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アリババ、テンセントなど中国を代表するインターネット大手企業が続々と2023年4~6月期の決算を発表した。
新型コロナや当局の締め付けにより低迷が続いた中国のネット業界は、この4~6月期ではV字回復している。アリババ、テンセント、バイドゥ、JDドットコムの売上高成長率はそれぞれ13.91%、11.32%、14.87%、7.6%で、純利益成長率も前年同期比を大幅に上回っている。
各社の収益率が大幅に改善された背景には、コスト削減や業務の効率化に努めてきた成果が大きく関係しているという。 以下にそれぞれの決算内容を詳しく紹介する。
アリババ:組織再編後初の決算で増収増益、EC事業が力強い回復
アリババグループが10日に発表した2024会計年度第1四半期(23年4月~6月)決算は、売上高が前年同期比14%増の2341億5600万元(1元=約20円)、純利益が63%増の330億元で、いずれも市場予想を上回った。
同社の決算発表は事業を6分割する組織再編計画「1+6+N」の始動後初めてであり、各事業の業績が前年同期比で伸びたことに最も注目が集まった。
売上高を事業別に見ると、ECサイトの「淘宝網(タオバオ)」や「天猫(Tモール)」などを運営するTaobao Tmallコマース事業は12%増の1149億5300万元。直近1年の新規出店店舗数は「淘宝網」で512万店舗を数え、そのほとんどを中小事業者が占めた「天猫」では前年同期比75%増えた。消費者と出店者のスティッキネス(粘着性)が共に高まり、EC事業の力強い回復につながった。
グローバルデジタルコマース事業は41%増の221億2300万元。中でも、海外向けECは60%増の171億3800万元、注文件数は約25%増加した。
クラウドインテリジェンス事業は4%増の251億2300万元。人工知能(AI)ブームでもたらされた計算力(コンピューティングパワー)とAIモデル関連サービスの需要により、クラウドサービス「阿里雲(アリババクラウド)」が再び成長軌道に戻った。
物流企業、菜鳥網絡を運営するツァイニャオネットワーク(菜鳥網絡)事業は、国際物流の契約履行対策と中国国内消費者の物流サービス需要の増加を受け、34%増の231億6400万元となった。
中国国内ローカルサービス事業は、ネット出前サービス「餓了麼」や地図サービス大手「高徳地図」の力強い伸びに支えられ、30%増の144億5千万元に拡大した。
デジタルメディア及びエンターテインメント事業は36%増の53億8100万元。大型スーパーチェーンの高鑫零售(サンアート・リテール)や生鮮食品スーパーの盒馬鮮生、医療関連ITサービスを手掛ける阿里健康(アリババ・ヘルス)、オンライン旅行サービスの飛猪旅行(フリギー)などその他事業の売上高は455億4100万元で1%の微増となった。
テンセント:純利益4割増、オンライン広告がけん引
テンセント(騰訊控股)は8月16日、2023年4~6月期の決算を発表した。売上高は前年同期比11%増の1492億元(約2兆9800億円)で、市場予想の1520億元(約3兆400億円)を下回った。純利益は41%増の261億7000万元(約5200億円)で、こちらも市場予想の323億元(約6400億円)を下回った。非国際会計基準(Non-IFRS)ベースの純利益は33%増の375億4800万元(約7500億円)となった。
事業別の売上高は、フィンテックおよび法人向けサービス事業が前年同期比15%増の486億元(約9700億円)だった。ゲーム事業は、国内向けは横ばいだったが、海外向けは好調で、19%増の127億元(約2500億円)となった。SNS事業は2%増の297億元(約5900億円)にとどまった。
オンライン広告事業は34%増の250億元(約5000億円)で、売上高全体の17%を占めた。広告事業の成長率は業界全体の水準を上回った。広告プラットフォームを駆動する機械学習システムの強化や、SNSアプリ「微信(WeChat)」内の動画機能「視頻号(WeChat Channel)」への広告出稿が増加したことが功を奏した。
