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中国Eコマース大手「JDドットコム(京東集団)」は、現任の徐雷CEO(最高経営責任者)が近く退任し、後任には現在CFO(最高財務責任者)を務める許冉氏が就くと発表した。同グループでは先月、子会社の「JDリテール(京東零售)」が過去5年来で最大規模の組織再編を実施したばかりだ。
徐CEOは退任後も、京東集団顧問委員会の初代理事長として、引き続き同グループの戦略・組織・事業のマネジメントやプロジェクトに関わっていく。業界関係者は「徐氏の在職期間はちょうどJDドットコムが急成長を遂げた十数年と重なっており、徐氏とJDドットコムは互いに成果を上げて成長してきた」としている。
インターネット業界に並み居る経営幹部の中でも徐雷氏は一風変わった存在だ。ピアスを着け、ストリート系ブランドを着こなし、ロック音楽をたしなむと同時に、筋金入りの文学青年でもある。JDドットコム入社前には短期間だが大手パソコンメーカーのレノボ(聯想)に勤め、JDドットコムに正式入社したのは2009年のこと。在職中の十数年、オンラインモール「京東商城(JD.com)」のマーケティング責任者や副総裁、JDリテールのCEOなど要職に就いてきた。
2011年の一時期はJDドットコムを離れていたが、創業者の劉強東(リチャード・リウ)氏の要請でカムバック。その後はマーケティング部門を管轄し、営業の才能を発揮した。現在ではアリババの「ダブルイレブン(双十一)」と肩を並べるようになった毎年恒例の大型セール「618」などは、「JDドットコムが消費者の印象に残るように」と同氏が一手に推し進めたイベントだ。17年にはJDドットコムのCMO(最高マーケティング責任者)に就任、翌18年には京東商城の初代輪番CEOも兼任するようになり、名実ともにJDドットコムの「ナンバー2」となった。
ただし、就任直後に「暗黒期」も経験した——「ミネソタ事件(創業者の劉強東氏が2018年、米ミネソタ州で女子大生に対する強姦容疑で拘束された事件。最終的には不起訴に)」だ。この影響でJDドットコムの株価は大暴落し、一時は17年以来の安値を記録している。しかし、徐氏は組織再編を実行して再起を支えた。JDドットコムはその後、3年連続で急成長を遂げている。19年7〜9月期には小売り事業の営業利益率が、2014年のナスダック上場以来最高の3.3%にまで伸びた。さらに21年中間決算では小売り事業の営業利益は60億元(約1200億円)に迫った。株価も18年から反発し、累計で300%以上も上げている。
しかし、この1年は事業の最前線に立つことも少なくなり、四半期ごとのカンファレンスコールや618セールなど重要なイベント以外には姿を現さないことが多かった。JDドットコムの中核事業の伸びは22年に入って再び減速し、4〜6月期の売上高成長率は20年の香港上場以来最低の5.4%にまで下がっている。
徐氏に替わってCEOに就任する許冉氏は、2018年7月入社。JDリテールのCFOを務め、20年6月にはグループのCFOに就任した。過去にはプライスウォーターハウスクーパース(PwC)でパートナーを務め、北京事務所およびサンノゼ事務所で20年近く就業した。
JDドットコムのCFOに就任してからの2年間で、「達達集団(DADA GROUP)」や「徳邦物流(DEPPON LOGISTICS)」、「中国物流資産(China Logistics Property)」など物流系上場企業のM&A、子会社「京東科技(JD Technology)」の事業再編、JDドットコムの香港市場への重複上場などに貢献した。劉強東氏は同氏を「JDドットコムの投資・資金調達で重要な役割を果たした」と評価している。
財務関係では経験豊富な許氏だが、在職5年の間にコアコマース事業の第一線で指揮を執った経験はない。
JDリテールは先月、過去5年で最大規模の組織改革を実施。サードパーティー出店の店舗と自社直営の店舗の垣根を取り払い、組織構造をシンプルにした。許氏は新たな「ナンバー2」として抜擢された格好だが、社内の関係者は「劉強東氏に次ぐ影響力を持っていた」徐雷CEOが退任すれば、昨年末から再び活発な動きを見せている劉氏が最前線に立つ機会が多くなり、新たな組織改革を主導する可能性もあると推測している。近く開催される618セールは、新経営陣が直面する初めての試練となるだろう。
(翻訳・山下にか)
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