中国の小売り・外食、小型店チェーンが急成長。地元VCや経営者、日本企業を参考に視察ツアー積極化

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップVC編集部お勧め記事注目記事36Krオリジナル

中国の小売り・外食、小型店チェーンが急成長。地元VCや経営者、日本企業を参考に視察ツアー積極化

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

消費分野への投資を専門とする中国のベンチャーキャピタル(VC)、啓承資本(ジェンブリッジ・キャピタル)が投資先企業の日本視察を積極化している。中国の小売り・外食では都市化の加速や新型コロナウイルス禍を受けて専門性の高い小型店のチェーンが急成長し、商品開発などで日本を参考にする企業が増えているためだ。3月上旬の視察ツアーに続き、年内にあと2回のツアーを計画している。ジェンブリッジ・キャピタルの経営トップである常斌・創業者兼マネージングパートナーと、3月のツアー参加企業で焼き栗などのチェーン店を展開する薛記炒貨(Xue’s Snack)の薛興柱・董事長兼総裁に狙いを聞いた。

(常斌氏へ)ジェンブリッジ・キャピタルの経営方針は

「当社は中国インターネット通販大手、京東集団(JDドットコム)の投資部門の責任者だった私が独立して2016年に設立したVCだ。中国では当時、消費・ブランド産業がモバイルインターネットの普及と結びつき、世代交代するような構造変化が起きていた。すでに20社以上に投資したが、投資先企業は主に二つの領域で成功を収めつつある」

「一つは、まずオンライン販売で消費ブランドの確立に成功した投資先だ。例えば、13年にコメのネット通販を始めた『十月稲田』という北京の会社がある。創業者は20万元(約420万円)の元手で商売を始めたが、当社が20年に投資した段階で売上高は10億元(約210億円)に達していた。高級米では中国最高レベルのブランド力を確立し、2310月には香港取引所に上場した。伝統的な経営手法なら1020年かかるブランド確立が、オンラインなら3~4年で実現することがある。家具やTシャツでも同様の成功事例がある」

「もう一つは、新たな事業形態をとるオフラインの小売り・外食産業だ。過去20年の中国の小売業界を振り返ると、確かに米ウォルマートのようなハイパーマーケット(大型スーパー)の時代があったが、直近の5~6年は生鮮食品、冷凍食品、おやつなどを専門とする売り場面積60100平方メートルの小型店が急速に成長している。今回(24年3月)の日本視察にはこの領域の投資先企業から創業者・幹部約50人が参加しており、合計の店舗数は24000店以上、売上高は600億元(約1兆2600億円)以上に達している」

ジェンブリッジ・キャピタルの経営トップである常斌・創業者兼マネージングパートナー

中国の小売り・外食の業態変化にはどんな背景があるのか

「中国では過去20年の都市化の進展で、中間所得層の20003000世帯が住む高層集合住宅の小区(団地)が増えた。10年以上前には、小区から車で郊外のハイパーマーケットに出かけて買い物するのがはやっていた。しかし、その後はネット通販の普及で一般の生活用品は在宅のまま買えるようになり、逆に肉や野菜など生鮮食品はまとめ買いではなく、新鮮なものを毎日近所で買いたいという需要が高まった」

「核家族化の進展で一世帯当たりの人数が減ったことも、小区内・付近の小型店の需要を高めている。例えば、12年設立の生鮮食品スーパー『銭大媽』は「宵越しの肉は売らない」をスローガンに肉や野菜を毎日在庫ゼロまで売り尽くす経営方針が人気で、本社を置く広東省広州を中心に3000店舗を超えている。20年初めから3年間続いたコロナ禍による外出規制や最近の中国経済の減速でこの傾向が加速した」

日本視察の狙いは何か

2311に当社として初めての日本視察ツアーを行っており、今回が2回目だ。今回はコンビニエンスストアのほか、小型スーパー『まいばすけっと』、格安食品スーパー『ロピア』、総合ディスカウントストア『ドン・キホーテ』や『業務スーパー』などの店舗を見学した。日本の小売りは買い手の発想に立って商品開発や店舗運営を行っており、非常に参考になる。年内にさらに2回の日本ツアーを計画しており、次回以降は中国の外食産業の創業者らに日本の外食チェーンなどの運営を視察してもらうつもりだ」

(薛興柱氏へ)薛記はどんなビジネスを手がけているのか

「私は92年に山東省済南で、家族の仕事を手伝う形で炒貨(中国語で栗やスイカのタネなどの炒り菓子)の露店を始めた。高い品質の炒貨を安価で、良心的に販売するのが今も変わらぬ経営方針だ。02年に『薛記炒貨』の店名で小売りの一号店を開き、済南で64店まで拡大した」

18年に現代的な店構え・品ぞろえの店舗チェーンを全国展開することを決め、デザインなどの外部の人材を経営陣に入れ始め、20年にはジェンブリッジ・キャピタルから出資を受けた。店舗網は現在、山東省外を含む約1070店まで広がっている。4分の1が当社直営で、残りはフランチャイズ方式で運営している。24年末には1500店以上まで増やしたい」

中国全土で1000店舗以上を展開する「薛記炒貨」

競争の激しい中国市場で勝ち抜くコツは

「質の高い炒貨を安定供給する経験が当社の競争力の源泉だ。かつて栗は秋と冬だけの季節商品だったが、当社は零下38度で冷凍保存する技術を確立し、年間を通じて供給できるようになった。18年にチェコ製の高性能な業務用オーブンを導入し、焼き栗の品質も標準化できた」

「現在はピスタチオ、ドライフルーツなどに400種類近くに品ぞろえを広げており、当社だけで日本の『デパ地下』の食品売り場の半分の広さの店を構えることもできる。中国ではコロナ禍以降、消費者の財布のひもが固くなっており、商品のコストパフォーマンスを高めることが欠かせない」

今回の日本視察ではどんな収穫があったか

「日本の小売店はコスパが良いが、それは素材の原産地、工場などのサプライチェーン(供給網)の運営効率が高く、コストコントロールがうまくできているからだ。当社の物流効率改善の参考にしたい。視察では日本の焼き芋も味見してみたが、当社の焼き芋の方が明らかにおいしい。25年には、日本市場への進出も検討してみたい」

アジア最大級の食品・飲料専門展示会「FOODEX JAPAN 2024」に参加した様子(写真中央が薛興柱氏)

(文:36Kr Japan編集部)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録