アリババ、収益化に向け焦る「網易雲音楽」に7億ドルを出資

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「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」が「虾米音楽(xiami music)」を買収するのか、それともアリババが網易雲音楽に投資するのか、その答えが明らかになった。

9月6日、「網易(NetEase)」は、網易雲音楽がシリーズB2で、アリババと「雲鋒基金(YF Capital)」から計7億ドル(約760億円)の資金を調達したと発表した。調達後も網易雲音楽の支配権は網易が持つ。

アリババは、文化・エンタメ分野での相乗効果に期待すると表明した。

音楽部門の成長を夢見るアリババ

アリババ自体の音楽事業は低調だ。それでも音楽がもたらすトラフィックは魅力的なため、網易雲音楽に目をつけたのは自然な流れだ。

自分でできないのなら、投資すればいい。しかし、テンセント(騰訊)と各分野で熾烈な争いを繰り広げるアリババが、テンセント系列のサービスに投資することは不可能だ。そこで、網易雲音楽が最適な投資先として浮上してきた。

中国国内の音楽配信市場において、「テンセントミュージック(TME)」と対抗できるのは、網易雲音楽しかない。IT業界のデータ統計を専門とするQM社のデータによれば、網易雲音楽のMAU(月間アクティブユーザー)はモバイル音楽市場で第5位で、テンセントミュージックとの差を急速に縮めている。網易の第2四半期の財務データによると、網易雲音楽のユーザーは8億に上り、対前年同期比で50%増えたという。

アリババは音楽に、エンタメ業務全体を牽引し、同社の各種サービスを包括する「アリババ経済圏」のなかでさらなる役割を担うことを期待する。音楽は生活シーンともっとも密接な関係を持つコンテンツで、オフィス、旅行、自宅、通勤など、ほぼすべての生活シーンにマッチする。アリババが虾米音楽を「イノベーティブ業務」と位置づけたのも、文学作品サイトやスマートスピーカーとの相乗効果を期待したがゆえの判断だ。

しかし、現時点での虾米音楽は、動画サイトの「優酷(youku)」と同様、まだアリババのほかのサービスからトラフィックを誘導してもらっている状態で、突出した地位を築いているわけではない。それに対し、網易雲音楽はオリジナル作品や、コミュニティとしての雰囲気作りを通して、膨大なユーザーを獲得している。今後は、網易雲音楽からアリババ経済圏へのトラフィック誘導も期待できるだろう。

網易雲音楽の焦燥感

今回の7億ドル(約760億円)の資金調達は、網易雲音楽設立以来最大となる。網易雲音楽のシリーズAでの資金調達額は7.5億元(約110億円)、シリーズBでは6億ドル(約650億円)超えだった。

網易雲音楽は資金面のゆとりができただけでなく、アリババ経済圏との連携を一層進めることになるだろう。

網易雲音楽の本質を見る限り、まだ音楽コンテンツのプラットフォームでしかない。「愛奇芸(iQIYI)」などの動画サイトと同様、大量の資金を注ぎ込まなければならないビジネスモデルだ。音楽作品のライセンスを取得するため、配信プラットフォームは音楽会社に高額な著作権使用料を払わなければならず、しかもライセンスは通常3~5年の期限付きで、満期が来れば更新しなければならない。それに加え、プラットフォーム同士の競争の激化により、著作権使用料も高騰している。

著作権使用料の高騰に対応しようと、網易雲音楽はオリジナル作品の支援に力を入れている。著作権を自社で所有することができれば、経営上の圧力が減るからだ。資金面で余裕ができた現在、オリジナル作品により注力することができるようになるだろう。

とはいえ、ジェイ・チョウ(周傑倫)のような人気歌手のライセンスを持っていないため、網易雲音楽のリテンション率はそれほどよくない。業界関係者によれば、「ジェイ・チョウ」の名前があるだけで、DAU(一日当たりの利用者数)が15%以上伸びるという。網易雲音楽には、こうしたコアとなるようなコンテンツのライセンスが少ない。

そのため、今年の網易雲音楽の動きは、焦燥感がにじみ出ているように思われる。ユーザーのリテンション率の向上と、収益化の方法に頭を悩ませている。中国国内の音楽配信プラットフォームは、動画サイトと同様、ユーザー数は多いものの、収益化がまだ難しい状態にある。

アリババと連携することで、網易雲音楽はアリババのエンタメ・ECのリソースを使えるようになる。

この連携により、網易雲音楽はすでに「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセントの三社)」のうち、アリババとバイドゥを味方につけたことになる。たとえそれらのトラフィックの一部しか流入してこないとしても、網易雲音楽の競争力が高まるのは間違いない。

時代は変わり、永遠に続くルールはない。網易雲音楽と騰訊音楽の争いは、まだ終息しそうにない。
(翻訳:小六)

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