まだ課題だらけ?世界や中国のドローン物流の現在地

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ドローンを使って商品を配送するサービスは、近年もはやニュースにもならなくなった。特にコロナ禍では効率的な非接触の配達方法となり、多くの消費者が過去3年の間にドローンによる薬や出前の配達を受け入れるようになった。

ドローンは操作が簡単で、アクセスしづらい場所にも容易に行けるため、へき地への配送に適している。交通量が多く道路の状況が複雑な地上交通に比べ、渋滞も信号もない空から届けるドローン配送は非常に効率的だ。配達員が不足する中、物流会社がドローンを使って配達する場面も増えている。

これまでにEC大手や小売業者、物流企業がそれぞれドローン分野に参入し、競争が激化している。例えばイスラエルのドローン配送スタートアップ「Flytrex」は2021年末にウォルマート、米レストランチェーン「Chili’s」、ノースカロライナ州の企業と提携し、郊外の消費者向けにドローン配送サービスの試験運用を実施すると発表した。オンラインレストラン予約の「DoorDash」とGoogle傘下のドローン企業「Wing」は2022年11月、オーストラリアのクイーンズランド州南東部でドローン配送の試験事業をすると発表した。

ウォルマートは4社のドローン配送企業(DroneUp、Zipline、Wing、Flytrex)と提携し、米国の7つの州でドローン配送センターを担う36店舗を立ち上げた。Amazonもドローン配送サービス「Prime Air」を発表し、カリフォルニア州とテキサス州の試行エリアでドローン配送を行う。

中国企業も負けていない。中国EC大手「京東集団(JDドットコム)」は2015年にドローン配送技術を模索し始め、後に幹線、支線、末端の3つの段階から成るドローン配送と航行輸送のシステムを構築した。最終的に「空と陸を一体化」させたスマート物流ネットワークを作り上げ、物流網が整っていない農村地域にもEC事業を広げる計画だ。

無人配送が新たな武器に 京東・アリババ・美団が必死の開発競争

生活関連サービス大手「美団(Meituan)」は2017年にドローンプロジェクトをスタートさせて以来、すでに深圳市や上海市などの7つの商業エリアで17航路を展開しており、14のコミュニティやオフィスビル、4つの有名観光地にドローン配送サービスを提供している。これまでに累計18万4000件以上を配達した。

物流も空の時代!中国、ドローン配送を開始 その実態は?

宅配大手「順豊控股(SFホールディング)」はドローンを使った市内速達便事業を立ち上げたほか、支線配送分野にもチャンスを見いだした。傘下のドローン企業「豊鳥科技(Fonair UAS)」は積載重量が150キロ~3トンの中型や大型のドローンをそろえ、「幹線用大型有人輸送機+支線用大型ドローン+端末物流用小型ドローン」の3段方式の航空輸送網を構築した。

目標は大規模な商用化

テック企業は盛り上がっているが、周りで実際にドローン配送を利用した人はほとんどいない。これは錯覚ではなく、米国でも中国でもドローン配送が厳選された「試行エリア」だけで実施されているからだ。ドローン配送には技術やコスト、政策などさまざまな制約があり、大規模な運用にはまだほど遠い。

ドローン技術はめざましく進歩したものの、航続距離、安定性、積載能力などに限界があり、そのために輸送範囲が限られている。通常ドローン配送企業が公表している最大積載重量は5~10キロだが、実際の配達でははるかに少なくなる可能性がある。アマゾンの商品の85%は重量が2.3キロ以下だ。

このほか、ドローン配送ではさらに設備の維持管理、航路の調整、人員管理および受注システムや倉庫保管システムとの接続など、運用を支えるソフトウェアやハードウェアの整備も必要になる。システム全体の開発、構築、使用、メンテナンスにかかるコストは非常に高い。

インドIT企業「Wipro」が提供するドローン配送サービスの流れ

技術開発は難しくてもまだ攻略できるが、規制当局のハードルは高い。現在、世界各国のドローン政策はいずれも厳格だ。米国を例にとると、連邦航空局(FAA)はドローンの運用範囲を厳格に規定し、ドローン操作はパイロットの目の届く範囲とするよう求めている。Flytrexのような商用配送ドローンに対しては、FAAが規定や条項に基づいて個別に審査を行ったり規制を免除したりする。FAAの免除許可証をもらわなければ、ドローン配送業務を展開することができない。

中国のドローン規制も徐々に実施されている。国務院は2021年、「国家総合立体交通網計画綱要」の中で初めて低空経済に言及した。2022年には交通運輸部などの部門が、ドローン配送に関する4つの基準を含む「交通運輸スマート物流標準体系建設指針」を発行した。民用航空局は特定のドローン運営者に対して人、機械、管理、環境の全方位、全プロセスの運用能力と経営レベルを審査したうえで、ドローン輸送企業に認可書と許可証を発行する。

米調査会社ガートナー(Gartner)の予測では、2026年までに世界で100万台以上のドローンが配送サービスを提供し、世界の市場規模は80億ドル(約1兆2000億円)を上回るようになる。しかし現時点では、いかに技術上のボトルネックを克服し、ふさわしいビジネスモデルを見つけるかが、すべての参入企業が考えるべき問題だ。

中国生活サービス「美団」、ドローン宅配約17万件完了 ”3キロ圏内15分配送”

作者:硅兎賽跑(WeChat ID:sv_race)

*2024年1月18日のレート(1ドル=約148円)で計算しています。

(翻訳・編集:36Kr Japan編集部)

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