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世界で人気のプロダクトを数多く手掛けるテクノロジー大手ByteDance(バイトダンス)が、新たに立ち上げた法人向けサービス「BytePlus(バイトプラス)」の勢いが止まらない。
7月、日本への本格進出のタイミングでBytePlusグローバル責任者へ取材したばかりだが、同社では早速BytePlusのソリューションを活用できる業界の一つとしてHR・求人分野に焦点を当て、日本の人材サービスにかつてない体験をもたらそうと招待制のプライベートセミナーを開催した。
日本に人材サービスは数多くあるが、どう他社と差別化するか、日々頭を悩ませる企業は多い。世界最高峰のレコメンド技術に定評あるByteDanceは、日本の求人業界をどう見ているのか。そしてデジタル化による業界変革を図ろうとする求人企業に対して、どのような解決策を用意しているのか。プライベートセミナーの内容を特別に一部紹介する。
求人の本質は「マッチする」体験
コロナ禍以降の日本の求人業界では、オンライン面接はもちろん、動画の活用などバーチャル技術が引き続き注目を集める。採用市場だけでも1兆円と言われる日本の市場は巨大で、同業界を対象にしたDXソリューションやプロダクトは乱立している時代となった。しかし、一歩抜け出すほどのサービスはまだ出てきていないとBytePlusでセールスマネージャーを務める小島氏は話す。同氏は、求職者の真のニーズに対する理解に大きなギャップがあるのではと考えている。
求職者は多くの求人案件を求めて、たくさんの時間を費やしクリック・検索したいわけではなく、自分自身に「マッチする」体験を求めているのだ。つまり、現在の求人サイトはある意味でまだ発展途上であり、「求人を探す」ことから、高度なレコメンド技術により「求職者に適切な求人案件を提示する」ことが求人業界の未来になるだろう。
そしてBytePlusは、機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープランニング)といった技術が求人業界の未来を切り開く、と考えている。
世界のトレンドから考える人材業界のAI活用
そのような世界はいつ訪れるのか。すでに中国の人材業界は最先端を走っているようだ。
小島氏からは、中国の大手求人プラットフォーム「招聘」と「猟聘」の事例が紹介された。その2社が改善を続けているのは、応募を増やすことでもクリックを増やすことでもない。求職者の応募やクリックの先の行動を秒単位でトラッキングし、機械学習を活用したレコメンド技術でどうパーソナライズしていくか、求人企業の現実的な採用ニーズをどう満たすか、求人サービスとしての本質的な品質向上へと舵をきっているそうだ。
また、日本にはあまり見られないデータ活用の一例としてはこんなものもある。
求職者がサイトで気になる求人情報を見つけると、その横には『人事と直接話す』というボタンが付いている。クリックすると企業独自の採用アプリが立ち上がり、採用担当者のQRコードが提示される。求職者はすぐに担当者とダイレクトにチャットが開始できる。そして求職者と採用担当者のコミュニケーション履歴などは全てデータとして機械学習と深層学習で収集・活用・分析、求職者が本当に求めている体験を提供する。これは独自アプリだからこそ出来る施策である。
それだけでなく、求職者によるリクルーターの評価の仕組みを導入することでマッチング精度を高めたり、わざわざ第三者のビデオ会議ツールに移行せずプラットフォーム内で直接面接できたりと、これまで収集してこなかった新しいデータを分析することで、求人サイトが提供できる価値も多様化していくはずだ。
これらはアルバイト採用から正社員採用まで、求人に関わる全ての企業が参考にできる事例であり、今後の日本の人材サービス企業が進むべき道を示しているといえる。
『パーソナライゼーション』は将来の収益の源
小島氏によれば、パーソナライゼーションを実装する企業は、競合に比べて成長が早く、収益が40%増加すると言われているという。そして現在、優れた機械学習と深層学習によるパーソナライゼーションはBytePlusが最も得意な領域だ。他の大手テック企業ももちろんディープラーニングを活用したパーソナライゼーションを実装しているが、BytePlusが持つ高度なディープラーニングとの力の差は歴然だと自負する。
