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ロボットプロジェクト「智元機器人(Agibot)」で注目を集める中国のスタートアップ企業「上海智元新創技術」は、第1号製品となる人型ロボット「遠征A1(RAISE-A1)」の構想が公開された。上海智元新創技術といえば、ファーウェイ(華為技術)が採用した「天才少年」として知られる「稚暉君」こと彭志輝氏が共同創業者ということで有名だ。彭氏はファーウェイを離れて2022年2月に同社を創業し、チーフアーキテクト兼CTOを務めている。
<稚晖君についての紹介記事はこちら>
工場用として開発された遠征A1は身長175センチで体重53キロ、最大時速7キロで安定して歩くことができ、自動車のシャーシ組み立てラインでボルトを締めたり、検査器具を手に完成車の外観検査をしたりする。いずれは執事のように家事を取り仕切ることも可能だ。高齢者に薬とともにコップに水を注いで渡したり、卵を割って料理したりする。また子どもの宿題を見てやり、よくできていれば、賛辞を表すためにゆっくりと親指を立てる「サムズアップ」をしてみせたりもする。
単に人のマネをするAIではない
遠征A1のスペックは、自由度(DoF)49、全身の耐荷重は80キログラム、片腕の最大負荷は5キログラムで、演算性能は200TOPSとなっている。
ロボットの機動性はコアとなる関節によって決まる。遠征A1は準ダイレクトドライブソリューションを採用し、重さ1.6キログラム、トルクが350Nmを上回る関節モーター「PowerFlow」を独自開発した。
二足歩行ロボットにとって脚部は非常に重要だ。遠征A1の膝は人間とは異なる逆関節の設計となっているため、可動領域にゆとりがあり、人間よりも機動性に優れる。彭氏は「単に人間に似せるだけではなく、しっかり働くものにしたいと考えた」と語った。
細やかに動く手のパーツ「SkillHand」も開発した。指先に視覚と触覚のセンサーを備え、能動自由度は12、受動自由度は5で、コストを1万元(約20万円)以下に抑えた。センサーがあるため関節のコアレスモーターの精度を下げることができ、コストが抑えられた。
ロボットは、カラー画像と距離情報を取得できるRGBDカメラやLiDARを通じて外部環境を感知する。上半身と下半身が別々に設計されており、利用シーンに応じて最適な手と脚のパーツを選ぶことができる。手はドライバーやドリルのような道具に変えることができ、下肢は二脚やホイールタイプなどの選択肢がある。
また上海智元新創技術はロボットが言葉や物事を理解できるようにするAIモデル「WorkGPT」も開発しており、遠征A1が自然言語を使ってタスクを自動プログラムすることも可能になるほか、人間の会話を理解し、周囲の状況を確認することもできる。
コストは400万円以下に
遠征A1の利用シーンとして、まず製造現場を想定している。例えば、自動車組み立てラインやその他各種ラインではボルト締め、接着剤塗布、外観検査などを担当し、研究室では材料の配合や生物実験をすることができる。現在すでに複数の製造業分野の有力企業と接触しており、来年にも商用化段階に入るとみられている。
その後は一般消費者向けに家庭での利用を想定し、料理をしたり、家政婦や介護士としての利用を期待している。例えば料理なら、中国料理の炒める・焼く、西洋料理の蒸す・煮るなど各工程の作業ができる。
料理のほかに洗濯などの家事もこなせるようにしたいと考えている。洗濯機と組み合わせ、洗濯して衣類を干す、手入れや片付けといった一連の作業も行えるようにするという。また既存の介護用スマート機器と連携して、介護が必要な高齢者のケアをすることができるようにする。例えば、高齢者の指や腕の機能回復訓練のサポートや、栄養バランスのよい食事の提供などだ。
しかし人型ロボットが一般家庭で活用されるようになるにはまだかなり時間がかかり、5年から8年が必要だという。
遠征A1の国産化率は80~90%、価格について彭氏はまだ明らかにしていないが、コストを20万元(約400万円)以下に収めたいと考えていることを明らかにした。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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