員1人当たりの四半期消費額は前期比で4.0%向上したという。同時に年間の会費支払い期間は3年前の平均4カ月から8カ月へと増加した。
新規ユーザー獲得に関していえば、動画プラットフォームのローエンド市場への浸透率は高くない。これは動画サイトに限らず、あらゆる有料サービス商品についても言えることだ。愛奇芸の有料会員は主に大都市である一~二級都市に集中しており、三~五級とされる地方都市での浸透率は高くない。ローエンド市場における有料サービスの浸透には長いプロセスが必要だろう。
また、コンテンツのバラエティをより豊富にし、あらゆるユーザーのニーズに応えるため、さらなる投資が必要だろう。「火鍋劇(一話10分前後のショートドラマ)」やモバイル端末での視聴を想定して作られた「タテ型ショートドラマ」、視聴者がストーリーを選択できる「インタラクティブ・ドラマ」など、動画サイトでは絶えず新しい試みが行われている。有料会員のメリットは「広告の非表示」、「オリジナルコンテンツを楽しめる」というものだが、前者で差別化を図ることは難しく、重要なのはやはり後者、つまりコンテンツだ。しかし、それは非常にコストがかかるところでもある。
動画サイト側もコストやリスクを分散させる新しい方法を模索している。流行の兆しが見られる「分帳劇(有料会員の再生数に応じて製作者へ支払われる金額が決まる)」もその一つだ。優良コンテンツの創出・制作能力をもつ企業やチームは、このモデルを通してユーザーから直接収入を得ることができるうえ、製作の励みにもなる。
いずれにせよ、動画サイトの会員数が1億という大台に乗った後も競争がさらに激しくなることは間違いないだろう。(翻訳・山口幸子)
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