ただし、人材サービス企業が自社開発で実装する場合、実は非常に大変な作業となる。大規模データのクレンジング作業といった事前準備に加え、エンジニアの確保・育成、膨大な投資コスト、実装後のアップデートや、市場環境変化に合わせたメンテナンスなど越えなければならないハードルは高い。
BytePlusでは、それらを全て解決する体制を整える。顧客に専門知識を持ったエンジニアがいなくても、BytePlusの専門エンジニアがプロジェクトをリードし、各社に合わせた全プロセスのカスタマイズサポートを実施できる。「〇〇か月後に応募率を〇〇%上げたい」といった個別の要望に対して、これまでの経験の蓄積によりフォーマット化された提案も可能だという。
バイトル、収益性20%も向上した実績
BytePlusは本格進出前から日本企業との協働実績があり、成功事例として業界最大級のアルバイト求人サービス「バイトル」を挙げた。
今、日本は有効求人倍率が1を大きく超え、求人数が求職者数を大きく超えるという採用難の時代となっている。その中でアルバイト求人サイトは、特に類似サービスを展開する競合企業が多く、プロダクトとしての差別化が難しい。そのため、求人広告を掲載しても、応募数を創出できないことがとにかく求人サービス側の悩みだ。一方、ここで多数の応募数を創出できれば他社にない強みを生み出してリードができる。
バイトルは、サイト自体を抜本的に改善したいという強い想いを持っていた。そしてBytePlusと共同でプロダクトの改善に取り組むことで、候補者のユーザー体験を著しく向上させた。
自動的かつリアルタイムのレコメンデーション、徹底的な最適化をすることにより、結果はなんと収益性が20%、一人当たりのコンバージョンも15%アップしたという。詳しく検証すると、特に求人サイトの顔ともいえる求人一覧ページや求人詳細ページでのコンバージョン率が1.5~2倍に増加しており、改善前の従来サイトに根本的な無駄がいかに多かったかということが証明された。
当日のセミナーに参加していた求人業界の関係者にも話を聞いてみた。
大手求人サイトの開発・マーケ責任者は、 「まさに今の当社では、プロダクトを刷新することで求職者に最高の体験を届けることが経営の最重要ミッションだ。しかし精緻なレコメンデーションやスマートディストリビューションの仕組みは自社だけで開発し、解決するのは非常に困難だと痛感した。ここまでBytePlusのレコメンデーション技術が進化しているとは思いもしなかった。一方でそのBytePlusのソリューションを求人サービスに非常に上手く活用していけるというのは大変興味深く、非常にありがたいアイディアとなった」とコメントした。
大手転職支援サービスの責任者は、 「社内でもよく言われているが、求職者が真に求めていることを理解するためにデジタル技術・データ活用の推進がマストであると理解できた。
特に求人サービス業界ですでにBytePlusのような先進技術を活用して成功している企業がいるというのは驚きであり、危機感を感じた。
ChatGPTなどもそうだが、このテックトレンドの流れに遅れると、あっという間に競合サービスに取り残される危機感がある。今日は求人サービスならではのテクノロジー最前線の話が聞けて本当に有益な時間だった」とコメントした。
各社ともデジタル化・技術導入に対する経営からの期待は高いものの、求職者により良い体験を届けるにはどうしたらいいか、企画・開発段階で頭を抱える担当者は多い。特に求人サービス業界は他業界に比べてビジネスがレガシー化していることが多い。
セミナーで明かされた内容はまさに各社の社内検討中の課題にヒットする内容だったようで、終了後の交流会ではBytePlusの責任者や担当者らと深く話し込む様子があちこちで見られた。
BytePlusは今回のような様々な業界関係者との交流会を非常に重要な場と捉えており、今後もEコマースやエンターテイメントなど様々な業界に関する特別セミナーを開催予定とのこと、ぜひ注目してほしい。
(36Kr Japan:公文信厚)
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