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14億の国民を擁する南アジアの大国ーーインドだが、製造業での人手不足が問題となっているようだ。
インドのモディ首相は2014年に製造業振興策「Make in India」を打ち出し、インドを世界の工場にしようとしてきたが、インフラや産業チェーン、技術者の不足が目標達成を難しくしている。この数年、モディ政権は課題解決に向け、さまざまな対策を実施してきた。例えば、電力、鉄道、港湾、航空運輸などのインフラ整備に力を入れ、韓国のサムスン電子や米半導体大手のマイクロン・テクノロジ(Micron Technology)、電子機器受託製造(EMS)大手の富士康科技集団(フォックスコン)などサプライチェーン企業のインド工場建設を後押ししてきた。インドへの海外直接投資(FDI)はこの10年間高い水準で推移しており、今や投資先として外資系企業から歓迎されている国となっている。
多くの中国企業がインドへ進出するようになり、中国人エンジニアはインドの工場や大規模インフラプロジェクトにとって無視できない存在となった。例えばフォックスコンはインド工場の建設に際して多くの中国人エンジニアを送り込み、工程最適化のサポートや、生産中に生じるあらゆるトラブルの処理に当たらせている。
しかし2020年に中国とインドの間で衝突が発生し、インド政府が中国人に対するビザ発給要件を厳しくすると、中国人エンジニアの業務にも影響が及んだ。この政策変更により、インドでは重要プロジェクトで専門技術者が不足することになった。例えば、ベンガル―ル(旧バンガロール)地下鉄建設プロジェクトは、このビザ問題に振り回された。19年にベンガル―ルでの地下鉄整備が計画され、中国鉄道車両大手の中国中車(CRRC)がこのプロジェクトを落札、工期は約4年で、23年11月の運用開始を予定していた。ところが中国側のエンジニア数十人になかなか就労ビザが下りなかった。資材は運び込まれているのに、建設や調整を担当する中国人エンジニアが入国できず、インド側企業は焦って政府に圧力をかけた。結局インド政府は圧力を受けて中国人エンジニア21名に大急ぎでビザを発給した。
中国人エンジニアたちがビザを手にして間もなく、インド政府が手続きを簡素化して中国人技術者のビザ発給をスピードアップする新たな規則を設けたとメディアが報じた。このことからも、インドが中国人エンジニアに依存していることがうかがえる。
中国は世界で最も多くのエンジニアを抱えており、中国製造業の勃興にとってエンジニアは重要な原動力だ。グローバル化が進んだ現代、エンジニアの国際的な流動性が次第に高まり、各国が貴重な人材を奪い合っている。インドの政策変更はまさにこうした傾向の表れだ。
一方、人口ボーナスが消失し、製造業が中国から撤退し始めているという情報がこの数年関心を集めてきたが、工場を守りぬくと同時に、いかにエンジニアを引き留め、そして育成するかということにも注目しなくてはならない。国際競争が日増しに激化するなか、貴重な人材の流出を防ぐことは極めて重要な課題だ。
作者:華商韜略(WeChat公式ID:hstl8888)、張静波
(編集・翻訳 36Kr Japan編集部)
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