中国でも浸透進むESG経営、国際評価は上がらず「形だけ」の企業も

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世界中で持続可能な発展への注目が増すなか、中国企業においてもESG(環境、社会、企業統治)の考え方が、単に規則を守るという受け身の態度から積極的にその価値を追求する姿勢へと変化しつつある。

かつてESGは、企業にとってコスト増加を招くものとみなされていた。しかし今では、ESGを効果的に実践することで企業イメージを向上できるだけでなく、経済効果にもつながると考える企業が増えている。

中国ではすでに、一部の企業がESGを実践することで大きな経済的効果を手にしている。例えばある新エネルギー企業は、工場に環境配慮型の設備を導入して廃液を工場内で処理することにより処理費用が大幅に抑えられ、年間400万元(約8800万円)の節約になった。また、上場企業のESGスコアが高くなれば多額の資金を呼び込むことができ、投資面でも大きなメリットがあるほか、グリーン融資を獲得する重要な手段にもなる。

コスト削減だけでなく、製品の市場競争力を高めることもできる。例えば、製品のカーボンフットプリントを減らすことでグリーン消費のトレンドに乗って、より多くの消費者に注目してもらうこともできる。

中国政府もESGを発展させるために政策面で強力にバックアップしている。多くの機会にグリーンエコノミーの重要性を強調し、グリーンな発展を支援する政策と市場化メカニズムを打ち出している。2024年2月に上海・深圳・北京の証券取引所がESGに関する情報公開の手引きを公表したのも、いずれESGが強制的に公開されるようになり、企業経営における重要度が上がるであろうことの表れだ。

世界の貿易政策や欧米顧客のニーズも、ESGを重視するよう中国企業を促す力になっている。今では海外顧客が中国企業と合弁する際に、環境保護や労働条件などESGに関わる問題に特に注目するようになっている。ESGへの取り組みが企業の受注獲得に影響するだけでなく、国際市場への参入にあたっての重要な条件になる可能性がある。

かつて多国籍企業でESGの管理責任者を務めた専門家は、商談や発注の際に欧米の法律と貿易政策が中国の輸出企業にも影響するとして、「このように発注と結びついたESGスコアは、中国国内の規制当局よりも大きな影響を持つ」と語る。

ESGの重要性は広く認識されているとはいえ、実際には多くの課題が残っている。国際標準に照らしてみると、中国企業のESGスコアはあまり芳しくない。「中国上場企業ESG行動報告(2022~2023年)」によると、中国A株市場に上場している企業に対して、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)やFTSE Russellなどの国際評価機関がつけたスコアは軒並み低めだ。

実際、一部の企業のESG委員会は形式的なもので、実質的な組織や運営メカニズムが不十分だ。ESGと企業の主要事業を結びつけ、単なる広報活動にならないようにするという課題もある。ESGはそれほど簡単なものではなく、実践しながら模索し調整しなくてはならない。規制当局とマーケットのESGに対する要求は高まる一方で、企業はより合理的でシステマチックな情報公開と管理のメカニズムを構築する必要がある。

※1元=約22円で計算しています。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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