エヌビディアのフアンCEO、中国本土は訪れず。米半導体輸出規制が事業に影響

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米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、5月30日~6月2日の台北国際コンピュータ見本市(COMPUTEX TAIPEI 2023)に参加した後、米国へ戻り、うわさされていた中国本土への渡航は実現しなかったようだ。同氏がテンセントや字節跳動(バイトダンス)など中国テック企業の幹部と面会するほか、電気自動車(EV)メーカーの理想汽車(Li Auto)、比亜迪(BYD)、スマホメーカーのシャオミなどを訪問するために中国本土へ渡る可能性を複数のメディアが報じていた。

フアンCEOが中国本土へ渡航するというニュースが注目されたのは、中国と米国の対立がもたらしたエヌディビアに対する半導体輸出規制が背景にある。また、アップルのクック CEOやテスラのマスクCEOなど世界の著名起業家たちが今年相次いで中国を訪れたこともメディアと世間の関心を集めてきた。

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エヌビディアにとって欠かせない中国市場

今年になって対話型AI(人工知能)「ChatGPT」が世界に新たなAI開発レースを巻き起こす中、エヌビディアの時価総額は5月30日に一時1兆ドル(約140兆円)を超え、フアンCEOは華人起業家として初の「時価総額1兆ドル」を達成した。

演算力、アルゴリズム、データはAI時代を構成する三要素といわれる。そのうちの演算力を決めるのが、ChatGPTの学習などを支えるコアパーツであるGPU(Graphics Processing Unit)だ。ChatGPTを動かすには約1万枚のエヌビディア製GPU「A100」を要するという。市場調査会社TrendForceの試算によると、今年出荷された120万台を超えるAIサーバーのほとんどは同社製GPUを搭載し、そのシェアは60~70%に上る。

需要に後押しされ、今年に入ってから同社の株価は上昇率が最高で170%を超えた。5月25日の終値は前日比24%の急騰となっている。

フアンCEOの渡航は実現しなかったが、エヌビディアにとって中国市場が重要なのは間違いない。同社の2023年会計年度(2022年2月~2023年1月)決算によると、中華圏(中国大陸・香港・台湾)での売上高は世界全体の半分近く(47%)を占めた。

米国商務省は昨年10月に発表した輸出管理規則で、中国の半導体メーカーに対する先端チップと先端製造装置の輸出を禁止した。エヌビディアのA100とエンタープライズAI向けGPUの「H100」も、輸出規制の対象となっている。

こうして、世界最大級の市場である中国で事業が展開できなくなったことは、エヌビディアとフアンCEOのどちらにとっても面白くないだろう。特に中国ではAI生成コンテンツ(AIGC)ブームによって「大規模言語モデルの開発競争」が起こり、その基盤となる演算能力に対する大手テック企業の需要が急増しているが、エヌビディアは輸出規制によってこの巨大市場に広くアプローチすることができない。

そこで同社は中国市場向けに代替モデルGPUの「A800」を発売し、経済的な損失を減らそうとしている。5月24日付の英フィナンシャル・タイムズに掲載されたインタビュー記事で、フアンCEOは米バイデン政権が中国の半導体技術にかけた輸出規制によって、重要な市場で事業を展開できなくなったことに不満を示した。また、輸出規制を受けて中国企業が独自にチップの生産を始めたと指摘。「米国は慎重に事を進めなければならない」と語っている。

(翻訳・大谷晶洋)

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