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米商務省の中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)に対する制裁開始後、米国EMS(電子機器受託製造サービス)大手の「フレクストロニクス(Flextronics)」(以下、「Flex」)はファーウェイとの取引を中止し、一時期数億元(約数十億円)相当のファーウェイの資材を差し押さえたという。ファーウェイもサプライチェーンからFlexを外した。
ブルームバーグの統計データによると、Flexは米国でファーウェイからの収益が最も多い企業で、ファーウェイのサプライヤーのトップ10に入っている。2018年、Flexのグローバル売上高は約262億ドル(約2兆8000億円)で、そのうち、ファーウェイからの受注が25億ドル(約2600億円)で、全体の約1/10を占めている。Flexはもともと、ファーウェイの携帯電話やパソコンのEMS生産を行っていたが、取引中止後、この空白を埋めるのは誰なのか。中国系証券会社のレポートによれば、Flexとファーウェイの提携決裂後は、ファーウェイからの受注は主に台湾電子機器製造の「鴻海(ホンハイ)精密工業」と中国の電気自動車(EV)最大手「BYD(比亜迪)」が請ている。また、一部報道によると、Flexが請け負っていた取引の数が膨大であったため、前述の2社のみならず、その他EMS業者の「聞泰科技(Wingtech)」、「龍旗集団(Longcheer Group)」、「光弘科技(Guanghong)」にも一部が引き継がれているという。
Flexはファーウェイのハードウエア生産を請け負う世界第3位のEMS工場で、1位と2位はそれぞれホンハイとBYDだ。Flexのファーウェイからの売り上げは、ホンハイの1/4、BYDの1/2程度だ。ファーウェイとの取引中止後、Flexの生産分がホンハイとBYDに依頼される可能性が高い。加えて、2019年のファーウェイの携帯電話出荷台数は増え続ける可能性が高いため、この2社にとっては二重の朗報だ。
ファーウェイの創設者兼最高経営責任者(CEO)の任正非氏はこのほど、携帯電話の年間出荷台数を2億7000万台とし、2018年と比べて約30%の増加を目指すとした。最近の開発者向けイベントでは、コンシューマー事業グループCEOの余承東氏は、予想出荷台数を2億4000万台と引き下げたが、それでも2018年と比べて16%増加している。
一部の中国国内報道によると、国内顧客注文量の大幅増により、ホンハイの中国深圳市の龍華、観瀾にある工業団地の第2四半期の総生産額は前年同期比で12%増加し、6月の生産額は前年同期比で4%増加したという。また、関係者の話によると、5~6月に「Hブランド」(ファーウェイと思われる)向けの完成品及び部品の生産量は前年同期比で15%増加したという。これらの情報は、ホンハイが一部Flex分の注文を受けた証だとみられる。
BYDにも同様の動きがみられる。Flexの中国湖南省長沙市にある工場はもともとファーウェイのために建設したもので、米国の制裁開始後、稼働から1年未満で操業停止した。偶然にも、6月11日にBYDの傘下企業である「長沙比亜迪電子有限公司」が設立され、Flexの長沙現地法人「偉創力技術(長沙)有限公司」と同じ経済技術開発区に位置する。経営範囲はスマートコンシューマー設備の製造、スマート製品の生産と販売などとなっている。
なお、ファーウェイは自社工場の建設も急いでいる。
ブラジルのメディアによると、ファーウェイは今後3年以内にブラジルの最大都市であるサンパウロ市に、8億ドルを投資し携帯電話の生産工場を建てる予定があるという。米製品の輸出禁止措置による影響以外に、ブラジルの市場規模もファーウェイが注目しているポイントだ。現在、ブラジルは世界4位のスマートフォン市場になり、四半期単位の出荷台数は1千万台に上る。また、IT専門調査会社であるIDCのデータによると、2019年第1四半期の出荷台数は6%下落したが、売り上げは8%増加したという。
EMS工場の変更から、米製品の輸出禁止措置を背景に、ファーウェイはサプライチェーンを米国会社から、より友好的な地域(アジア、欧州など)に徐々にシフトし、かつ自社生産能力を強化して供給の安定性を確保しようとしているようだ。
(翻訳:小六)
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