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量産化が3Dプリンター業界の成長起爆剤といわれている。航空・宇宙や自動車以外でそれを後押しする業界は、間違いなく建設業だろう。昨年、中国建設業の生産高は23兆元(約351兆円)に達しており、3Dプリンターは1兆元級の市場に成長する可能性を秘めている。「太空灰(Taikonghui)」の共同創業者、龐立南氏が3Dプリンターのビジネスモデルや技術などについて語った。
太空灰の3Dプリント技術
太空灰の主力製品は自動化ソフトシステムとフレキソ印刷機だ。現時点では研究開発が完了し量産前の段階ではあるが、ブラジルの建設会社HUPIやマレーシアのSERBA DINAMIK GROUP、オーストラリアのSMTなどが太空灰に興味を示している。
太空灰のコアコンピタンスは以下の3点。
1)ソフトウエア:独自開発したソフトを採用し、プロジェクトに合わせたカスタマイズが可能。スライスソフト導入後1~2秒で設計図がプリントプログラムに自動変換される。現在、特許10件、著作権13件を申請中だ。
2)ハードウエア:自社開発した建設用3Dプリンターは、プロジェクトに合わせて自由に組み立てることができ、輸送や解体も簡単だ。フレキソ印刷が可能で、印刷速度は毎秒500mm。
3)プロセス:一括造形技術を採用し、建設現場での直接印刷が可能。独自開発した添加剤や支持材により、一般的なセメントを建築材料として使用できるため、コスト面や環境面で有利。
金属用3Dプリンターや樹脂を使ったスピード造形と違い、太空灰の建設用3Dプリンターでは従来型のFDM(熱溶解積層方式)を採用している。
建設用3Dプリント技術は現時点で主に3タイプに分類される。
(1)特殊な合成材料を使用。材料の硬度が比較的高いため鉄筋を使う必要がなく、壁体の直接印刷が可能。合成材料のコストがやや高いことが欠点。
(2)複数の材料を混合。コンクリートを使用する場合を除き、鉄筋や粉末状の3D接着技術などを補助的に利用する。技術的なハードルが高く、この技術を完全に掌握する企業はまだない。
(3)人と機械の協調作業。3Dプリント技術によりコンクリート壁体を印刷し、壁体間に鉄筋を加える作業は人が行う。太空灰もこの方法を採っている。
コスト比較
龐氏によると、人と機械による協調作業の場合、1平方メートル当たりの建設コストは300~600元(約4500円~約9000円)で、特殊合成材料を使用する場合の半分以下だ。作業員も2人で済むため、人件費も従来の方式を大きく下回るほか、総工数や建築材料での優位性も明らかだ。
時間的コストは、延べ床面積100平方メートルで階高3メートルの複数階建ての場合、1フロア当たり2~3日前後、天井板の打設は約3~5日(コンクリート養生期間を含む)。1カ月以上かかる従来の方法より大幅に短縮される。
つまり、太空灰の建設用3Dプリント技術では、時間的コストを約50~70%、人的コストを50~80%、材料コストを40~50%削減することができる。
業界の見通しは
3Dプリンターの市場規模は90億元(約1360億円)。うち航空・宇宙や医療などの5大分野が市場ニーズの約8割を占める。建設用3Dプリンターの市場シェアは2%程度で人気は低い。その要因の1つに法整備が追い付いていないことが挙げられる。比較的新しい技術であるため、管理に関する法令が公布されていない。建設業界は安全性に対する要求が高いため、どの業者もリスクを負いたくないという面もある。
太空灰は2014年に「建東科技(JIANDONG TECHNOLOGY)」からエンジェルラウンドで数百万元(数千万円)を調達。その後組織のスリム化を経て、創業メンバーから2000万元(約3億円)をさらに調達した。現在のメンバーは4人で、同社は近いうちに1000万元(約1億5000万円)を調達し、市場開拓などに充てる予定。
(翻訳・鈴木雪絵)
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