中国EV市場の2023年を振り返る キーワードは価格競争、破産、海外進出

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電気自動車(EV)を中心とする中国の新エネルギー自動車業界は2023年に急成長を遂げてきたが、政策や製品のグレードアップ、厳しい競争などさまざまな変化と課題にも直面した。

新エネルギー車は全体として非常に力強く成長した。23年1月から9月の世界の新エネルギー車販売台数は974万6000台、そのうち中国の販売台数は627万8000台で、新車販売台数の29.8%を占めた。世界全体で9月末までの累計販売台数は約3770万台となり、そのうち中国が約6割だった。

こうしたなか脱落するメーカーも出始めたほか、激しい価格競争が次々に繰り広げられた。過度な競争が続くなか多くのメーカーが海外進出を目指すが、新エネルギー車が歩む道はいまだ混沌としている。

価格競争

2023年は新エネルギー車の値下げが続いた。

23年に入って13年間続いた新エネルギー車の購入補助金政策が終了し、一部のメーカーは値上げを発表したが、販売台数と引き換えに値下げを選ぶメーカーもあった。価格競争に加わっていたメーカーの代表格、米EV大手のテスラもそのひとつだ。

年明け早々、テスラが中国で生産する「モデル3」の最低価格が3万6000元(約72万円)値下げされ22万9900元(約460万円)に、「モデルY」は2万9000元(約58万円)値下げされ25万9900元(約520万円)となり、最安値を更新した。こうしてひっそりと価格競争第1ラウンドの幕が上がった。

23年半ばからの価格競争第2ラウンドはさらに激しいものとなった。NIO(蔚来汽車)が全車種を3万元(約60万円)値下げすると発表し、さらに購入済みのユーザーに対して100億元(約2000億円)を投じたさまざまな補填キャンペーンを実施した。続いて、小鵬汽車(Xpeng Motors)や比亜迪(BYD)、広州汽車集団傘下の広汽埃安(AION)、浙江吉利控股集団傘下の極氪(ZEEKR)なども一部車種を値下げを断行。テスラも再びモデルYの価格を1万4000元(約28万円)引き下げた。中古車市場では販売価格が新車価格を上回る逆転現象が起き、所有者が権益保護を求める騒ぎがたびたび発生した。

12月になると、年内の販売台数を増やすラストスパートとして第3ラウンドの価格競争が始まり、状況はさらに厳しさを増した。新興勢力だけでなく大手メーカーも続き、BMWの電気自動車「BMW iX3」で最高17万500元(約340万円)、メルセデス・ベンツ「EQE」の一部車種で最高16万元(約320万円)、フォルクスワーゲンの「ID.6 CROZZ」で最高7万元(約140万円)をそれぞれ値下げした。

価格競争は好ましい成長モデルとは言えないが、今の中国には必要なプロセスだろう。値下げと引き換えに販売台数が増えれば、サプライチェーンや完成車のコスト引き下げにつながり、さらに大幅な値下げが可能になる。もし十分な資金力と生産能力がなければ、市場からはじき出されることになりかねない。

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入れ替わる人気ブランド

5年前には、NIO、小鵬汽車、威馬汽車(WM Motor)、拝騰(BYTON)が新興勢力トップ4と称され、消費者はもとよりマーケットもこの4社に注目していた。しかし2023年にメンバーが入れ替わる。BYTONは破産し、威馬汽車も長期間にわたる債務超過による操業停止、給与未払いなどの問題を解決できずに破産の危機に瀕している。

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しかし威馬汽車は諦めてはいない。まだ破産申し立てはしておらず、事業再編に向けた申請は経営危機の初期に行う自力再建の措置だと繰り返し強調した。同社の買収に名乗りを挙げた開心汽車(Kaixin Auto)の林明軍CEOは、買収案が順調に進めば、威馬汽車はこのチャンスを生かしてもう一度巻き返せるかもしれないと語っている。

画像:威馬公式Weiboより

このほか、不動産大手恒大集団傘下の恒大汽車(Evergrande Auto)や伊藤忠が出資した奇点汽車(Singulato)、天際汽車(ENOVATE)、愛馳汽車(Aiways)なども、志半ばにして終わろうとしている。その他の新エネルギー車メーカーも海外進出に力を入れ、次なる成長曲線を模索しているが、まだ成功に至っていない。

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海外進出

中国の2023年新エネルギー車販売台数は940万台になると予測されている。中国汽車工業協会(CAAM)バイスエンジニアの許海東氏は「中国の自動車産業は消費者からの極端なニーズにも素早く応える能力を手に入れた。こうしたニーズは海外にもある。中国の自動車はどんどん進化している」と語る。

23年1月から11月の新エネルギー車の生産台数は前年同期比34.5%増の842万6000台で、販売台数は同36.7%増の830万4000台、市場シェアは30.8%に達した。中国汽車工業協会は、24年の自動車販売台数は約3100万台で、新エネルギー車の割合は43%になると予測している。

新エネルギー車向けのインフラが強化されるのに伴い、メーカーも続々と海外進出の波に乗ろうとしている。

中でも注目すべきは中東市場だ。中国の金融情報分析プロバイダーWindによると、6月末時点でA株上場企業数十社の流通株式株主リストのトップ10に、UAEの政府系ファンド・アブダビ投資庁とクウェートの政府系ファンド・クウェート投資庁が含まれている。新エネルギー車を含む中国市場に中東マネーが大量に流入しており、中国から中東へ進出するのも自然な流れになっていることが分かる。

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中国の自動車産業は完成車や技術、ブランド、車載電池、充電設備など産業チェーンの各分野がすでに海外に進出している。車載電池メーカーの寧徳時代(CATL)、中創新航科技(CALB)、国軒高科(Gotion High-Tech)、億緯鋰能(EVE Energy)、蜂巣能源科技(SVOLT)、欣旺達電子(Sunwoda)などが続々と海外戦略を公表しているほか、EV向け充電サービスの能鏈智電(NaaS)、電気システムの香山股份、太陽電池製造の科士達科技(Kstar)、充電設備製造の特鋭徳(TGOOD)など、数多くの新エネルギー車産業チェーンに関わる企業も海外市場の開拓を進めている。

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新エネルギー車メーカーはこれまで完成車を輸出していたが、現在は現地に工場を建設して部品やサービスを地元に合わせて提供するという形で、産業チェーンを丸ごと輸出するようになった。世界の自動車業界は大きな転換期を迎えており、中国の自動車ブランドにとっては伝統を持つ巨大メーカーと実力で渡り合うチャンスといえる。

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作者:鋅刻度(WeChat公式ID:znkedu)

*2023年12月26日のレート(1元=約20円)で計算しています

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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