高演算能力・低消費電力の「光チップ」、中国新興が開発急ぐ 生成AI普及を後押し

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

高演算能力・低消費電力の「光チップ」、中国新興が開発急ぐ 生成AI普及を後押し

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

光技術を用いるコンピューターチップの研究開発を手がける中国スタートアップ企業「光本位科技(Lightstandard)」がこのほど、エンジェルラウンドで1億元(約21億円)近くを調達した。出資は中贏創投(Zhongying Capital)が主導し、接力天使(Step Venture Capital)、慕石資本(RollStone Capital)のほか、既存株主の小苗朗程や峰瑞資本(Frees Fund)なども参加した。

光本位科技のチームは英オックスフォード大学、中国の復旦大学、米シカゴ大学など世界トップレベルの研究機関の出身者のほか、光通信やコンピューターチップの専門家で構成されている。2022年後半に蘇州工業園区と上海張江ハイテクパークに拠点を設け、演算能力が高く消費電力の低い「光チップ」の開発を通じて、人工知能(AI)の大規模言語モデル(LLM)による推論と学習を後押ししようとしている。

光チップは従来のチップと異なり、電気信号ではなく光信号によって情報を処理する。また、光を伝送媒体とすることで伝送速度を大幅に高め、より低い消費電力、広い帯域幅を実現できる。主に通信、センシング、コンピューティングの3分野で活用されている。

共同創業者の熊胤江氏によると、通信分野において光チップは一定の規模ですでに実用化されているという。センシング分野ではFMCW(周波数変調連続波)などの技術をベースに光チップを使うLiDAR(ライダー)の開発が進む。一方、コンピューティング分野では光チップが2016年前後に使われ始めたが、難しい課題も抱えている。

AIの出現はコンピューティング分野において、光チップの活用に全く新しい扉を開いた。AIを支える演算能力は現時点で供給不足が続いており、その不足は拡大し続けている。光チップはこの問題を解決する1つの選択肢と考えられている。

熊氏の試算によると、理想的な状況において光チップは電気信号で動く従来のチップに比べ、エンドツーエンドの消費電力がわずか10%、遅延が1%にとどまり、同じ条件下での演算能力は100倍以上に上るという。

加えて光チップは、シリコンを基板とする従来の集積回路のように半導体露光装置などの先進的な製造プロセスに大きく依存しないこともポイントだ。集積回路はムーアの法則通りにトランジスタの集積率を上げて性能を向上させてきたが、ムーアの法則が限界に近づくにつれてコストパフォーマンスは低下してきた。一方、光チップは複数の波長や帯域の光による並列コンピューティングが可能で、互いに干渉せずに演算能力を倍増させられるため、製造プロセスの進歩に頼らず開発できる。

これらを踏まえると、光チップは中国が演算能力の分野で飛躍する大きなチャンスをもたらす可能性が高い。熊氏によると、中国で光チップの国産化への移行が進んでおり、国内に成熟したチップ設計ソフトウエアと工場があるなど、技術力は海外と比べても遜色ないという。

膨大な量の高品質データとパラメータを要する生成AIが普及する中、LLMチップに対する需要は拡大し続けている。今後はAIチップに高い演算能力、低い消費電力、コストパフォーマンスが求められる見込みで、光チップはこの需要に応えられるだろう。

光本位科技が採用した「PCM(相変化メモリ)+クロスバー」方式は、従来より高い集積度と低い消費電力を実現する。製品のOPU(光演算処理装置)チップはすでに改良を繰り返し、3回のテープアウトを終えたという。

*2024年3月31日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録