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米テスラがベルリンのメガファクトリーで、中国の電気自動車(EV)最大手BYD(比亜迪)のバッテリーを搭載したモデルY RWD(後輪駆動)の製造をすでに開始しているという。これはBYDのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーパックを初めて搭載したモデルで、バッテリー容量は55KWh、航続距離は440キロメートルだ。独メディアTeslamag.deが報じた。
一方、上海メガファクトリーで製造する欧州向けモデルYのスタンダードレンジでは、中国CATL(寧徳時代新能源科技)の容量60KWh、航続距離455キロメートルのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用している。
報道によると、モデルYは車体のフロント・リアを一体成型する最新の鋳造技術を採用している。これにリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用したBYDの「ブレードバッテリー(刀片電池)」を組み合わせることで、ボディの強度と安定性は大幅に高まったという。テスラのベルリン工場ではモデルY パフォーマンスやロングレンジを製造しており、BYDのバッテリーを搭載したモデルY RWDは1カ月以内にラインオフするとみられる。
中国国内ではテスラの主なバッテリーサプライヤーはCATLと韓国LG化学(LG Chem)傘下「LGエナジーソリューション」とされ、BYDのバッテリーを採用するという計画は伝えられていない。
BYDがテスラにバッテリーを供給するという情報が流れるのは今に始まったことではない。2021年にテスラがBYDのブレードバッテリーを採用するとの噂が流れたが、この時は双方ともにコメントをしなかった。
BYDグループの執行副総裁で汽車工程研究院院長の廉玉波氏は、昨年6月に取材に応じた際、両社の提携について初めて公に認めた。廉氏は「BYDはテスラをリスペクトしている。テスラに学ぶべきところもあり、イーロン・マスクCEOは良き友人だ。いずれBYDはテスラにバッテリーを供給するだろう」と語ったが、具体的な内容には触れなかった。
昨年8月にはBYDのバッテリーを搭載したテスラ車がEUの自動車型式認証を取得したことが報道された。そして今回、改めて両社の提携の進捗が明らかになった。これについて36KrはBYDに問い合わせたが、ノーコメントとの回答だった。
BYDはバッテリーの受注に事欠いているわけではないものの、外部への供給となるとやはり厳しく、競争相手の完成車メーカーがBYDを主要サプライヤーにするのは相当に難しい。
しかしバッテリーの外部供給はBYDが成長していくうえで避けられない。バッテリー事業そのものについて言えば、BYDのブレードバッテリーはセルの形状により3種類に分かれ、BEV、ハイブリッド車、商用車に対応、すでにバッテリープラットフォームとして完成されている。
BYDが2022年に製造した駆動用バッテリーとエネルギー貯蔵バッテリーの設備容量は約89.84GWhだった。駆動用バッテリーの約95.3%はBYD傘下のブランドに供給され、残りの約4.7%は「中国第一汽車集団(China FAW Group)」傘下の「一汽紅旗」、「長安汽車(Changan Automobile)」、「北京汽車集団(BAIC Group)」、「東風汽車集団(Dongfeng Motor Group)」などのBEVに搭載されている。シェアは小さく、BYDが各大手メーカーのバッテリー主要サプライヤーであるとはいえない。
BYDは海外顧客の開拓にもそれほど積極的ではない。テスラ以外に米フォードや仏ステランティス(Stellantis)、独ダイムラーとも協力の意向はあるようだが、実質的な進展は見られない。
BYDがテスラのサプライチェーンに正式に加わることは、バッテリーの外部供給を増やすという重要なサインと捉えることができ、同社のバッテリー事業にとって極めて大きな意味を持つ。
テスラの主なバッテリーサプライヤーはLGエナジーソリューション、パナソニック、CATLだ。唯一CATLがリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを供給している。もしBYDが正式にテスラのサプライヤーに加わるのであれば、バッテリーサプライチェーンの構図に少なからぬ影響を及ぼすことになるだろう。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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