WeChatに敗れたYY、チャットアプリ「imo」で海外に活路求める

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WeChatに敗れたYY、チャットアプリ「imo」で海外に活路求める

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ソーシャルメディアを手がける中国企業「YY(歓聚時代)」が、インスタントメッセンジャー(IM)市場で改めて勝負をかける。同社董事長兼CEOの李学凌氏がSNSを通じて発表した。

李学凌氏の投稿(キャプチャー画面)

WeChat攻勢を逃れ、ライブ配信事業へ転向

YYは無料ビデオ通話・チャットアプリ「imo」を通じ、改めてIM市場に参入した。imoは今年第2四半期時点で2億1190万人の月間アクティブユーザー(MAU)を有する。YYは2012年、音声通話サービス「YY語音」をリリースし、4億人のユーザーを抱えるまでに成長したが、後に「WeChat(微信)」に潰される形で市場から消えていった経緯がある。

YYがソーシャルメディア系のプロダクトにこだわる理由は、ユーザーの定着率が高く、長期的に展開できるからだ。imoは果たしてWeChatのように息の長い製品となるだろうか?

YYはWeChatとの衝突を避けるかのように、2014年にシンガポールで設立された「BIGO(BIGO Technology)」に出資し、海外事業の展開をはじめた。結果的にはWeChatの攻勢を逃れられず、ライブ配信事業で再起を図ることとなっている。2016年3月にリリースされた「BIGO LIVE」は、エンターテイメント系、ゲーム実況系、ソーシャル系の3ジャンルを兼ね備えたライブ配信アプリで、およそ2年でユーザーは2億人以上に達した。

BIGOはライブ配信事業が軌道に乗ることで、グローバルユーザー数で一定の規模を築き、運営組織を安定させ、コンテンツを多様化し、マーケティング力を培った。2017年にはimoの買収に動く。同年8月には短編動画アプリ「Likee」もローンチしている。こうしてソーシャルメディア事業の強化に向けての布陣が整った。

YYは今年3月、imoを抱えるBIGOの全株式を取得した。

SNS系プロダクトにこだわる理由

BIGO LIVEが海外で突出した成績を残したとはいえ、YYの国内事業はユーザーの増加ペースが頭打ちを迎えた。YY語音の運営も下降線をたどっている。

総合的に見て、YYやBIGOがSNS系サービスにこだわるのは、彼らの置かれた境遇と関連性がある。

imo利用画面

コンテンツ系のプロダクトは、ユーザー数が膨らみすぎると運営元にとってはかえって不安要素になる。その点、製品ライフサイクルに縛られない唯一のプロダクトがSNS系だ。テンセントがQQからWeChatに至るまで日々成長を続けてきたのも、最も手堅い基盤のもとに最もアクティブなユーザーを集め、最も定着率の高いプロダクトを選択し、インターネット世界の最高地点に立てたからだ。定着率が上がるほどユーザーの質も高まり、その逆ならユーザーの質が落ちる。インターネット世界の永遠の鉄則だ。

ショート動画やライブ配信のアプリを通じてSNSに参入するより、SNSアプリにショート動画やライブ配信の機能を追加する方がユーザーを惹きつける効果は高い。WeChatに倣う形で、imoも同様の路線を選んだ。

海外で独自路線を歩むBIGO LIVE

競争の激しい国内市場に見切りをつけたYYは海外市場を主戦場とし、imoによって次なる成長を目指している。しかし、imoの買収によってテンセントが築いたようなSNS帝国を作り上げるには不確定要素が多い。

たとえ部分的にしろ、QQやWeChatに追随するようなかたちではイノベーションは起こせない。現在、imoはショート動画機能以外にタイムライン、コミュニティ、ミニゲーム、ライブ配信などの機能を導入しようとしている。構成上は完全にWeChatのコピーだ。実際、東南アジア市場にはWeChatをそのままコピーしたに等しいSNSアプリ「MeChat」が存在し、デイリーアクティブユーザー(DAU)が1000万人に達している。MeChatのこうした成功例もBIGOを後押ししているのだろう。しかも、MeChatの運営組織は決して力のあるチームではない。それに比べ、BIGOは世界に4カ所の本部を構え、海外スタッフは800人を超える。

imoは複数の国や地域にまたがってサービスを展開している。国、言語、データ、ユーザー、コンテンツなどで多様化が求められ、これが運営を複雑にしている。また、中国のインターネット企業が海外で勝負する場合、アップル、グーグル、フェイスブックから成る三大強豪と必ず対峙することになる。

BIGOでバイスプレジデントを務めるJames Wang氏は「我々がフェイスブックのようになれる機会など到底ない。現実的に考えるなら、まずは強豪3社の下位で生き延び、地域レベルでトップになることが第一段階だ」と述べる。

一方の中国国内市場では、コンテンツ・ユーザー・アクセス量で互いに争ってきたIT各社が次第に二大陣営を形成するに至っている。テンセント陣営にはショート動画「快手(Kwai)」、EC国内2位「京東集団(JD.com)」、ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」、生活関連O2Oサービス「美団点評(Meituan Dianping)」がおり、バイドゥ(百度)もここに加わる可能性がある。対してアリババ陣営には、TikTokの運営企業バイトダンス(字節跳動)が加入する可能性が濃厚だ。

二大陣営の争いを尻目に、BIGOは着々と海外で勢力を拡大する機会を得た。最大の強敵ともいえるWeChatの海外進出が難航する中、BIGOを子会社とするYYがその間隙を狙っている。
(翻訳・愛玉)

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