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人工知能(AI)を活用したタンパク質設計を手がける中国スタートアップ企業「天鶩科技(Matwings Technology)」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。出資は金沙江聯合資本(GSR United Capital)が主導し、本草資本(3E Bioventures)、暁池資本、四川交研資本も参加。資金は、タンパク質設計に使う大規模言語モデル(LLM)の産業活用などに充てられるという。
2021年9月に設立された天鶩科技は、上海交通大学の出身者が中心となってコアチームを構成しており、創業者でチーフサイエンティストの洪亮教授は、AIを活用したタンパク質設計の分野に長らく携わってきた。
天鶩科技によると、同社が開発したタンパク質設計用LLM「AccelProtein」はTransformerアーキテクチャとマスク言語モデルを採用している。さまざまな環境における生命体のタンパク質配列を網羅する7億8000万件の複雑なデータで訓練されたこのLLMは、タンパク質のアミノ酸配列と機能を結ぶ複雑な意味関係を習得したことで、従来の配列から構造、構造から機能の順ではなく、配列から機能をダイレクトに予測できるようになった。これによってLLMと少ない実験を通じてタンパク質配列の設計と改変が可能となり、こうして設計されたタンパク質は安定性や活性、親和性などの指標において優れている。
LLMの構築ではデータセットの作成やマイニング、活用がカギとなる。同社の劉灝CTOは、業界のニーズを理解し、解決すべき生物学的問題にどのようなデータとAIが必要なのかを理解することが大切だと考えている。科学界の発展に伴って、タンパク質に関するオープンデータセットはますます増えている上、同社の創業チームにも長年にわたる科学研究や提携を通じて蓄積した独自のデータ基盤がある。
タンパク質は抗体医薬品のほか、体外診断、日用品、農業などの分野でも幅広く活用されている。劉CTOによると、これまでタンパク質の改変はハードルが高く、専門家としての知識や経験に加え、数多くの実験による試行錯誤が必要だった。訓練されたAIを使ったLLMならChatGPTのように専門的な問題を解決でき、従来の手法よりも少ない実験でタンパク質設計の効率を上げ、コストを下げることが期待されるという。
業界ではタンパク質の構造よりも機能が重視されている上、高精度のタンパク質構造データが乏しいこともあって、同社は配列から機能を正確に予測できるタンパク質設計用LLMの開発に注力した。今のところ、タンパク質機能の検証では生物学的なウエット実験がスタンダードとなっている。同社はAccelProteinと実験を組み合わせることで、これまでに数十件のタンパク質設計サービスを提供してきた。これによって2023年は収支が黒字化したという。
天鶩科技は創薬、体外診断、医薬中間体、栄養・ヘルスケア、食品・飲料、美容・スキンケア、バイオマスエネルギー、農業、環境工学などの分野にサービスを提供できる。今後は特に創薬、体外診断、中間体の分野を重点的に開拓する方針だ。
*2024年4月13日のレート(1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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