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中東最大のIT見本市「GITEX GLOBAL 2023」が10月16日から5日間にわたり、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ世界貿易センターで開かれた。180カ国から6000社余りが出展し、約18万人が来場した。スタートアップに特化したイベント「GITEX Expand North Star」には、総額1兆ドル(約150兆円)の資金を運用する1000人以上の投資家が世界中から集まった。
今回のGITEX GLOBALでは、新興国の代表者による非政治的プラットフォーム「SuperBridge」による第1回「SuperBridge Summit」も同時開催され、次世代の繁栄のための持続可能な取り組みについて話し合われた。
GITEX GLOBALは、UAEの副大統領兼首相を務めるドバイのムハンマド首長による除幕式でスタートした。ムハンマド氏は、同展示会が世界最大級のテクノロジー業界のイベントだと強調し、UAEは世界の技術革新を後押ししていくと表明した。
UAEが中東のシリコンバレーになる可能性
世界的に注目が集まる人工知能(AI)については、「AI Everything」というテーマが設けられ、世界のAI企業1000社がAI技術の新たな応用を披露した。また、AI時代のテクノロジーの境界線やモラルについても議論された。
UAEのオマル・オラマAI担当大臣は「AIの無限のチャンスを探る」と題した対談で、汎用人工知能(AGI)の発展が人類の脅威となって人間を傷つける可能性に触れ、「AGIの発展には長い時間をかけ、AGIを利用することで発生する問題を解消する必要がある。私たちはルール策定に向け、共に努力しなければならない」と指摘した。
また、中国と米国の競争が激化しても「UAEは国籍で技術を選ばず、どちらか一方の側に立つこともない」と強調した。
さらに、UAEは最初から世界を向いたビジネスを実践しているとし、「私たちには最高のインフラと合理的な管理政策がある。官僚主義はUAEでは通用しない。最新の技術について次々と繰り出される質問に答えられなければ、私も仕事を失うだろう。だから私は日々進歩する最先端技術を学んでいる」と述べた。
UAEが中東のシリコンバレーになる可能性があるかとの質問に対しては、「UAEの面積はシリコンバレーの5倍ある。私たちはより多くのことができる」と回答し、自信を示した。
世界最大級のスーパーコンピューター「Condor Galaxy」を発表したことで知られるUAEの企業「G42」の肖鵬・最高経営責任者(CEO)は、パーソナライズドAIの出現は大きな技術的進歩を象徴しており、AGIの普及が次の重要なターニングポイントになると指摘した。
トヨタ自動車も出資する自動運転ユニコーン「小馬智行(Pony.ai)」は、米国のシリコンバレーと中国の北京および広州に拠点を構え、積極的に事業を展開している。同社の王皓俊・最高財務責任者(CFO)はGITEX GLOBALに参加したことで、中東諸国がこれまで通りフレンドリーなビジネス環境を提供すると同時に、先進的なAI技術を採用したいという強い思いでスタートアップ企業を支援する方針だと確信したという。王氏は「GITEX GLOBALには、世界中からテクノロジー分野のリーダーが集まり、スマートカーを手がける企業が利用できる革新的技術の数々を紹介してくれた。これらの技術は、広い意味での工業エコシステムを構築するのにも役立つだろう」と述べた。
中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は今回、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する組織に向けて、先進的なインターネットセキュリティ・ソリューションを紹介した。同社の中東・中央アジア担当セキュリティー最高責任者(CSO)を務める Aloysius Cheang氏は「生成AIはインターネットセキュリティの強化に役立つが、生成AI自体にもセキュリティホールやリスクが潜んでいる可能性がある。企業や政府、そして社会全体は、モラルをもって生成AIを利用するためのルールづくりに取り組む必要がある」との考えを示した。
Aloysius氏はまた、インターネット上の脅威に効果的に立ち向かうためには、組織間の協力強化と情報共有が必要になるとした上で、「データセキュリティやデータガバナンスの構築に重点を置き、新たな技術に対応しなければならない」と強調した。
国際協力と官民協働が新興国発展のポイントに
世界経済は現在、大きな転換点に差し掛かっている。2050年には、世界の経済大国10カ国のうち6カ国をG7以外の国が占める見通しだ。
SuperBridge Summitでは、急速に経済成長する新興国の代表者が一堂に会し、新たな市場の開拓やパートナーシップの確立、中東における変革のチャンスについて話し合った。とくに、官民協働や持続可能な開発、そしてAIに関するモラルが重要な議題となった。
北京智源人工智能研究院(BAAI)の張宏江理事長は、AIの管理については世界中が懸念しているが、現在のところコントロールが行き届くには程遠い状況だと指摘。各国がそれぞれ規制を設けていることもAIの管理を困難にしているとし、AIを効果的に管理するには段階的なプロセスと国を超えた協力が必要になるとの考えを示した。
SuperBridge Summitでは、新興国が経済的に大きく発展する上で中国が果たす役割についても言及された。中国は過去30年にわたって教育・医療・インフラの構築を進め、多くの新興国の参考となってきた。しかし一部の参加者からは、1人あたりGDPが著しく低い国では、普及も活用も不可能な技術が多いとの声が上がった。この点に関しても、中国のかつてのアプローチを参考にしつつ、さらにそれを超えて官民協働の道を探ることが重要になるだろう。
(翻訳・田村広子)
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