6月30日時点で、微信(中国版)とWeChat(海外版)を合わせた月間アクティブアカウント数は前年同期比2%増の13億2700万となった。また、視頻号のユーザーの総利用時間は前年同期からほぼ倍増し、ミニプログラムの月間アクティブアカウント数は11億を突破した。
バイドゥ:純利益4割増で予想上回る 生成AI・大規模言語モデルへの投資拡大へ
検索エンジン最大手の百度(バイドゥ)が8月22日、2023年4~6月期決算を発表した。売上高は前年同期比15%増の341億元(約6800億円)。うち、中核事業のオンラインマーケティングの収入は15%増え、196億元(約3900億円)となった。
純利益は43%増の約52億1000万元(約1000億円)で、市場予想の43億元(約860億円)を上回った。非米国会計基準(Non-GAAP)ベースの純利益は44%増の約80億元(約1600億円)だった。
バイドゥは23年3月16日、独自の大規模事前学習モデル「文心大模型」をベースにした対話型AI「文心一言(ERNIE Bot)」を発表した。中国テック大手で最も早い生成AIの発表だった。李彦宏(ロビン・リー)最高経営責任者(CEO)は決算報告書で、「生成AIと大規模言語モデルは、多くの業界に巨大な変革能力を与え、大きな市場機会を提供する」とし、「私たちは今後も人工知能(AI)分野への投資を拡大し続ける」と述べた。
バイドゥは、検索事業とクラウド事業に加え、第3の成長エンジンとして自動運転事業に力を入れ、事業化のプロセスを加速させている。23年6月現在、同社が開発したオープンソースの自動運転プラットフォーム「Apollo」は、31ブランドの211車種、計900万台余りの自動車に搭載されている。
傘下の自動運転タクシー(ロボタクシー)配車プラットフォーム「蘿蔔快跑(Apollo Go)」は23年4〜6月期、前年同期比149%増となる71万4000回のサービスを提供した。8月2日には、中国自動車大手の長城汽車(Great Wall Motor)などとの提携を発表し、文心一言をスマートコックピットに活用していく方針を明らかにした。
京東集団:純利益5割増、新規出店数急増
電子商取引(EC)大手の京東集団(JDドットコム)が16日に発表した2023年4~6月期の決算は、売上高が前年同期比7.6%増の2879億元(1元=約20円)で、純利益が50%増の66億元だった。売上高の伸び率は第1四半期(1~3月)の1.4%を上回り、市場予想も上回った。
サプライチェーンの技術革新と緻密な経営が効率向上とコスト改善につながり、契約履行コスト率は前年同期の6.1%から5.8%に低下した。
売上高を物品とサービスに分けて見ると、サービス部門は30.1%増の541億元で、売上高全体に占める割合は18.8%と3.2ポイント拡大した。内訳は物流およびその他のサービスが51.5%増の316億元、プラットフォームと広告サービスが8.5%増の225億元だった。
物品部門は3.5%増の2339億元。中でも電子機器・家電が11.4%増の1521億元に上り、主要カテゴリーとしての優位性が一段と高まった。日用品は8.6%減の817億元だった。
年初に一連の店舗支援措置を導入して以来、出店数が飛躍的に伸び、4~6月の新規出店数は前年同期の5.2倍に増加した。6月末時点の稼働中店舗数は3桁以上の伸びとなり、特にスーパーマーケットやファッション、リビング用品を手がける店舗が急増し、店舗の増加によって商品供給が一段と豊富になっている。
研究開発費は1.1%増の41億元で、売上高研究開発費比率は1.4%だった。同社は17年初めから全面的なテクノロジートランスフォーメーションに乗り出し、技術関連の投資額は系列全体で1千億元を超え、自社の技術力向上を図るとともに、全産業チェーンのデジタル化も促している。
拼多多:伸び率でアリババを圧倒、株価急上昇
電子商取引(EC)大手「拼多多(Pinduoduo)」が8月29日、2023年4~6月期決算を発表した。売上高は前年同期比66%増の523億元(約1兆円)で、市場予想の437億元(約8700億円)を大幅に上回った。純利益は47%増の131億元(約2600億円)で、こちらも市場予想の85億9900万元(約1700億円)を大きく上回った。調整後の純利益は42%増の152億7000万元(約3000億円)となった。
