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二酸化炭素(CO2)の有効利用に取り組むスタートアップ企業「普力先進材料科技(POLY Advanced Materials Technology)」がこのほど、シリーズB+で恩沢基金から数千万元(数億~十数億円)を調達した。資金は技術開発と運転資金に充てられる。恩沢基金は中国石油化工集団(シノペックグループ)が設立した最初のファンドで、中国の石油化学産業を中心に投資を展開している。
2017年に設立された普力先進材料科技は、付加価値の高いCO2の利用とカーボンネガティブ新材料の量産を手がけ、CO2排出量を削減する手法であるCCUS(CO2の分離・回収・有効利用・貯留)の有効利用の部分に焦点を当てている。同社は23年12月にシリーズBで中国石油天然気(ペトロチャイナ)の傘下企業などから2億元(約40億円)近くを調達しており、今回の資金調達によってペトロチャイナとシノペックグループという中国石油大手2社の関連会社から出資を獲得した。
エネルギー転換が進む中、CCUS技術も急速に発展している。CCUSはこれまでCO2回収に重点が置かれていたが、有効利用も重要な段階だ。回収したCO2を精製し、新たな生産プロセスに投入してリサイクルすれば、経済的価値を持つ製品に転化でき、CO2という廃棄物が宝に生まれ変わる。
しかしCO2有効利用の大きな課題は、既存の用途が少ない上、そのほとんどが経済的とは言えないため、大規模な活用に至らないことだ。
普力先進材料科技の毛紅兵CEOは、CO2とエポキシドの重合が現在最も付加価値の高いCO2の化学的利用法の1つで、緩やかな反応条件、CO2固定量の多さ、低コスト、高い製品性能などの特長により、経済価値の高いCO2活用の技術ロードマップになると説明した。
この技術では、異なる触媒やプロセスを使って、CO2由来のポリオールと生分解性プラスチックという2つのポリマー材料を製造する。同社が開発したCO2由来ポリオール製品「PCE」はそのうちの1つで、同社はすでに触媒、反応プロセス、反応装置から活用先に至る全面的な知的財産権を取得した。
同社のPCEはCO2の質量分率が30%以上という高水準を誇る。つまり、1トンのPCEで0.3トンのCO2を固定できるうえ、石油系原料の使用量を30%減らし、その分の原料コストとカーボンフットプリントを削減できる。また合成プロセスの改良を繰り返すことで、既存プロセスに比べ生産性の向上や省エネルギーを実現、合成プロセスのエネルギー消費量を25%減らしたという。
このプロセスでは触媒の活性と選択性が鍵を握るため、同社は自社開発の触媒を使いながらCO2の固定と石油系原料の削減を進め、従来方式に比べて製品のカーボンフットプリントを半分以下に減らすことに成功した。この技術革新は、材料合成で使用する石油化学原料を大きく減らし、CO2排出量の削減につながる。
PCEは原料にCO2を使うことで、生成物の70%がカーボネート結合、30%がポリエーテル結合で構成される。この構造によってPCEは100%カーボネート結合の輸入ポリカーボネートジオール(PCD)とほぼ同じ性能を有し、しかもコストパフォーマンスでは大きく上回る。
同社の製品はコーキング剤、接着剤、シーリング、エラストマーといったポリウレタン、人工皮革、発泡プラスチックなどに幅広く使われ、自動車、建材、衣服・バッグ、靴、家具などの川下分野において、環境に優しく高性能な選択肢を提供し、環境配慮型の製造業を後押している。
すでに複数プロジェクトの量産化を進めており、子会社の普炭新材料科技は今年4~6月に年産30万トンに上る第1期PCEプロジェクトの試験生産を実施、7~9月に生産を開始する計画だ。同プロジェクトは中国および海外において最大規模のCO2重合プロジェクトとなる見通しで、中国国家発展改革委員会からグリーン低炭素先進技術のモデルプロジェクトの1つにも選ばれている。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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