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中国EC大手「拼多多(Pinduoduo)」傘下の越境EC「Temu」が、業績を大きく伸ばしている。2023年1~3月期のGMV(流通取引総額)が割引後の金額で10億ドル(約1400億円)に迫り、割引前の定価で計算すると約20億ドル(約2800億円)に達したことが複数の情報源から明らかになった。この数字からすると商品の割引率は50%に上っており、低価格を売りに顧客獲得を進めている段階であることが分かる。
一時、注文が殺到しパンク状態に陥ったTemuだが、人員補充や倉庫増設などの対策を講じた後は、3月以降も販売額が急増し続けている。市場調査会社YipitDataによると、月間GMVは4月が6億ドル(約850億円)、5月が6億3500万ドル(約900億円)だった。
事情に詳しい人物によると、6月前半のGMVも前月に比べて増加しており、月間では7億ドル(約990億円)に達するとも見込まれている。ここから試算すると、今年上半期のGMVは30億ドル(約4300億円)近くになるとみられ、年間GMV100億ドル(約1兆4200億円)の達成も見えてきた。ライバル「SHEIN」の昨年のGMVは約300億ドル(約4兆2600億円)で、達成までに14年を費やしてきた。
これらの情報に対して親会社の拼多多は、上述の数字は事実ではないとコメントしている。
Temuは今や破竹の勢いで成長しており、SHEINに大きなプレッシャーを与えている。Bloomberg Second Measureが数十億件のクレジットカードとデビットカードの取引記録を分析したところ、米国人が5月中にTemuに支払った金額はSHEINより20%近く多かったという。
急速な市場拡大とユーザー獲得により、TemuのGMVはさらに成長することが見込まれる。昨年9月のサービス開始以来、Temuは米国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、ドイツ、メキシコなど12カ国でサイトを開設している。
また日本サイトのオープンを6月22日に予定しており、すでに日本向けの航空便を大量に手配し、EC業界の専門家とも接触していることがメディアで報じられた。さらに東南アジア市場への進出に向けても準備を進めていることが分かっている。当初は来年の予定だったが、今年の後半には進出するとみられている。
予定を前倒しした背景には、TikTokなどのEC事業が東南アジアで大躍進を遂げていることがある。TikTokのEC機能「TikTok Shop」は昨年、東南アジアで44億ドル(約6300億円)のGMVを達成した。しかしTemuの主な競合相手であるSHEINは東南アジア事業にそれほど重きを置いていない。36Krが入手したデータによると、SHEINの2022年GMVのうち、東南アジア市場が占める割合は10%ほどで、欧州市場の35%や米国市場の30%に比べると低い水準になっている。
シェア争奪戦の裏で、Temuは巨額の赤字を抱え続けている。Temuの全体的な損失率は60%前後に達していると複数の関係者は語る。テックメディアWIREDの報道によると、Temuは米国市場へ参入するにあたり、1回の注文で平均30ドル(約4300円)の損失を出しているという。
現段階でTemuは中国から海外に向けて商品を発送している。商品は出品者から中国国内にある中継倉庫に送られ、Temuがそれを国際配送で海外に送り、現地の物流業者を介して購入者に届けられる。この過程でかかるコストを削減するため、Temuは物流面で調整を行なってきた。36Krが得た情報によると、海外倉庫の建設にも取りかかっており、米国の東部と西部に1カ所ずつ開設する計画だという。海外倉庫が稼働を始めれば、受注から配送までのプロセスが大幅に改善されるだろう。
Temuは今年の主な社内評価指標を「客単価、コンバージョン率、リテンション率」とし、今年1~3月期の客単価を昨年の30ドル(約4300円)から約35ドル(約5000円)に伸ばした。WIREDによると、長期目標は米国人に年間30回、平均注文額50ドル(約7100円)の買い物をしてもらうこと、つまりユーザー1人あたり年間平均1500ドル(約21万3200円)を消費してもらうことだという。
多くの業界関係者はこの目標に対して楽観的な見方をしているが、現時点でTemuの急成長を阻むかもしれない要素は政府の規制に関わる不確実性だとみる。
このところ、米政府は低価格競争を繰り広げるECプラットフォームへの対策を強化している。海外メディアによると、米超党派議員団が低価格輸入品の関税免除を撤廃する法案を作成中で、これが成立すれば中国からの輸入品の免税措置が直ちに取り消されることになる。米国では2016年に輸入貨物の非課税基準額が貨物1件あたり200ドル(約2万8000円)から800ドル(約11万3000円)に引き上げられた。注文1件あたり800ドルを下回る場合は関税が免除されるため、SHEINに代表される越境コマースプラットフォームはこれまでこの恩恵を受け続けてきた。
Temuはマーケティング活動も強化している。米国での広告キャンペーンに今年は14億ドル(約2000億円)、来年は43億ドル(約6100億円)を投じる計画だという。
(翻訳・畠中裕子)
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