同社は売上高が増加した理由について、23年1~6月は消費が回復基調に乗る中、6月に開催された「618セール」などの販売促進イベントが消費意欲を刺激したことが大きかったとしている。
23年4〜6月期の中国電子商取引(EC)市場は明らかな回復傾向を示し、業界大手3社の売上高はいずれも前年同期比で増加した。伸び率は、拼多多が66%と圧倒的に高く、アリババグループは14%、京東集団(JDドットコム)は7.6%だった。
決算発表後、拼多多の株価は米国市場のプレ・マーケットで14.3%上昇。取引開始後も上がり続け、最終的に15.43%上昇し、時価総額は約166億ドル(約2兆4000億円)増加した。
拼多多が打ち出す格安越境EC「Temu」にも注目しておきたい。Temuは22年9月に米国でサービスを開始し、これまでに日本を含む38の国・地域に進出している。米調査会社センサータワーによると、23年4〜6月のダウンロード数は7400万回で世界9位となり、初のトップ10入りを果たした。
美団:増収増益、アフターコロナの消費回復が追い風に
生活関連サービス大手「美団(Meituan)」が8月24日発表した2023年4~6月期決算は、売上高が前年同期比33.4%増の679億6000万元(約1兆3600億円)、営業損益は前年同期47億1000万元(約940億円)の黒字だった。前年同期は4億9000万元(約100億円)の赤字を計上していた。調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は7.5%増の76億8000万元(約1500億円)だった。新型コロナウイルス流行の収束に伴う消費回復が追い風となった。
主力の料理宅配サービスのほか、日用品宅配サービス「美団閃購(Meituan Instashopping)」や宿泊・交通チケット予約などを含む中核事業の売上高は39.2%増の512億円(約1兆円)に拡大した。
住宅地向け共同購入サービス「美団優選(Meituan Select)」や生鮮食品に特化した即時配送サービス「美団買菜(Meituan Grocery)」、飲食店向け卸売サービス「快驢」、オンライン配車予約、シェアサイクル、充電サービス、飲食店管理システムなどを含む新事業の売上高は18.4%増の167億6000万元(約3300億円)、営業損失は51億9000万元(約1000億円)と23.5%縮小した。
香港で新たに立ち上げた料理宅配プラットフォーム「KeeTa」が5月22日、正式にサービスを開始するなど、美団は中核事業の競争力を高める試みも始めている。
快手:売上高28%増 IFRSベースで初の黒字達成
ショート動画アプリ「快手(Kuaishou)」を運営する「快手科技(Kuaishou Technology)」が8月22日に発表した23年4~6月期決算は、売上高が前年同期比27.9%増の277億4000万元(約5500億円)だった。
国際会計基準(IFRS)ベースの純損益は14億8000万元(約290億円)の黒字となり、上場後初の黒字化を達成した。調整後の純損益は市場予測を上回る26億9000万元(約530億円)の黒字、前年同期は13億1000万元(約260億円)の赤字だった。
事業別の売上高は、オンラインマーケティングサービスが前年同期比30.4%増の143億5000万元(約2800億円)で売上高全体の51.7%を占めた。ライブ配信は16.4%増の100億元(約2000億円)、電子商取引(EC)を含むその他サービスは61.4%増の34億3000万元(約680億円)だった。ECの流通取引総額(GMV)は38.9%増の2655億元(約5兆3000億円)となった。
平均DAU(1日当たりのアクティブユーザー数)は前年同期比8.3%増の3億7600万人、平均MAU(1月当たりのアクティブユーザー数)は14.8%増の6億7300万人だった。
(36Kr Japan編集部)
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