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2023年に36Kr Japanで多くの方に読まれた記事を紹介する。中国のテック・トレンド・消費・投資に関心を持つ人が注目する記事ランキングともいえる。
1位になったのは記事「中国観光業界が日本人ツアー客を受け入れられない理由」だ。ゼロコロナ体制が終わるも、日本人も外国人も中国に旅行しておらず、中国の観光地で外国人観光客を見ることが本当に少なくなった。その背景として記事では、中国へ入国するビザが必要になっただけでなく、コロナ禍で外国語ガイドと外国人向けに部屋を確保していたホテルがほぼ絶滅し、さらにシステムは中国人向けに最適化を行い外国人ツアー客を無視したものとなったためにツアー旅行の復活が難しくなったと紹介している。
個人旅行客にしても、キャッシュレスとスマホアプリによる消費習慣がさらに普及したことで旅の難易度があがった。何かをやろうとするためにアプリを利用しようにも、中国の電話番号ほか身分証明書番号や銀行口座を入れないとアプリが利用できずに不便を強いられるということがコロナ前以上に多くなったのだ。海外の観光客を受け入れるにはビザ緩和の他にも、そこに暮らす中国人が普段使うアプリを外国人も使えるようにする仕組みが必要だろう。
2位は「早くも中国でAIが生成した美人ブロガーが多数登場。その前例に学ぶことは」。中国版インスタと呼ばれる小紅書(RED)にAIで描いた美人ブロガーが続々と現れている。どんなことができてどんなことができないか、稼げるのか稼げないのかを紹介した記事だ。
2023年はChatGPTが中国でも大きな話題になり、Stable DiffusionやMidjourneyほか、それを追随する中国の生成AIがいくつも登場。実在のモデルやインフルエンサーのような人物と見紛う画像を生成できるようになり、これが早速ビジネスに適用され、AIで描かれた女性がSNS「小紅書(RED)」やECの「淘宝」や「天猫」などで見るようになった。中国で早速活用しようとするファーストユーザーは少なくなく、エンジニアやデザイナーが早速試行錯誤を行ったほか、タオバオなどのECサイトにAI生成美女を売り出す動きも。小紅書では生成したAI画像を自撮り画像であるかのように投稿して数万のフォロワーを抱えるアカウントが続々と登場した。
ただデジタルのモデルに気軽に様々な服を試着させるのは技術的に難しい。ただ技術の向上が解決するといい、服の試着は2024年には実装されるという話も。アパレル業界でデジタルモデルのニーズがあがり、時間を割いて呼んで時間拘束するリアルなモデルの需要は大幅に減ることになる。
たくさん読まれた記事の中で多くランクインしたのがEVやバッテリーの話題で、長く読まれ続けているのが、2022年10月に掲載された記事「1台あたり200万円の赤字 それでも中国新興EVが資金に困らないわけ」だ。
蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng Motors)、理想汽車(Li Auto)の新興EV企業3社の決算報告を見ると、研究開発と原材料コストとマーケティング費用に大きく注力していることがわかる。その一方で有力EVメーカー各社は比亜迪(BYD)が226億元(約4500億円)を筆頭に数千億円規模の資金調達をこれまで受けている。EV企業がずっと赤字にも関わらず、こんなにも多くの資金が流入するのは、政府が脱炭素戦略「ダブルカーボン」を掲げていること、中国市場が非常に大きいこと、テスラのように時価総額が大きく増えることが期待されているのがその理由だ。
そして日本の自動車産業を見てもそうであるように、自動車企業だけが成長するのではなく、自動車部品メーカーをともなって産業全体が成長する。自動運転、バッテリーなど技術の進歩にともない、新エネ車はガソリン車時代のエンジンやシャーシ、トランスミッション(変速機)などを必要としなくなり、全く新しいサプライチェーンシステムが形成された。産業全体の川上、川下企業に数多くのチャンスが生まれている。
記事「世界自動車部品トップ100に変動。デンソーは変わらず2位、中国CATLが初のランクインで5位に」のように、「寧徳時代(CATL)」は上場以降株価が上昇を続け、21年には時価総額が1兆元(約20兆円)に達した。同社の曾毓群董事長も長者番付で何度も1位となり、投資家もまた大きな利益を上げた。EVの車両全体のコストのうち40%をバッテリーが占めることから、CATLの動向でEVの価格が変わるといってもよく、同社の移行が注目されている。「中国のリチウム価格暴落、CATLの車載バッテリー「値下げ計画」立ち消えか」という記事も読まれ、また今年8月にEUで発効したバッテリーの生産からリサイクルまで新たに規則を定めた記事「EU、新電池規則が発効 躍進の中国EV電池メーカーに影落とす」も注目を集めた。
デジタル製品を出す中国企業の海外進出が目立った。海外進出で先を行くシャオミが直面したのがインドでのトラブルで、「中国スマホ制覇の時代終焉か。インド当局、シャオミの凍結資産約940億円を没収に」はよく読まれた。反中感情が高まるインドで、そのターゲットはシャオミだけにとどまらず、OPPO、vivoなど中国のスマホメーカーに対応を求める動きも。中国企業への厳しい対応はスマホメーカーにとどまらない。インドは20年以降、中国製アプリを次々と使用禁止リストに追加しており、その数は現在220以上に達している。
中国企業であることを大きく出さず、海外展開を行っているケースも多くみられた。今後もしばらくは中国の消費者のデジタル製品買い控えの風潮が続く中で、中国企業は海外展開に活路を見出し、それについての様々なニュースが出るはずだ。36Kr Japanでも引き続き海外進出の動向を注視し、紹介していきたい。
(作者:山谷剛史)
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