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9月3日、高級品を専門的に扱うECプラットフォーム「寺庫(SECOO)」が、TikTokを展開するバイトダンス(字節跳動)との業務提携を発表した。2社は今後マーケティング、技術、広告、ハイエンド消費者インサイトリサーチ等の分野で協力していく予定。
具体的には、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)やDPA(ダイナミックプロダクト広告)等の統合によって、バイトダンスが運営するニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」やショートムービーアプリ「TikTok」から、SECOOの商品がワンクリックで購入できるようになる。
圧倒的なユーザー数を抱えるバイトダンスは、SECOOだけでなく、中国の全ECプラットフォームにとって無視できない存在だ。2019年7月現在、バイトダンス傘下のアプリは、全世界で7億人超のデイリーアクティブユーザー数(DAU)、15億人超の月間アクティブユーザー数(MAU)を誇り、TikTokだけでもDAUは3億2000万人を超える。
バイトダンスがECプラットフォームと業務提携を行うのは、これが初めてではない。2014年には、すでにタオバオ(淘宝)、天猫(Tmall)、京東(JD.com)といった大手ECプラットフォームと提携し、今日頭条の中に「今日特売」という各ECサイトのキャンペーンニュースカテゴリを設けている。また、2019年6月にTikTokとタオバオが年間70億元(約1050億円)規模の業務連携に合意したと報じられた。タオバオ側がTikTok側に広告費60億元(約900億円)、ECコミッション10億元(約150億円)を支払うという。
今回、SECOOとの業務提携により、TikTokで活躍するインフルエンサーは利益を上げやすくなると期待されている。中国の高級品EC市場でシェア25.3%を占めているSECOOは、プラダ、ヴェルサーチ、アルマーニ、フェラガモ等、3800のブランドと直接パートナーシップを結んでおり、取扱商品数は40万点にのぼる。こうしたハイエンド商品を多数扱っているTikTokのインフルエンサーとは相性がいい。
ただし、中国の高級品EC市場を取り巻く環境は厳しい。今年8月に「尚品網(SHANGPIN)」が倒産したほか、「網易尚品」や「品聚網」といったECプラットフォームもここ数年で次々とサービス停止に追い込まれている。SECOOも2017年9月に米ナスダックに上場したが、株価は上場当日に23.08%下落し、現在は前年同期の約半分となる7.4ドル(約790円)まで落ち込んでいる。
中国の高級品EC市場には、当初から偽ブランド品が多く出回っているイメージがある。かつて尚品網のような大手ECプラットフォームでさえバーバリーのコピー品を販売してしまい、消費者の信頼を大きく損なったことがある。そのため、中国の消費者の間では、「高級ブランド品は実店舗で買いたい」という心理が根強い。
米投資会社ベインキャピタルのレポートを見ると、2018年の中国高級ブランド市場は、2年連続で20%という高い成長率を維持しており、その消費額はすでに全世界の32%に達している。しかし中国の消費者の42%は、ECサイトからの高級品購入に対して満足していないという。
SECOOとバイトダンスの提携は、中国の高級品EC市場に変革をもたらすかもしれない。しかし、今年5月に中国ではTikTok上の広告に不当表示が発覚しており、消費者の信頼確保への道のりは遠く険しい。
(翻訳・桃紅柳緑)
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