資生堂、中国のバーチャルヒューマン4人をアンバサダーに起用 消費のけん引役Z世代に訴求

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人工知能(AI)技術が発展し、成熟していく中で、AI技術とCG(コンピューター・グラフィックス)技術を駆使して生み出された「バーチャルヒューマン」が注目を集めている。化粧品業界でも、2020年ごろからはバーチャルヒューマンをイメージキャラクターなどに起用する企業が続々と現れ始めた。

資生堂はこのほど、中国版インスタグラムと呼ばれる「小紅書(RED)」の公式アカウントで、美肌のための栄養補助食品「紅腰子凍干粉(SHISEIDO ULTIMUNE PROBIOTIC POWDER)」のアンバサダーに4人のバーチャルヒューマンを起用したと発表し、一気に業界関係者の注目を集めた。

トレンドセッターの「AYAYI」、アイドルの「Noah」、アーティスト兼ファッションデザイナーの「MUSE」、アーティスト兼テクノロジー開発者の「ALPHA」の4人は、いずれも上海燃麦網絡科技(Ranmai Technology)に所属するバーチャルヒューマンだ。同社は、メタバースに関連するコンテンツIP(知的財産)やデジタル資産の運営・管理を手掛けており、さまざまなタイプのバーチャルヒューマンのIPを保有する。

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実は、資生堂が今回バーチャルヒューマンを起用したのは、化粧品業界初の試みというわけではなく、これまでにも20以上の化粧品ブランドがバーチャルヒューマンをプロモーションなどに活用してきた。

たとえば、P&Gのスキンケアブランド「SK-II」は2019年7月、バーチャルヒューマンの「Yumi」をブランドアンバサダーに起用している。20年には、 仏ロレアルのほか、韓国の雪花秀(ソルファス)、中国の完美日記(パーフェクトダイアリー)や自然堂(CHANDO)などが続々とバーチャルヒューマンをライブコーマースの司会に起用した。

ロレアルの中国法人は、21年にアニメ風のバーチャルヒューマンに広報や消費者とのコミュニケーションを担当させたのに続き、23年1月には同社が開催した学生向けビジネスコンテスト「BRANDSTORM 2023」の中国大会のサポーターにAYAYIを起用している。

ブランドアンバサダーからライブコマースの司会まで、バーチャルヒューマンが活躍する分野はどんどん広がっている。業界関係者によると、化粧品ブランドがバーチャルヒューマンを活用する方法は、現在のところ主に2通りに分けられるという。1つ目は、すでに知名度のあるバーチャルヒューマンとコラボレーションする形で、バーチャルヒューマンは契約期間中、ブランドのイメージキャラクターやライブコマースの司会、広告用動画の撮影、イベント出演などを行う。2つ目は、提携するバーチャルヒューマンの制作会社が、「ブランドのDNA」を組み込んだバーチャルヒューマンを作り上げ、コンテンツ開発や裏側のサービスまで担当する。この場合は通常、出来上がったバーチャルヒューマンの知的財産権はブランド側に帰属する。

調査会社・艾媒諮詢(iiMedia Research)によると、中国ではバーチャルヒューマンのファンの92.3%が19〜30歳の若者だという。化粧品ブランドにとってのバーチャルヒューマンは、ブランド若返りの象徴として、ブランドとZ世代の消費者との架け橋となる存在だ。ブランドにとってより重要なのは、リアルな有名芸能人をイメージキャラクターに起用するには巨額の費用が必要だが、バーチャルヒューマンならばコストを抑えられる上、芸能人のようにスキャンダルを起こして人気が落ちたりしないことだろう。

もちろん、バーチャルヒューマンを化粧品のアンバサダーに起用することについては一定の議論がある。化粧品は実際に肌に乗せてみないと使用感は分からないが、バーチャルヒューマンは商品を体験できない。業界関係者は、バーチャルヒューマンがライブコマースなどで販売促進をしても、消費者の信頼を得られない可能性があると指摘する。バーチャルヒューマンとリアルな人間、そしてリアルな体験との差を縮めることが、業界の今後の課題のひとつになりそうだ。

作者:「青眼(WeChat公式ID:qingyanwh)」、Cathy

(翻訳・編集:田村広子)

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